第七三話,ブルターニュ半島攻略戦 2
やがて時が経ち、駆逐艦の射程距離内にガリア艦隊は入った。
ガリア艦隊は先ほどの水偵特攻により発生した火災によって戦艦プロヴァンスを損失したがそれでも竜空母1隻、戦艦4隻、巡洋艦4隻、駆逐艦20隻が残存していた。これはガリアに残された僅かな艦隊戦力である。
例えるなら現在のガリア両用艦隊の状況は坊ノ岬海戦前の日本海軍である。
既に艦隊に継戦能力はない、造船だけは行われているが人員の養成が間に合わず、軍部は両用艦隊の戦力回復は不可能と考えた。その為、最近は陸軍兵力の増強に力を入れていた。
そもそもブレストにほぼ無傷で残っていた貴重な艦隊を温存せずに出撃させて理由はなんであったろうか。振り返る事一週間と3日前、まだその頃は味方であった米軍の手によって近々連合軍による大攻勢が始まる事をある程度予想していたガリア両用艦隊は最後の作戦を立案した。それは万が一ノルマンディーに敵軍が上陸した場合、そこに乗り上げて砲台になるという、言わば特攻作戦である。
ブルターニュが陸上での決戦作戦であるのとは反対であった。この特攻作戦には流石のガリア軍の参謀たちも反対を唱える者が多かったが「たとえ全滅してでも敵軍の侵攻を食い止めるべし」と言う周囲守旧派貴族や王室からの圧力によってやむなく実行される事になった。艦には砲弾満載、自爆用火薬満載、その分軽量化の為に燃料はほぼ片道分であった。
そして、ノルマンディー上陸の報告を受けたブレスト艦隊は特攻の為に出撃したのである。
しかし運が悪かったのか西方派遣軍水雷戦隊と遭遇、交戦する事になってしまったのであった。やがて少し時が経ち…
「現在距離8000!敵速8ノット!」
「敵竜騎士隊見ゆ!数30!」
「対空戦闘用意!!」
艦内が慌しい。
新兵も多く、やや動きがぎこちないがそれでも悪くない動きをしていた。
「撃ち方始め!」
竜騎士に対する対空戦闘が始まった。
主砲、高角砲、機関銃などあらゆるものが竜騎士隊に対して撃ち込まれた。低速な火竜は次々と撃墜されていったがそれでも対空砲火には限度があった。
「撃てぇ!撃てぇ!!!」
「次!目標敵主力艦!!高度約600!距離6000……用意、射っ!!」
「峯風」の12cm砲が火を噴いた。
砲弾は放物線を描いて飛んでいき、戦艦「ジョフレ」に向かってはいたものの直撃はしなかった。しかし後続艦が放った砲弾が竜空母「ベアルン」の飛行甲板中央部分に命中、さらに峯風との第二射が駆逐艦「シャカル」に命中、しかし峯風は戦闘能力が以前より低下していた。
理由は簡単、後部砲塔を取っ払って無理やり小型水偵射出用のカタパルトを搭載した為であった。しかも収納するスペースがない為艦載機は露天という事になっている。しかしこれがまた大変であり、しかも12cm砲が3門しか使用できず、速力も低下、おまけに艦載機固定に苦労して使い勝手も悪い事からこの作戦後、峯風は元に戻す改装が行われる事になる。だがこの失敗は西方派遣軍にとってとてもよい教訓となった。
それはともかく、ガリア・ブレスト艦隊は短時間のうちのその戦闘能力を半減させた。
近代海軍艦艇の実力は航空艦船の比ではないという事をよく示す海戦であった。
「敵砲撃開始!」
「この距離じゃあたんないぜ…」
だがしかしブレスト艦隊もそれほど馬鹿ではなかった。
水雷戦隊を挟み撃ちにせんと艦列を2つに分けて水雷戦隊艦艇の両舷を砲撃できる位置にあった。ただし大砲の射程距離の問題でまだ攻撃は不可能であった。それでも砲撃が可能なレベルまで接近しようとしていた。
そして何よりね突入部隊の戦艦1、巡洋艦1、駆逐艦8は既に退避を開始し、ノルマンディー地方へと向かっていたのであった。
「提督!敵艦隊の一部が戦域を離脱しようとしております!おそらくノルマンディーへ向かうものと思われます!」
「チャネル諸島司令部に打電!攻撃隊の派遣を要請する!」
「了解!」
今ノルマンディーを襲われれば要塞砲がない為、まともな抗戦はできない。
なんとしてでもノルマンディーにたどり着く前にこの艦隊を叩く必要があったのである。
「さて…後は敵艦隊だ、左舷側の艦隊は駆逐艦が主力だ。戦艦より小型で砲の数も少ない、そっちに2隻を派遣する」
「では戦艦1を含む敵部隊を我々がやるというわけですね」
「ああ、駆逐艦「疾風」に伝達!後続艦「神風」と共同で左舷敵部隊を攻撃せよ」
「了解!」
駆逐艦「疾風」にこの情報はモールスにてすぐに伝達された。
艦長の大田は自信満々である。
「よ~し、相手が何隻だろうとやってやろうじゃないか!取舵10度!両減前進半速!」
「トーリカージ!!両減前進半速!」
しばらく航行した後は再び右方向へ旋回、距離は2500mまで接近し、艦艇は互いに砲を向け合っていた。しかし射程距離の長いほうが勝ち、この場合旧式の疾風型駆逐艦がブレスト艦隊駆逐戦隊所属の駆逐艦に勝っていた。もちろん艦の性能だけでは戦闘力は決まらないが中世レベルの艦艇と近代海軍レベルの艦艇ではあまりにも差がありすぎた。よっぽどのヘマでもしない限りは負けるわけがないのである。
「もどーせぇ!」
「敵速約8ノット!」
「速力8ノットまで減速!ようそろー!」
「よーそろー!!」
大田は敵部隊の姿を見ていた。
彼自身秋津洲から連絡船でこっちに派遣されてきたのが最近である故、航空艦船が実戦で動いている所をみるのは物珍しい事であって、非常に興味が沸いていた。
「うむ~、すばらしいく美しい。攻撃するのがもったいない船だ」
「艦長、そのような事を言っている場合では」
「わかっとる。一艦でも逃せばノルマンディーが危ない。全艦撃沈するよう努力せよ」
「艦長、まもなく砲撃が開始されます」
「うむ」
一方、ノルマンディーの仮設司令部ではルイズとアンリエッタが上陸作戦を終えて数十分のくつろぎのひと時を送っていた。そんな時、トリステイン軍兵士がルイズの前に現れた。
「なにかしら?」
「報告!現在こちらに海上よりガリア軍突入部隊が接近中!念の為退避をお願いします」
「心配しないで。西方派遣軍ならきっとどうにかしてくれる」
「えっ?しかし…まだブレスト艦隊は健在ですし、ブレストには大兵力がおりますので一部兵力を引き抜いて他部隊と合流し、こちらに攻勢を仕掛ける事だってできるのですよ?」
「大丈夫よ、あの人たちならきっと」
はたしてルイズの期待通りにいくであろうか。
その頃海上では一大撃滅戦が展開されていた。
***峯風***
「主砲!撃ちー方始めぇ!」
「射っ!」
峰風の発砲を合図に後続艦も次々と砲撃を開始した。
その砲弾は放物線を描いて飛んでいき、数発はガリア軍船に命中弾をあたえ、損傷或いは撃沈させた。
「駆逐艦「スルクフ」轟沈!戦艦「ガリア」炎上中!」
「提督!予想を遥かに上回る戦果です!」
「うむ」
射程距離外からの砲撃はまさに鬼畜そのものであった。
このアウトレンジ戦法こそ西方派遣軍を含む連合軍の最大の強みであった。アウトレンジ戦法なしに戦争の勝利はないといっても過言ではないだろう。それほど彼らにとってアウトレンジ戦法とは重要なもので、敵に対してももっとも効果的であった。
一方の大田隊もたった2隻の駆逐艦で大戦果をおさめていた。
「既に敵戦力の1/4を撃沈!この調子でいけば海戦は1日で我が方の勝利となります!」
「ふう…ブレスト艦隊のあしどめには成功しそうだが…奴らの突入部隊を逃してしまったな」
「おさらく提督も同じ事を考えているでしょう」
「もはやチャネル諸島の基地航空隊に任せるしかないか…あそこには西方派遣軍のほかにトリステイン空軍の航空機も配備されている。うまく爆撃して撃沈してくれればよいが…」
ブレスト艦隊との海戦は目途がつきつつあった。
しかし突入部隊を逃してしまった水雷戦隊…その突入部隊は着々とノルマンディーに迫っていた。最後の頼みはチャネル諸島基地航空隊である。果して彼らはガリア・ブレスト艦隊ノルマンディー突入部隊を食い止める事ができるであろうか。それによっては今後の戦局に大きく影響するのである。
つまりチャネル航空隊の責任は非常に重大なのである。
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すっかり遅くなって申し訳ございませんorz
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