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  西方派遣軍 作者:栗林
第四九話,ソンムの戦い 1
進撃してくたガリア主力は西方派遣軍の嫌がらせによって29000人まで数を減らしていたがそれでも連合軍7000人に比べたら4倍も差がある。防衛戦を行うには圧倒的に兵力が不足しているはずだ。しかも進撃速度が早くで十分な準備ができなかったがガリア軍は突如目標直前で進撃を止めた。これは補給の問題からである。

さらに短距離で予想以上に数が減ってしまったので戦略の変更と再編を行う必要に迫れかれこれ1週間が経過、連合軍の準備はその間に整ってしまった。

アイルランドから輸入したトラックが、軍の人間が、馬車が、あらゆる物が必要な物資を決戦場ソンム要塞に運び決戦の準備を行った。
一方他方面へはこれからのトリステインに期待する平民達を中心にトリステイン軍に志願、しかし武器や弾薬の生産が追いつかず志願兵は射撃訓練はおろか銃剣による白兵戦の訓練も行えず従来の武器でいかにガリア軍と戦うかという訓練まで行われていた。

中には数日しか訓練していないのにもうトリスタニア防衛軍として実戦部隊に配属となっている兵すらいた。しかし彼らのおかげでまたもな訓練をうけた部隊は前線にいけるというのもあり決して無駄であるというわけではなかった。

現に彼ら一般人から突如兵士となった者が大量に送られて勝ったという話がトリステインから遥か東でもう生まれていた。ロマノフ帝国は農家のおばちゃんまでもを動員して戦いドイツ部隊に大打撃を与え自軍も7割が全滅しながらも勝利を収め、首都マスクヴァーを文字通り死守したのであった。

---その頃、ソンム、陸軍野営地---

「報告!敵は前衛より南西10kmまで迫っております」

「うん、いよいよだな。敵の総兵力は約29000人と予想されるが我が軍はどんなにがんばった所で諸侯軍も加えても7000人に過ぎない。その分近代兵器という恩恵はあるのだが我々はそれでも敵の総兵力と比べて四分の一にしか過ぎないのだ。気を引き締めて戦わねばいくら近代兵器で武装しているとはいえソンムの防衛戦を破られてしまう」

「しかし閣下、敵は塹壕というものを知りません。塹壕に立て篭もる歩兵、その後方の砲兵、撃退用の戦車と歩兵、さらに反撃時にも後方砲兵による砲撃支援、これだけでもここでは難攻不落であると思われそれほど念入りにする必要はないのでは?」

「確かに我々は敵が100年経っても思いつかない新戦術を持ち100年経っても開発できない兵器を持っている。ただ数的に不利なのは明白であるしそれにヨルムンガントを忘れてはないか?」

中野元帥が恐れるヨルムンガント、どれほどのものかまだ実際に手を交えた事がないので不明ではあるものの中野元帥は28サンチ砲を撃ちこまなければ撃破はできないと考えていた。
最もあくまで予想なのでヨルムンガントがそこまで丈夫かどうかは話は別だが現在ヨルムンガントと思われしものは25体がガリア軍後方におりいずれはそれらと対決する事になる。

火力で劣るガリアには救世主のような存在だが西方派遣軍にとっては悪魔のような存在である。ヨルムンガントならば塹壕など物ともせずに突破できる、それが中野元帥の考えであった。

「ヨルムンガントは手強いと予想される。予想ではヨルムンガントは28サンチ砲をもって攻撃しなければ撃破はできない」

「28サンチ砲!?……しかしあれはそんなに数がありませんし砲弾だって1門につき30発がいい所です!」

「そう、弾薬が足りないのだ。後の反攻作戦、あるいは後の防衛戦を考えての結果であるが我々は非常に苦しい戦いを強いられる。たとえ敵が中世レベルであろうと油断をすれば近代的な装備をしている軍隊だって負ける時は負けるのだ!」

「……では敵に対してどのように戦えばよいのですか閣下!」

「閣下!!」

中野は瞑想をし、1分ほど黙り込む。
参謀達の顔には汗が流れ、表情を変えようとすらしなかった。

「……決戦は明日と予想する。それまでに敵戦力をできる限り消耗させる必要がある。これまでどおり陸軍航空隊は空襲を敢行し夜間には1個中隊を用いて敵の野営地を夜襲する。翌日より再び陸軍航空隊による夜襲を行い射程距離に入れば砲撃を開始、さらに侵入してきた敵に対しては機関銃や歩兵銃による攻撃を、塹壕に突入してきた敵に対しては、銃を撃てば弾が味方を傷つける可能性がある、銃剣を持って交戦し速やかに敵を殲滅せよ。最後の決断は私が下す」

「ところで航空攻撃ですが…」

「航空参謀、言わんでもわかるだろう?できる限り休まずやってほしい。制空権を押えなければ陸戦に勝てないという事ぐらい、君も印度戦線で思い知っただろう?」

「はい!」

「航空機の数が少なく、また兵士達の休養も不十分なのは十分に理解している。しかしやってほしい、兵力が不足しすぎている。秋津州の精神をガリアの奴らに見せてやるのだ」

「はい!!」

かくしてガリア軍迎撃に向けた最終打ち合わせは多少の混乱を見せたものの無事に終了した。それから数時間後、陸軍航空隊は出撃した。
目標はガリア軍、少しでも敵戦力の消耗を狙った中野の願いを担った陸軍航空隊は1機、また1機、ガリア軍目指して真一文字に飛ぶ。

「ガリア軍だ……なんだ!?」

陸軍航空隊は驚いた。
なんと砲弾らしきものが航空機の付近を通り抜けていったのである。ふと思いあるパイロットは地上を見た、すると大砲の砲口が空を向いていた。

「なんだあれは!?」


これぞガリア版高射砲である。
砲弾こそただの鉄球であり直撃しなければ問題はないものであったが特徴は砲自体にあった。砲弾を装填後特殊な蓋をしさらに蓋にあるタンクのようなものに怪しげな薬品を注入、導火線をセットするとその蓋もしめてハンドルで砲身の角度をなどを変え、照準を行い導火線に火をつけて砲撃する。

怪しげな薬品は初速を速くする効果があるらしくまた砲弾は航空機を撃墜できればいいものとしてロマーニャより持ち去った場違いな工芸品の航空機に傷をつければよいので炸薬が入っておらず旧来どおりであるとしても軽量化が計られている。

これ以外にも新機軸が多数採用されておりコストも高く大量生産は難しいがこれまでの火砲とはまるで差があった。性能は日本軍の十一年式7.5cm野戦高射砲より低いがそれでも初速がこれまでの砲より圧倒的に高く射程距離も長く当然水平射撃も可能であった。この革命的な兵器はジョゼフの軍拡政策の賜物であった。

西方派遣軍にとっての救いは数が少ない事である。ありえないように見える兵器だがガリアの魔法技術とエルフの支援があれば開発できないこともない。

しかしガリア軍高射砲部隊はあっけなく陸軍航空隊によって壊滅する、いくらガリアが頑張ってもやはり兵器の差を大きく縮める事はできなかったのである。それでもこのガリア軍高射砲は西方派遣軍にとって新たな脅威であった。もちろんこの事はすぐに報告される。

「何!?高射砲だと!?」

「はい!ユンカースの搭乗員が撮影した写真です」

白黒ではあるがその姿は鮮明に写されており航空参謀は衝撃をうけた。

「…まさか、こんな兵器がガリア軍にあったとは……」

「我々が今まで見てきたハルケギニアの敵が使用するどの火砲よりも先進的です。あの様子だと水平射撃も出来そうで射程距離も他の敵のものとは比べ物にならないでしょう。ただし砲弾には炸薬がないようです」

「そうか…それだけが救いのようだな」

「いえ、数も少ない」

「……それは助かった。こんなのが数あれば陸軍航空隊はただじゃ済まされないからな。ただ数が少ないというのは見掛け倒しで後方にはさらにこの高射砲が用意されている可能性がある。今後の航空攻撃に関しては特に警戒を厳とされたい」

「了解!」

ガリア軍の新兵器に驚く陸軍航空隊、この夜、歩兵1個中隊193名が本郷中佐(昇進)の言葉を受けて戦車15両(チハ車6両、ハ号6両、四一式中戦車3両)も加えた夜襲部隊がガリア軍野営地へ真一文字に向っていた。
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