第一八話,Z作戦
あれから3ヶ月が経過、各諸侯軍ともに準備は完了し西方派遣軍のほうも準備は終わっていた。この3ヶ月間でかわった事といえばラ・ロシェールに造船所が出来上がり早速大アフリカから派遣されてきた労働者などあらゆる手段をつかって造船が始められた。建造中なのは駆逐艦「疾風」、小型の駆逐艦であり動力は石炭である。
さらに西方派遣軍に新たな戦力が加わった。
パイロットは死んでいるのかもういなかったが保存状態が良好な九五式艦上戦闘機、日本の複葉戦闘機が発見され清隆がそれに乗った。
猛訓練を行ったという。
さらに四一式山砲も3門発見される。明治期の兵器で徹甲弾を放てば100mで50mm、500mで46mmの装甲を貫徹することが可能な兵器だ。しかも零戦などと比べるとそれほど高度な技術を必要としないので複製もそれらの兵器よりは比較的簡単であった。
さらに搭乗員つきで九二式重爆撃機2機が発見された。
このほかに人はいなかったが九五式重戦車2両、ヴィッカース・クロスレイ装甲車が3両発見されホイペット中戦車同様本郷少佐の下、文字通り月月火水木金金のような訓練が行われた。しかしハルケギニアにおける識字率の低さ、そして機械類に関する理解のなさで現在は本当にようやく動かせて砲を撃つ程度の錬度しかなく不安が残っていた。ただし熊野丸の九七式中線車6両と九五式軽戦車6両の戦車兵は日中戦争、マレー作戦などに参加して生き残った精鋭達である。彼らさえいれば新米でもなんとかなると陸軍は考えた。
一方海軍では大アフリカとメイジ達の協力により燃料の備蓄には成功、不足はしているがロサイスに奇襲攻撃したり航空艦船の護衛をしたり航空機を数回飛ばすぐらいなら足りる程度である。
砲弾については大アフリカから輸入、海軍航空隊は清隆、才人等技量の高いパイロットが揃っていた。
この日の夜、36機(補用含む)を搭載した龍譲と才人の零戦と清隆の九五艦戦、隼、九九式襲撃機を搭載した陸軍艦船「熊野丸」、そしてトリステイン艦隊とそれを護衛する南郷長官の艦隊が出撃した。
そして陸上機地からは少数ではあるが陸軍航空隊の支援もある。護衛機の九五式戦闘機、九七式戦闘機、鈍重ではあるが最大爆弾搭載量5000kgの九二式重爆撃機がいればロサイス軍港は瓦礫の山になるであろう。
さらにチェスターフィールドに上陸する兵士としてトリステインの航空艦船に西方派遣軍3000人、諸侯軍1万、臨時編成の王軍2万人、新設されたアニエス率いる銃士隊が乗っていた。トリステイン艦隊もあの日から艦隊の整備に力を入れ「レドウタブール号や竜空母ヴュセンタール号を建造、護衛に陸軍砲ではあるが最新式の火砲を搭載したイーグル号も艦隊の中にいた。
トリステイン王国始まって以来の大作戦であった。
この作戦のうち、ロサイス軍港攻撃作戦の名前は「Z作戦」と命名された。
翌日早朝………
龍譲甲板……
「ようそろ!!」
「長官!準備完了です!」
人員不足により特例で少将に昇進した新井山が機動部隊司令長官である。また艦長も兼任であるが部下からは艦長というよりも長官と呼ばれていた。
「攻撃隊、発進!。王国の荒廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ」
新井山少将はいよいよ出撃せよと命令を下す。
王国とはトリステインの事である。
さらに発艦始めと発光信号が知らせた。
「発艦始め!発艦始め!」
まずは元扶桑海軍の九九式艦上戦闘機による制空隊が発艦、彼らは攻撃というよりもアルビオンの竜騎士から攻撃隊を守るのが任務である。
続いて攻撃隊指揮官、若林少佐の九九式艦上爆撃機が出撃、ちなみに機体に描かれているマークだが西方派遣軍所属機という事で扶桑軍機もなにもかも日の丸が描かれていた。
秋津州の旗は基本的に日本とはかわらないのである。
なので龍譲艦載機は本来の姿に戻ったような感じであった。
若林少佐は艦橋に向って答礼していた。艦橋から敬礼している男達がいるからだ。
彼に続いて10機以上の艦上爆撃機が次々と発艦、熊野丸からも清隆が最初に出撃し続いて才人、その後を隼戦闘機と襲撃機が追ってきた。
陸軍航空隊は先に出撃、しかし苦労していた。
九ニ式があまりにも遅すぎるのである。
先に出撃したのにも関わらず軍港到着時には艦載機部隊に抜かされてしまった。最初に到着したのは先頭を飛ぶ若林少佐、その上空には護衛戦闘機が沢山いる。しかし若林はそれをまったく気にせず眼下に広がるロサイスの軍港を見て呟いた。
「あれが…ロサイス」
「すると…」
「旗艦に発信、ロサイス発見!我奇襲ニ成功セリ!」
若林はそういった後少し笑いながら意気込んだ。
「よ~し……全軍突撃!!!トツレ!!トツレ!!」
トツレ…「突撃隊形ツクレ」を意味する暗号電文である。
若林はその「トツレ トツレ」を発令する。急降下爆撃部隊は目標上空までいくと降下を開始した。
「あれ、なんだ?」
「さあ?」
「鳥?」
「竜?」
「変な音だな」
「降りてくるぞ?」
レコン・キスタ兵には相手の正体がなんだかわからない。
その途端…突如目の前にあった大型戦艦に爆弾が降ってきた。
「……て、敵だぁぁぁ!!!」
この時始めて敵だと気がついたのである。この作戦は完全に西方派遣軍の奇襲攻撃であった。
「竜騎士隊をすぐに迎撃にあげろ!!!」
「急げ!!!」
「それから消火を急げ!!…ぐあああ!!!」
危険なのは艦船や建物だけではない、人間にも機銃掃射が加えられた。
「くそぉっ!!!!竜騎士はなにをやっておる!!!」
「11時の方向より新たに敵接近!!」
「なに!?」
できるだけ大きな艦船を攻撃した若林少佐の爆撃機がやってきた。
彼の目の前にはレキシントンほどではないが巨大な戦艦があった。あれを破壊すればかなりの戦果である。若林は慎重に狙いを定めた。
「ようそろ……ようそろ!………ってぃっ!!!!」
若林はわざわざ水平爆撃で攻撃するもその爆弾は見事に巨大戦艦に命中、弾薬などが満載であったその戦艦は次々と誘爆していきたちまち炎につつまれれた。
「旗艦に発信!我大型艦爆撃ス!降下甚大!!」
龍譲艦載機はすばらしい命中率を誇っていた。
命中率はほぼ100%、1機が外したぐらいである。さらに熊野丸艦載機も軍港施設に攻撃を加えた。
「用意……投弾!!!」
九九式襲撃機からは爆弾が投下される。
隼も本日は爆装していた、このような爆撃作戦は龍譲や熊野丸、そしてほかの輸送船に乗っていた人々のおかげであった。ようやく到着した竜騎士隊も………
「相棒!!後ろだ!!」
「おう…………食らえ!!!」
才人は宙返りさせ竜騎士の後ろにつく、そして機銃発射レバーを引き、機首から機銃が放たれる。
20mm弾は生憎生産されていない、それよりも7.7mm弾と隼の12.7mm弾が生産されていた。20mm弾が生産されるのはもう少し先の事である。
清隆はデルフもなにもいない、己を信じて戦っている。
零戦ほどの性能は出せないにしてもそれでも彼が今まで乗っていた戦闘機とくらべると格段に性能がよく複葉機ゆえに運動性能もいい、彼も多数の竜騎士を撃墜した。
さらに…………
「用意……投弾!!」
2機の九二式重爆撃機から爆弾が投下される、2機合わせて10000kgも爆弾があった。
しかしこの2機はこの後二度と実戦で使われない、でかすぎる上にあまりの鈍重さからである。
作戦行動に支障が出てしまうのだ。しかし10tもの爆弾を施設にばら撒かれ急降下爆撃機や爆装隼の猛攻撃、さらに制空隊の大活躍により竜騎士隊は全滅、艦隊も大損害を被り軍港も完全にというわけではないが機能を失ってしまった。囮輸送船団は軍港付近まで迫りレコン・キスタ軍は砲撃を加える、この時ロサイスへ上陸してくると睨んでいたレコン・キスタは主力部隊をロサイスからロンディニウムまでの街道に配置していた…が、彼らの予想は大きく外れ西方、トリステイン、アルビオン王室連合軍はチェスターフィールドから上陸したのである。
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