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リビティウム皇国のブタクサ姫  作者: 佐崎 一路
第一章 魔女見習いジル[11歳]
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少年の意地と少女の約束

 昨日まで降っていた雨と朝露によって濡れた深緑も眩しい木漏れ日の小道――と言うより獣道に毛が生えた程度の頼りない道――に沿って、3人と1匹(もう1匹はまだ卵の中です)が、ゆっくりと森の懐目指して歩みを進めています。


 先頭を歩くのは尻尾の先までを含めると全長4~5メルトはある巨大な黒猫――ここ『闇の森(テネブラエ・ネムス)』の食物連鎖でも上位に位置する(レジーナ曰く、さらに上には真古龍エンシェント・ドラゴンなどや、さらに頂点には森の主が居るとか居ないとか……)、レジーナの使い魔で黒暴猫(クァル)――のマーヤです。続いて黒のローブとフードとで全身をすっぽり被ったビア樽――ローブの下に従魔の卵の入ったリュックを背負った――私が魔法杖(スタッフ)片手に続き、やや遅れて無手の美少年がついて来て、片手に籐籠のようなバッグを持った件の竜騎士が最後尾(しんがり)を守っていました。


 マーヤが睨みを聞かせて先陣を切っているお陰で、この辺り――比較的弱い魔物しか棲んでいないため、ある程度の経験と装備と数があれば、人間でもどうにか足を踏み入れることができる森の境界線付近――に潜んで、密かに私たちのことを襲う機会を狙っていた、小中型肉食魔獣や小鬼(ゴブリン)豚鬼(オーク)などといった妖魔達は、戦う前に彼我の力の違いを察して、大慌てで逃げていきます。


 マーヤに続いて2人のお客様の案内を仰せつかった私には、藪の中だろうが岩の陰だろうが魔力感知で大体の様子は見えていますが、私の後ろを歩く少年――背の高さはほぼ同じですね。なんらかの訓練を積んだ足運びをしていますけれど、魔術に関しては素人なのでしょう――には状況がわからないようで、時折、下草がガサガサ音を立てるたびに緊張した面持ちで足を止めていました。


「――ふふん」


 一方、散歩の途中のような軽い足取りで、荷物片手に人外魔境とも言われる闇の森(テネブラエ・ネムス)を進む騎士風の男性は、私同様に周囲の状況を把握しているようで、興味深げに森の様子と私の背中とを見比べています。


 魔術師……でしょうか? その割には魔力波動は希薄で、一般人とあまり変わらない気もするのですが。とはいえ油断はなりません。前世の古武術の道場で一緒に修行をしていた、呑気そうな先輩たち――固太りのおっちゃんや、頭の禿げた親父連中――も、普段から殺気も闘気も微塵も発せず、そのくせ鬼のように強かったですから。


 念の為、不慣れであろう2人を森の外まで迎えに行くよう、寝起きのカミナリと共に命ぜられて来たのですけれど……別に私とかが居なくても、問題などなかったような気もしますね。


「どうしましたお父様、急に笑い出したりして?」

「いや、色々と物珍しくてなかなか面白いと思ってね」


 怪訝な顔で振り返った少年の問い掛けに対して、父親――やはり親子だったようですね――が、さり気ない視線を梢に隠れている魔物や私たちに向けながら、曖昧な返事を返しました。




 ◆◇◆◇




「お久しぶりでございます、大…御婆様。ご健勝のようで慶賀の念に堪えません」


 一部の隙もないほど流麗な仕草で一礼をした騎士の男性に対して、火を熾した暖炉の前で安楽椅子に座ったままのレジーナが、これ見よがしに大欠伸を返しました。


「ふん。なにが目出度いもんか、おかげであたしゃ寝不足だよ。まったくっ……連絡もなしに突然来るなんて、ジャンとマーベルは子供にどんな教育をしたもんだか!」


 寝ているところを結果的に叩き起こされたせいで、普段から不機嫌そうな顔がさらに険悪になり、また、その気持ちを隠そうともしない露骨な態度と悪態とを真正面から受けて、男性の方は慣れた様子で苦笑しているだけですが、興味深げに部屋の様子や私たちを見詰めていた少年の方は、目を丸くして縮み上がっています。


(ああ、お気の毒に……)


 部屋の隅でマーヤと一緒に様子を窺っていた私は、この手の罵声に免疫のなさそうな少年の内心の驚愕と混乱とを想像して、被害者意識を共感しながら、深く被ったフードの下でしばし瞑目するのでした。


「はははっ、申し訳ございません。なにしろ両親は昔から放任主義でして、いまもさっさと家督を譲って、帝都を離れて悠々自適な毎日を送っています。まったく……厄介事は全て私に押し付け、その上ことあるごとに孫を連れて遊びに来いと矢の催促――こちらの多忙の責任を無視して奔放極まりありません。どなたの影響を受けたものでしょうか、実に困りものです」

「そりゃ、あたしに対する嫌味かい!?」

「はははっ、まさか! とんでもございません。偉大なる大祖様に対してそのようなご無礼など……いやいや、お気に触られたようでしたら、重ねてお詫び申し上げます。――申し訳ございません」


 慇懃な態度で頭を下げますけど、どこまで本気なのでしょうか。なんとなく私の頭には『狐と狸の化かし合い』という言葉が浮かんでいました。


 それにしても……。

 私は明らかに上級騎士か貴族らしいこの美男子親子とレジーナとを見比べ――どことなく面影が共通しています――フードの下で軽く嘆息しました。


 レジーナの乱暴な態度や毒舌は別にして、持ち物やなにげない物腰、高い教養など明らかに上流階級のものでしたから、或いは……と見当をつけていましたけれど、やはり貴族かそれに準じる身分の出身だったようですわね。


「で、そのお忙しい竜騎士様が、こんな僻地も僻地、『闇の森(テネブラエ・ネムス)』の傾きかけたあばら家へなんの用だい?!」


「用という程のこともございません。最近、ようやく一人前になった『吹雪(フブキ)』――当家の飛竜(ワイバーン)での遠乗りがてら、大御婆様のご尊顔を拝するため立ち寄った次第でして。それと――」

 持っていた籐籠をレジーナの方へ差し出しました。

「妻が焼いたパイと、南方の果物です」


「――ふん」

 不満そうな顔で受け取るレジーナ。とは言え、口に出して不平を言わなかったところを見ると、結構喜んで受け取っている部類でしょう。


「そうそう、息子を紹介してもよろしいでしょうか? 今年11歳になる長子のルーカスです」

 それから、緊張でカチコチに棒立ちになっている少年を指し示す。


「ふんっ。青菜みたいな小僧だね。どうせ連れてくるんなら、もうちょっと肉付きを良くしてから連れてきな。どうにも喰い応えがないじゃないかい」

 丈夫そうな歯と歯茎を剥き出しにして、含み笑いを放つレジーナ。場所といい見た目といい、冗談に聞こえないところが怖いです(まあ、事実なら私はここに来た初日に美味しく食べられていましたが)。


「さあ、ルーク。高祖母様にご挨拶なさい」

 一瞬怯んだ様子を見せたものの……案外豪胆なのでしょうか、促されてルーク(ルーカス)少年が、迷いのない足取りで一歩前に出てきました。


「はじめまして高祖母様。僕――いえ、私は、ジャンルーカの孫であるエイルマーの息子、ルーカス・レオンハルト――」

「ああ、もういいよ! ごちゃごちゃ言われても年寄は物覚えが悪いんだからさ。ジャンの曾孫で、ルーカスだね。それだけ聞きゃ充分さ」


 面倒臭そうに片手を振って、レジーナはルークの挨拶を遮ると、しかめっ面を私の方に向けます。

案山子(かかし)みたいにいつまでも突っ立てるんじゃないよ、ジル! さっさと台所に行って香茶(こうちゃ)でも準備しな!」


「――は、はい。少々お待ちください」

 即座に蹴り跳ばさんばかりの勢いで怒鳴られ、私は姿勢を正して台所へ向かいました。


 そんな私の足運びを見て、騎士――エイルマー氏が、なぜか感心したような顔をしていたのが印象的です。




 ◆◇◆◇




「お待たせしました」

 人数分の(勿論、自分の分はありません)香茶を淹れて居間に戻ると、どこから引っ張り出したのか丸テーブルを囲んで、3人が各々席についていました。


 香茶とお茶請けの砂糖漬け果実が入った小瓶を置いて、そそくさと退室しようとしたのですが、そこでエイルマー氏からの待ったが掛かりました。

「失礼ですが、お嬢さんはこちらを見上げていた方ですよね?」

「……はい。左様でございます」


 まあ、いまさら顔を隠したところで後の祭りなんですけど、さっきはちょっと距離があったのでこうして顔を隠していれば、記憶が上書きされるんじゃないかと淡い期待を抱いて、無駄な抵抗を試みている私です。


「よろしければ、改めてお顔を拝見できないでしょうか?」

 いやいや、よろしくないので隠しているのですよ。空気を読んでくださいお父さん。


 見れば、ルーク少年も期待を込めた目で私の方を見ています。

 どんだけ物好きなんでしょう、この親子は?! さすがはレジーナの身内だけのことはありますね。


「……(わたくし)の顔など、見る価値もない、お目汚しにございます」

 なので正直に事実を伝え、一礼してその場から退こうとしました。


「「――はっ!」」

 途端、面白い冗談でも聞いたような顔で、親子揃って顔を見合わせて失笑しています。


「………」

 なんなんでしょうね、この失礼な態度は。断られる事なんて思ってないのでしょう。悪い人たちではないと思うのですが、身分の高い人にありがちな無神経さ……鷹揚さが鼻につくというタイプですね。


「見たいって言うなら見せりゃ良いさ。どっちにしろ、竜騎士は『風使い』だからね。その気になりゃ、微風を操ってフード越しに顔を確認することも、スカートの中を覗き込むことも自由自在さ」


 吐き捨てるようなレジーナの言葉を耳にした瞬間、私は反射的に両足を閉じて、ローブ越しにワンピースのスカートを押さえていました。


「なっ……なっ……!?」

 羞恥で声になりません。正直、スカートなんて布切れ一枚で覆っているのですから、何かの拍子にパンツが見えてもどうでもいい――という感覚だったのですが、これが覗かれると聞いた瞬間、全身の血が逆流してして鳥肌が立ちました。


「そう警戒しないでください」

 軽くレジーナを窘めるような視線を送ってから――当然、知らん顔で香茶を飲んでいます――エイルマー氏が柔らかな笑みを浮かべました。

「竜騎士の風の技はあくまで戦いの為の技術です。高空を飛ぶ際に風の勢いから目を守り、その冷たさから身体を守るためにしか使いません。ましてやレディに対してそのような無礼を働くなど、私の名誉と父祖、及び天上におわす神帝陛下の名の元に、絶対に行わないと誓いましょう」


 口ではなんとでも言えますからねえ……。

 助けを求めようとレジーナに視線を送りましたが、我関せずで砂糖漬けのベリーを口に放り込んでいます。


「……とはいえ確かに、嫌がるレディに無理強いをするのはマナー違反ですね」


 軽く肩をすくめて前言を撤回したかに見えたエイルマー氏でしたが、小考して不意に息子のルーク少年に向き直りました。


「ルーク、こちらの「あたしの弟子のジルだよっ」ジル嬢と勝負をしてみなさい。お前が勝てばジル嬢とお目通りが適う。負けたら……そうだな、お前はジル嬢の言うことを何でも一つ聞く、ということで……いかがですかな?」

「面白い! 負けたら明日までにマンドラゴラを30株集めときなよ、ジルっ!」

「「えっ……!?」」


 子供達の意向を無視して勝手に話が決まりました。なんという大人気ない大人たちでしょう!!




 ◆◇◆◇




「本当にやるんですか?」


 庭に出て木剣――単に適当な木の枝を削り出した棍棒のようなものです。条件を同じにするために、双方とも獲物はその場で、即席で作りました――のバランスを確認しながら、私は審判役を買って出たエイルマー氏に再度確認しました。

 ちなみにレジーナは軒下に安楽椅子を持ってきて(まあ、使役魔術で自動で動いてきたのですが)、淹れ直した香茶片手に完全に野次馬モードです。その足元のマーヤは、日向ぼっこ感覚で寛いでいます。


「ええ、遠慮は要りませんよ。私が責任を持ちますので」


 意味ありげにウインクをするエイルマー氏。明らかに私の勝利を確信している風ですね。

 勝負方法を聞かれ私が剣を選択した時にも、「ああ、やはりそうですか」と納得していたようですし、なんとなくこちらの手の内をすでに見切られたまま、カードゲームを始めるみたいで落ち着きません。


(まあ、バレているのはゲームマスターの方で、対戦者には見えていないのが、まだしも救いですけれど)


 見れば、自分と同い年の女の子と、木剣とはいえ剣を交えるということに、明らかに気乗りしない様子で、ルーク少年は手にした木剣をだらりと下げて佇んでいます。


「それでは勝負はお互いの身体に1本でも当てれば勝ちということで……双方ともよろしいかな?」

「「はい」」


 お互いに頷いて剣を構えようとしたところで、ルークは私の背中の膨らみを見て首を傾げました。

「あの、荷物はそのままでいいのですか?」

「ええ。あまり手放しておきたくないものですので」

「随分と動き辛そうに見えますが……?」

「多少は不便ですが、まあ、この程度なら問題ないかと」


 あくまでハンデを背負ったままで自分と闘おうとしている私の頑なな態度が、軽く彼の自尊心に触ったようで、微かに秀麗な眉をひそめて問答を切り上げると、2~3メルト距離を置いて無言のまま木剣を構えました。


 片手で剣を持って軽く腰を落とす――フェンシングの構えに似ていますね――ルークに対して、私は両手で構えました。

 右手を前に出して、背筋をぴんと伸ばす。後ろに残した左足の踵を僅かに浮かせて、剣先を相手の喉元あたり据える。


 その構えを見てルーク少年は、素人のお遊びを見ているような顔で苦笑いを浮かべ、エイルマー氏とレジーナは軽く目を瞠りました。


「――開始っ!」

 我に返ったエイルマー氏の合図とともに、ルークが跳ねるように私の懐目掛けて飛び込んできました。なかなか速い動きですが、明らかに手加減した動きです。

 カウンターで3本は入れられる自信はありましたけれど、取りあえずは1撃を受け止め――目を剥くルークに向かって聞こえるように、「ふっ」と鼻で嗤って――間髪居れず弾き返すやいなや、拝み撃ちで一撃お返ししました。


「うわ――っ!?」

 瞬時に下がったルークの頭のあった位置を木剣が通過しました。


「へえ」

 ちょっと感心しました。まだまだ荒削りですが、反射神経とバネ――特に前後に動くスピードは尋常ではありません。


「少しは本気を出しても大丈夫かな?」


 答える余裕はなさそうです。木剣を構えるルークの表情には、先ほどまであった侮りの色は一切なく、怖いほど集中しています。なかなか状況判断も的確ですね。


「では、いきます」

 返事を待たずに今度は自分の方から、左足で地面を蹴り付け、真正面からルークに打ちかかりました。




 ◆◇◆◇




「いやいや、よい勝負でした」

「はん、そんなモヤシ相手にまた手間取ったもんだね」

 上機嫌で拍手をするエイルマー氏の背後では、レジーナが渋い顔で、空っぽになったお茶請けの小瓶を引っ繰り返して、手に付いた砂糖を舐めています。


 そして私の相手のルーク少年は、あがった息を整えるため、木剣に凭れ掛かるようにして、地面に崩れ落ちていました。


 結局、1本入れるまでに20合ほど打ち合ったでしょうか。ほとんど防戦一方だったとは言え、最後まで諦めずに食らい付いたルークの粘りと精神力は大したものです。


「……はあはあ。今日は僕の負けです。約束どおり、僕にできる事でしたらなんなりと、おっしゃってください」


 顔を上げたルークが潤んだ瞳で――天使のような美少年が汗まみれの高揚した顔で、「なんでもする」って言うのは妙な背徳感がありますね――私に問い掛けてきました。


「約束ですか……」

 周りが勝手に決めたことなので、別段思いつくような事もないのですけれど。

「そうですね。――では、私のお友達になってください」


 思いついた提案を口に出していました。

 ルーク少年が唖然とした顔で、瞬きを繰り返しています。


「私には同い年くらいの友人は一人だけなので、ルーク君がよければ友達になっていただきたいのですが」

 そこで私は意を決して、被っていたフードを引き落としました。

 友達になろうとしているのに、顔を隠したままなのは失礼ですからね。

 これで断られるなら、それは仕方がないことです。

「どうでしょうか?」


 案の定、至近距離から私の素顔を見たルーク君はしばし硬直していました。

 それから突然、壊れたかのように首を上下に振りながら、

「なります! 友達……まずは友達ですね! はい、友達から始めましょうっ!!」

 快諾(?)してくれたのでした。


「よかったぁ! では、男の子のお友達第一号ですね。私のことはジルって呼んでくださいね、ルーク君」

「ぼ、僕のこともルークって呼んでください、ジル!」


 伸ばした私の右手をルークが両手で握り締めて、それから猛烈な勢いで宣言しました。


「今日は負けましたけれど、きっとジルより強くなって見せます! 絶対です!」


 これは私に対する挑戦でしょうか?

「あら、私だってもっともっと強くなりますよ、負けませんから」


 そんな私たちの様子を微笑ましげに見詰めていたエイルマー氏ですが、早くも部屋に帰る支度をしているレジーナを振り返りました。

「いやいや、素敵なお嬢さんですね。いっそこのままうちに持って帰りたいくらいです。どうですか、なんなら将来はルークの」


 なんだか今度は頭越しに人身売買の話が飛び交っています。


「ふん。ネコの子じゃあるまいし、まだまだその馬鹿弟子には教えることが山ほどあるんだ、やるわけにはいかないね!」

「それは残念です」


 本気で残念そうな顔で私とレジーナの顔を見比べるエイルマー氏。それから、同じような顔をしているルークに向かって、励ますような、焚き付けるような口調で言いつけました。


「聞いての通りだ。ルーク、お前も男なら自力でなんとかするんだ。わかったな」

「はい、父上!!」


 元気に返事を返したルークは、晴れ晴れとした男の顔で――なぜか急に大人びた気がします――私の方を見て、力強く頷きました。


 よくわからないので私は曖昧に微笑み返しておきました。


「それでは、大御婆様。今日はそろそろ戻りますが……なにか、ご不便がおありでしたら、遠慮なくお申し付けください」

「はん。余計な手出しされないのが、一番の幸せだね!」


 レジーナの憎まれ口に肩をすくめ、

「機会があれば、また来ます。……ああ、お見送りは結構です」

 と挨拶をしてエイルマー氏は、踵を返しました。


「ジル。僕もまた来ます。その、手紙も書きます!」

「ありがとうルーク。手紙は西の開拓村の村長宛に送ってくれれば、取りに行くので、そちら宛にお願いしますね」

「わかりました」


 そう口々にお別れを言って、森の中の小道へと帰っていく2人を追って、念のためでしょうマーヤが歩いていきました。


「……まったく。最近は煩くなってきて、おちおち寝てられないねえ。ジル、午後からもちゃんと仕事をするんだよ!」

 また大欠伸をしながらレジーナは小屋の中へと戻っていきました。

 あの様子では二度寝するようですね。



 そんなわけで雨上がりの本日は、朝から慌しかったですけれど、結果的に新しいお友達ができたのでした。

ワイバーンはぶっちゃけ燃費が悪いので(一日に馬半分くらい食べないと動かない)案外長距離移動には向きません。

休み休みで帝都から闇の森までは少なくとも10日以上20日近くはかかりますので、「ちょっと来た」というのは明らかに嘘ですが、お互いに腹芸で知らん振りしてます。


12/12 誤字修正しました。

×よそしくないので→○よろしくないので

×藤籠→○籐籠

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もよろしくお願いします。
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[気になる点] 本文では無いですけど、 >休み休みで帝都から闇の森までは少なくとも10日以上20日近く と言うことは、お土産の奥さん作のパイと果物は腐ってませんか?それとも符号みたいなもので、中身は違…
[一言] もしかして惚れたのか
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