第二話 青春とはかくも儚きものなり
桜が舞い散る4月下旬、ようやく俺と濱野は新しい人生をスタートした。高校、15歳から入ることができ、教師どもが作り出した難問をクリアすることで入れることができる青春の道とも言うべき場所。それが、俺自身が思っている高校だった。はず、だった。
「・・・・・・なんだこれ?」
俺の目の前にある青春の道は、違う意味での青春の道だった。
「お〜、我〜〜、金目の物を置いてから入ってかんかい!」
三角形の形をした白い布を口の辺りに巻き付け、釘バットという野球のバットにくぎを打ちつけた物を俺の顔の前に突きつけて威嚇している野郎がいる。その後ろには、これまた古典的な絶滅危惧種に指定されているヤンキーどもが校門の前でたむろしていた。その校門にはかなりはげかけているが、うっすらとこの高校の名前が乗っている。
風真高校・・・・・・聞いたことない学校だ。
「ぎゃああああ! さ、財布を差し上げますのでど、どうか命ばかりは!」
・・・・・・そして、なぜかはわからないが濱野も俺と一緒に子の高校にきていた。ってか、江戸時代の悪役が言うようなせりふでそこまで怖がるなよな〜〜。それに、バットは俺の方に突きつけられているのに。
「なんだかよくわからないけど、俺、今機嫌が悪いんで早くどっかに行ってくれませんかね?じゃまなんですけど、あんた」
そう言って、白布野郎を眼で威嚇する。すると、白布野郎は初めは驚いたものの、すぐにこめかみに青筋を立てて顔を俺の目の前にかづけた。臭いよ、お前の口臭。
「お〜?いい度胸じゃのう、我。俺を誰か知ってての発言か?」
と、言われましてもお前なんか一度も会ったことないし会いたいとも思わないし。
「邪魔だ」
そういって、白布野郎が反応するよりも早く裏拳を鳩尾にたたき込む。
「ひでぶっ!」
裏拳が当たった瞬間、白布野郎はどこかで聞いたようなやられ台詞を吐いて倒れた。
「我が春日神拳の前に、敵はない・・・・・・ってか」
「た、助かったぜ瞬豪。さすが俺のマイフレンド!」
「友達になった覚えはないけどな」
事実、学校以外ではあまり付き合わないようにしているし。ただでさえ女好きで暇さえあれば女を捜しているような奴だからよけい付き合いたくなくなる。
「ひどいわっ!あのときの約束は嘘だったのね!?」
「約束なんかしたことないし、したくもない」
すると濱野は、よよよよと言ってその場に崩れ落ちた。
「うぅ、ひどいわ。あの日の夜、私と交わした約束を覚えていないなんーーー」
その時だった。
「君たちだね?春日瞬豪君と濱野亮太は」
校門の方から、いかにも好調とわかる人がでてきた。ん、なぜわかるかって?だって胸に校長ですってラメの名札がついていたら誰でもわかるぞ?これでわからなかった奴は、ただのあほかただのばかだ。
「ーーーで、俺だけ呼び捨て!?そしてなぜに、瞬豪だけに君をつけてるの!?」
ラメでできた名札にはツッコミを入れない浜野。肝心なときに限って役に立たない男だな、おまえは。
「いっとくけど、ラメの名詞にはつっこまないからな!ツッコミを入れてくれってオーラがプンプンでてるんだよ」
「ちょっと瞬豪君と浜野に話があるんだが少々時間をもらえるかね?」
好調は浜野のツッコミを無視して話を続けた。浜野がツッコミをスルーされたせいで その場に座り込んでなにやらぶつぶつと独り言を言っている。
「別にいいですよ。俺も、何でこんな目に遭っているのかを知りたいところですし」
「そうか、それじゃあ話が早い。まずは私の部屋に来てくれついでに濱野も」
「俺、ついで!?」
なぜか濱野だけに対しては厳しい風真高校の校長。そんな校長に瞬豪は親近感を感じるのであった。
続くと思う。
「思うのかよ!?」