その名は『めるへん』〜四騎士達のドリームな一日〜縦書き表示RDF


※本当に趣味に走りました。すみません。中途半端なギャグ風味や哀嬢至上が苦手な方は申し訳ないですがリターンお願い致します〜(>人<)

その名は『めるへん』〜四騎士達のドリームな一日〜
作:楓






その異変に気付いたのは快斗だった。



「なー名探偵、哀ちゃんまだ帰ってねーの?」
「は?いねーのか?」

新一が壁を見上げると、時計の針は夜の9時過ぎを指している。

「………もう寝てんじゃねーの?相変わらず地下室に閉じ籠ってるとか」
「確認済に決まってんだろ?大体それなら工藤に聞いたりしねーよ!そもそも今日だけじゃねーんだよな。ここ3日程ずっと哀ちゃんの帰宅は10時過ぎ。おかしくねぇ?」
「10時過ぎって………灰原アイツまだ小5だろ。確かに遅いな」
「てか黒羽おんどれストーカーかい」
「ほー。どっかの誰かさんみたいな抱きつきセクハラ魔と一緒にしないでくんねーか?」
「だーれーがーセクハラや!」

平次と快斗の言い合う姿を横目に見ながら、白馬はゆっくりと上品な仕種で紅茶を飲み、隣に座る新一に問いかける。

「そういえば、阿笠博士はどうしてるんだい?」
「博士は先週からずっと海外。しばらく留守にするからって灰原の面倒頼まれてんだけど、当の灰原が『必要ない』ってスッゲー冷たい態度で。こっちに泊まれっつってもアイツ聞かねーんだよな」
「なんや哀チャン今週ずっと一人やったんか?こっち呼んだったらええやんけ。男手よーさん揃っとるから怖かないし安心やろ」
「人の話聞いてたのかよ服部?灰原自身が放っとけっつってんだよ!大体、男手揃ってるってオメーなぁ………そもそもオレは、この家に常にオメーら三人が揃ってるコトの方が怖エーよ。白馬も黒羽もなんでまっすぐ家に帰んねーんだよ。明日も講義あんだろが」

新一が呆れた様子で二人に視線を向ける。

ここ工藤家のリビングでは、平日休日関係なく彼らの寛いでいる姿が見られる。家主である新一の両親がなかなか帰国しないのをいいことに、事ある毎に彼らはこの場所に集まる様になっていた。
それは隣家である阿笠邸も同様だ。新一は昔から何かと出入りを繰り返していたし、他の三人は、哀が博士と一緒に暮らし続けると決まってから、ますます頻繁に阿笠邸を訪れる様になっていた。
今の彼らにとって、この二つの場所は大切な『戻って来るべき場所』だ。

「オレが工藤ン家に寄るのは哀ちゃんに会いに来たついでだし。つ・い・で!」
「じゃあ僕は黒羽君を追ってきたついでですかね」
「オイ。なんでオレを追ってくんだよ」
「さあ?ここでは言えませんね」

相変わらず何年経とうとも変わらない二人のやりとりを遮って、新一が言う。

「まぁとりあえず、黒羽が言う10時過ぎまで様子見てみよーぜ」












キィ……ぱたん。



時刻はきっかり10時半。隣の阿笠邸から玄関の扉を開く音がかすかに聞こえた。それは一瞬の出来事で、周囲にはすぐに静けさが戻ってくる。────しばらくして部屋の明かりが灯された。



一部始終を工藤家のカーテンの隙間から確認して、四人は顔を突き合わせ話し合う。



「なっ?見ただろ?どーするよコレ」
「これも非行という事になるのだろうか……」
「アカン小5にして夜遊びを覚えてもうたか…工藤の教育が不甲斐無かったんやな」
「待て待て待てオレは教育した覚えねーし。大体服部や黒羽の方が博士ン家に始終入り浸ってるじゃねーか。教えたとしたらオメーらだろ」

この家には他に誰もいないというのに、何故か小声で囁き合う四人。

「───しゃーねー。明日、尾行するっきゃねーな」

ほんの少し思案して新一が発した言葉に、他の三人が口々に尋ねる。

「なんや先に本人に理由聞かんのかいな?」
「あの灰原が正直に話すと思うか?」
「思えませんね」
「だろ?」
「名探偵、まさか四人で尾行?バレるんじゃねーの相手はあの哀ちゃんだし」
「まぁそこは世に名高い名探偵三人プラスαだからな。超有能揃いな四人な訳だし平気だろ。全員気配消せるし」
「プラスαって。黒羽素人やんけ」
「ああ、彼なら問題ないよ。まかり間違って何かの役に立つ事もあるかもしれないからね」
「白馬テメー褒めてねーだろ」
「ええ勿論褒めてませんよ」

再度、お互い火花を散らしながら言葉の応酬が続きそうな気配に、新一は溜め息をつきながら疲れた様に言った。

「ああもうウルセー、とにかく明日空いてるヤツはミッション参加!集合は昼過ぎくらいでいいだろ。とりあえずオメーら、夜も遅いし今日はさっさと帰って寝ろ」

その言葉を合図に、その日はお開きとなった。






◇◇◇





翌日。



哀が学校から小走りに帰宅してきた。阿笠邸に入った数分後に、哀は再び外出する。着ている服が先程とは違う。どうやらわざわざ着替えてきたらしいその姿に、新一は怪訝そうな顔をする。

「………なんだよあのカッコ」
「あ、アレ先週オレがプレゼントしたワンピース!うわメチャ嬉し〜かも!大人っぽくて絶対哀ちゃんに似合うと思ったんだよな!サイズも何もかもオレ完璧!」
「なんや黒羽、ちゃっかり抜け駆けしとんかい」
「よく言うぜ、服部は先々週哀ちゃんに鞄と靴と傘を買って贈ってただろ、全部バレてんだよ!」
「オメーら、まだ続いてたのかよその勝負。二人揃って報われない程の馬鹿だよな………」
「そんな事で哀さんの気持ちが揺らぐはずもないのが分からないのかい?実に無意味な争いだ………」
「ンなセコい真似すっかよ!バカか白馬!」
「せや!オレらはただ可愛らし哀チャンを目の前で見たいだけや!」

四人は小声で揉めながらも、十分な距離をおき、慎重に哀の跡をつける。ちなみに本日の講義は、全員自主的なサボリだ。『大学の講義より優先順位は哀が上』────何も語らずとも、彼らの一致する考え方だったらしい。



電車で一駅移動して、やがて哀が入って行ったのは一件のメルヘンチックな外観の喫茶店。名前もそのまま『喫茶めるへん』。



「………なんでわざわざ隣町の喫茶店なんだ?」
「コーヒーなら、哀ちゃんがいれた方が絶品じゃん」
「なんや哀チャンがこんなメルヘンな店に入る事自体、メチャ違和感あんのやけど」
「………考えたくはないのですが………」

顎に手を添えて考え込んでいた白馬が、何かに気付いたかの様に顔を上げる。その端整な横顔に、他の三人の視線が集まる。

「もしやデートの待ち合わせでは」
「「「…………………」」」





しばしの沈黙。





「ねーよ!ありえねー!だって小5だぜ?あの灰原だぜ?」
「いや分からんで?なんせ哀チャンや。最近ますます別嬪になりよったからな。よお考えたら昔っからヤケにオッサンに声かけられとるし。オレらが目ぇ離した隙に狙われたっちゅー可能性も」
「くっそマジかよ!やっぱ週4回程度の訪問じゃあ、悪い虫がつくのを止めらんねぇのかよ!」
「週4って……黒羽君、君はどうやら僕を撒いて哀さんに会いに行っている日がある様だな。僕が把握しているのは3回までだが」
「その発言!微妙に怖エーんだよ白馬!」
「と……とにかく入るぞ!こうなりゃ灰原の相手の顔を拝んでやる!!」





カランカラ〜ン






「「「「「いらっしゃいませ〜〜〜〜!」」」」」






響き渡る可愛らしい声と、外観にも負けずメルヘンチックな店内に、思わず固まりたじろぐ四人。断じて男同士で来る店ではない。瞬時に店内に入った事を後悔する。『なんだココ!ホントに喫茶店なのかよ!?』『どーすんねん明らかに浮いとるでオレら!』『てか帰りてー!』『これも一種の社会勉強では?僕は慣れたら馴染めそうですが』入口で顔を寄せ合いコソコソ話す四人。すると──────



「あら新一君じゃない」

「園子!?」



鈴なりになった店員の中に、フリフリのメイド服を身に纏った園子がいた。新一は見知った顔を見つけて心底安堵する。

(オメーのフリフリ姿って…なんかビミョーかもしんねーな)

気持ちが緩んで、園子に聞かれたら殴られかねない事を考える新一。園子に話しかけようと一歩踏み出して──────『アリエナイ光景』に気付いた。





「…………………貴方達、何してるの?」





「「「「…………………」」」」





目の前には、今日のミッションの原因となった少女。四人は無言でその姿を凝視する。





((((………メイドだ))))


((((白のフリフリエプロン))))


((((黒のミニワンピース))))


((((背中編み上げリボン))))


((((レース付き黒ニーハイ))))


((((どっからどー見てもメイドだ))))





「……どうして男四人でこんな店に来たのかは後でじっくり念入りに尋問させてもらうけれど。そうやって入口に立たれたままだと他のお客様に迷惑なの。入るの?入らないの?」

「「「「入ります」」」」



哀の問いかけに反射的に返事をして、あらためて我に返る四人。

「────てか何してんだ灰原!?思いっきり労働基準法違反しまくりじゃねーか!」
「バカ名探偵それどころじゃねー!」
「せや写真!写真やデジカメ出さんかい黒羽!」
「哀さん、貴女なんて真似を……僕の前だけでいいんですよそんな服装は……!」
「寝言ほざいてんじゃねぇ!白馬の前にこんな哀ちゃん置いとけっかよ!」
「しかしなんやどないなっとるんやこのスカートの中」
「そこ服部!スカートめくってんじゃね――――!オメーら灰原に触んな!────園子ォ!ちょっとこっち来い!!」
「ああそれはパニエですよ。昔からの淑女のインナーですね。しかし凄いレースのボリュームですね」
「うわぉ黒のミニから覗いた白フリフリレース!最高じゃねーか!てかレアモノ!永久保存!!お持ち帰り決定!!!哀ちゃんこっち向いてハイポーズ!」
「……………………貴方達とことん馬鹿だったのね………」



興奮気味に哀に話しかける三人を気にしながらも、新一は園子を少し離れた場所まで引っ張って行く。



「────園子!オメー何か知ってっだろ!」
「ンフフいやーね何怒ってんの!心は大きく広〜く持たないと!」
「笑い事じゃねー!説明しろ!」
「いやんだってえ〜、ここの制服、超可愛いからってスッゴク話題でさ、社会勉強も兼ねてバイト始めたんだけど。同じシフトに入ってた娘が急に入院しちゃって〜。蘭は空手の試合が近くて忙しいし、困ってたら偶然あの子と会ったのよ!ホラあの子、異様にしっかりしてるじゃん!大人っぽいし、あんな風に軽く化粧したら全然わかんないし。しかもちゃんとオーダー聞けるどころか料理もメチャ上手くて、あの子の作った《哀特製☆すぺしゃるプリン》とか《哀手作り☆カラフルびっぐぱふぇ》とかメニューに採用されてるし。『あのツンとしたところが隠れブームなんだよ』とか言われて今じゃオーナーの超お気に入りなのよ〜」

(そりゃオーダーくらい聞けっだろーよ!ホントはオメーより年上なんだからな!つーか何だよそのメニュー名は……)

「ま、一週間だけだから!ね?新一君お願い見逃して!あの子の保護者には黙っててくんない?」
「今はオレが保護者なんだよ!」
「え?ラッキー!じゃあいいじゃん!新一君達が毎日迎えに来てくれたら夜道も安心だし!」
「だからンな問題じゃねーだろ!?アイツまだ小5だぞ!?」
「あ〜ダイジョ〜ブ!あの子オーナーの娘さんってコトになってるから。何か聞かれても『父の手伝いです』って言う事になってんの。その見かけによらない親孝行さがまた客のハートを掴むみたいでさぁ」
「ンな問題でもねー!あのカッコ!何だよアレ!あんなの灰原に着せたらゼッテーある意味犯罪だろーが!つーか変質者犯罪激増すっだろが!!」
「何よアレがいーんじゃない!激カワでしょ?目の保養でしょ〜?凄いわよあの子、この店の一番人気なんだから!ガキんちょのくせに全くもう!」
「…………………ダメだコイツまったく通じねー……」



新一はそれ以上何も言う気になれず、がっくりと肩を落とした。
どこか虚ろな視線を上げた先には、甘く蕩ける様な笑顔を浮かべた野郎共三人と、彼らからオーダーを聞く綿菓子の様にふわりと可愛らしい哀の貴重なメイド姿。


「………保護者ってツレー…」


長い長い諦めの溜め息を吐き出しながら、新一は彼らのテーブルへと歩いて行った。



『喫茶めるへん』オーナーの愛娘デビューとその可愛らしさは、大々的な噂となり近隣の中高大学生社会人の間を駆け巡った。彼女目当てにひっきりなしに客が訪れ、皆一様に蕩ける様な笑みを浮かべ、束の間の幸せな気分に浸り、店を後にする。
それと同時に、彼女と帰宅を共にする四人の凛々しい騎士達の噂も瞬く間に広がったという。






◇◇◇



工藤家のリビングでは、真剣な表情をした平次と快斗と白馬がテーブル上に身を乗り出し無言で睨み合っている。少し離れた場所で、新一と哀はその光景を見ていた。

無事一週間のバイトをやり遂げた哀は、皆に名残惜しまれつつ『喫茶めるへん』を後にした。特にオーナーは最後まで引き留めたがっていたのだが、新一が問答無用で連れて帰り、帰宅早々『灰原オメーは博士が帰って来るまでオレの家に住め!』と凄まじい迫力で押し切り、しぶしぶ哀を頷かせた。

「………で、灰原。オメー何の見返りがあって、あんなバイト引き受けたんだ」
「あら何の話かしら」
「しらばっくれんな。オメーがあんな柄でもねーコト、タダでやるわけねーだろ」
「………工藤君、貴方もっと言い方を考えて発言した方がいいわね」
「んだよ本当のことじゃねーか」

『隠し事は絶対に許さない』と、幾分責めを含んだ視線で睨んでくる新一に、哀は軽く笑って肩をすくめ、妙に可愛らしい口調で言った。



「貴方には秘密」



新一はますます苦い顔になり、哀はそれを見てクスリと笑う。『……貴方に解けない謎はないんでしょう?名探偵さん』と囁き、くるりと背を向ける。

彼女の向かう先には、現像した大量の生写真を奪いあっている三人の姿。

ネガとデータと写真を回収するべく、哀は軽い足取りで歩いて行った。







※本当は、題名はこれまでのパターンから考えて『〜四騎士とメイド嬢の一日〜』にしたかったのですが、完璧ネタバレなので諦めました(^^;
※初☆新一&白馬本編登場記念…がギャグ風味で申し訳ございませんm(__)m新一のテンションはafter話よりは普通です。多分。
※読んで頂き、本当に有難うございました〜(*^^*)













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