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幸せのケセランパセラン

作者:進士夜紳士
私のホワホワとした気持ちを、最大限に表現してみました。
とても恥ずかしいのですが、御覧になってくださると嬉しいです。
 八月一日。今日は、田舎にあるおじいちゃんの家へと行きました。

 おじいちゃんはいっつも幸せそうな笑顔で、僕の話を優しく聞いてくれます。
「コウタちゃん、今日は元気ないんだね」
「……うん、実はね」
 何がきっかけだったのかも分からない――友達との喧嘩なんて、そんなモノだと思います。だから、おじいちゃんは困ったように笑って、しわだらけの手で僕の頭を撫でてくれました。
「でも、仲直りはしたいんだよね」
「……うん」
 フクシくんは、もう口も利いてくれないと思うけど。それだけ僕も怒って……僕が怒らせちゃったから。だけど、なんだかモヤモヤするんです。
 落ち込んだ僕の顔を見て、「そう……じゃあ特別だよ」と、おじいちゃんはガラスのビンを持ってきました。
「コウタちゃん、ケセランパセランって知ってるかい?」
「ケセラン、パセラン?」
「そう、ケセランパセラン……ほら、この綿毛」
 透明なビンの中には、タンポポの綿毛のような――けど違う、白くてフワフワした毛玉が一つだけあります。
「ふふふ……これはね、本物の妖精なんだよ」
「えっ!」僕は驚いて、「ど、どうやって捕まえたの?」なんてトンチンカンなことを訊いちゃいました。
「おじいちゃんも昔、辛いことがあってね……その時に、空から降ってきたんさ」
 ほいっと、おじいちゃんは僕にビンを渡します。
「コウタちゃん、そのケセランパセランはね……一つだけ、願い事を叶えてくれるんさ。だから『フクシくんと仲良くなりたい』って思いながら、一生懸命育ててみんさい。きっと、仲直りできるから」
 おじいちゃんの……大事な大事なケセランパセラン。
 僕は胸一杯に嬉しくなって、「ありがとう、おじいちゃん」って言いました。


▼△▼△


 八月十三日。今日は、ケセランを眺めながら、考えごとをしています。

「どーしたらいいのかなぁ……ケセラン」
 フクシくんとは、いつの間にか仲良くなっていて、気が付いたら友達で……仲良くなる方法なんて、もう覚えてなくて。
 いくら考えても、勇気が出ません。
「あ……そろそろ、ゴハンだった」
 僕は小さく穴の開いたフタを外して、お母さんから貰った『おしろい』をふりかけます。おじいちゃんの話だと、『おしろい』はケセランの大好物だそうです。
 ケセランのことは、お父さんとお母さんには内緒なので、『おしろい』を貰う時には不思議そうに見られました。まったく、ごまかすのも大変です。
「おっきくなあれ、おっきくなあれ」
 ビンの上から、ふりかけます。けど、僕の顔は下を向きます。
 フクシくんと会うたび、無視されるのが辛いんです。前みたいに声がかけられなくて、苦しいんです。もういっそ、忘れたいと思いました。でも、そうしたら、おじいちゃんから貰ったケセランが可哀想で……それに、なにより、僕だって諦めたくありません。
 フクシくんと、仲直りしたい。
 僕は、前を向きます。

 すると――増えてました。

「ケ、ケセ、ケセランが……パセランに!」
 もう、わけが分かりません。
 フワフワの綿菓子みたいな毛玉が、おっきいのと小さいのに分かれていたんです。
 こうして、ケセランからパセランが産まれました。


▼△▼△


 八月二十四日。た、大変ですっ! ケセランとパセランが……いなくなりました!

 あぁ、どうしよう。僕のせいです。フタを開けっ放しで『おしろい』を貰おうとしたから……戻った時には、もういなくて。
 僕は急いでクツをはいて、外へ飛び出しました。
「どうしよう……どこにいるの?」
 ドクンドクンと音を鳴らしながら、僕は走り続けます。
 一生懸命、大切に育ててきたのに……おじいちゃんに何て言ったら……!

『おじいちゃんも昔、辛いことがあってね……その時に、空から降ってきたんさ』

 そうだっ。
 僕は真夏の青空を見上げ、ケセランとパセランを探します。
 上を向いて、息を切らせて、前も見ずに。
 ドンッ、と案の定ぶつかってしまいました。僕は思わず、シリモチをついてしまいます。
「ご、ごめんなさい!」
 ようやく前を見て、パッと謝った相手は――フクシくんでした。
「…………」「……あ、あぅ」
 フクシくんは何も言わないまま、僕は地面にオシリがついたまま――時間が、止まります。
 何度も言えなかった、『ごめんなさい』の言葉。
「……ぷ、くっははは……なんだぁ、アホらしい。おら、立てよ」
 ぶっきらぼうに、フクシくんが手を差し出す。僕に向かって、手を差し出してくれました。
 僕はたまらなくって、手を取ります。強く、握り返します。
「あ、ありがとう、フクシくん」
「さぁて、なんのことだかな。で、どーしたよコウタ。急いでたんじゃなかったのか?」
「あっ……あ、そっか」
 その時、僕は、願い事が叶ったんです。
 ケセランが……叶えてくれたんです。


▼△▼△


 これで、『僕の夏休み』を終わります。

 空を見て、風に運ばれたパセランのことを思うと……ちょっぴり寂しくて、少しだけ幸せな気持ちになりました。
 僕とフクシくんは、今でもずっと友達です。

挿絵(By みてみん)
 初めましての方は初めまして。作者の進士夜 紳士です。
 本作は……夏休みの自由研究、『ケセランパセランの観察日記』です。次第に感情移入してしまって、書き始めたら止まりませんでした。

 このケセランパセランですが、なんと実在致します。今現在でもその正体は知れず、未確認生物らしいです。
 妖怪だとか植物の種だとか言われていますが、関連していることは『持ち主に幸せを呼ぶ』だそうですよ。
 1970年代後半には全国的なブームにもなったみたいです。その時は皆して空を見上げていたかもしれませんね。
私は落ち込んだ時に、よく空を見ます。すると不思議なことに気分が晴れるんです。

 この小説を読まれた方、是非ともケセランパセランを探してみては如何でしょうか。きっと幸せに……なれると思います。

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