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お茶会にて1

 イギリス人大好きビスケットのミルクティー浸しは、なぜ単体で食べるよりもおいしく感じるのか、研究した大学があるとかないとか。

 こむるは、子供のころトーストのミルクティー浸しが好きでした。パンを食べ終わったあとの紅茶は、マーガリンが浮いてて悲惨な状態でしたがね。




番外あれこれ

 チート転生とかゲーム転生とかループものって、強くてニューゲーム状態だったり、今後の展開やキャラの情報があらかじめわかっててけっこうずるいよね。でも、こむるが一番ずるいなあと思うのは、地球産の料理や技術ファッション思想などなどを、自分ひとりで発明したことにしちゃってる主人公です。

 まあ、しょうがないっちゃあしょうがないのですがね。

「つまりね、簡単に説明するとちょっとした手違い――うーん、想定外ってやつなんだ」


「はあ、そうなんですか」


 サキ――西宮沙希は白い空間にぽつんと置かれたテーブルで、十歳くらいの少年とお茶会をしていた。


 どっしりとその存在を主張するホールのチーズケーキ、アップルパイ、ショートケーキ、ガトーショコラ、プディング、山盛りのビスケット、スコーン、キャンディ、チョコレート、シュークリーム、マカロン……並々と注がれたミルクティーに、チョコレートがけのビスケットを浸してかじると、チョコレートコーティングされていない部分が紅茶を吸った重みに耐えかねて、ぼとっとカップに落ちた。


 マッドなティーパーティーって、こんな感じだったのかしらとどこかぼんやりした頭で考える。

 そもそも、なぜ自分はこんなところにいるのだろう。たしか、就職してはじめてもらった給料で、母にちょっといいレストランでの食事をプレゼントしてなぜか泣かれて、そして帰るところだったはず。


「“あの事故”で、本当は君のお母さんは助かるはずだったんだよ。覚えてるかい?」


 ああ、そうだったっけ。あのときサキは、とっさに母を迫り来るトラックから抱え込むようにしてかばったのだけど――


「あれ、でもそのあとすぐに誰かにわたし、突き飛ばされたような――」


「そうだね。それが“想定外”。君にかばわれて一命を取り留めるはずだったお母さんは、君を助けたい一心で君を突き飛ばし――結果、残念なことに二人とも助からなかったんだ。あ、紅茶新しく入れるよ」


「そうだったんですか……ああ、ありがとうございます」


 ふるふると表面張力の限界に挑んでいるカップを持ち上げ、一口飲む。


「あのところで、なんでわたしは死ぬような目にあったというのにこんなに落ち着いてるんでしょう? 普通ならもっと取り乱していてもおかしくないような」


 自分や家族が死んだと聞かされて、こんなに平静でいられるだろうかと疑問に思う。


「パニックになって落ち着いて話せないのも困るしね、事故の記憶やそのときのショックを、感情と結びつけないように一時的に隔離させてもらったんだ。時間をかけて少しずつ効果はなくなっていくから安心してね」


「わかりました、ご親切にどうも」


「親切……なのかな」


「たぶん……?」


 申し訳なさそうな顔の少年に礼を述べると、少年は首をこてんとかしげた。つられて沙希も首をかしげる。


「あ、紅茶のおかわりはいる?」


 カップに注がれた紅茶にとうとう堤防が決壊し、受け皿にあふれた。


「まあ、そんなわけでだね、こういうことが起こった場合、もう死んじゃったのはどうしようもないから、どこか別の世界で生き返ってもらうことになってるんだけど」


「じゃあ母さんは生き返るんですか? よかった」


 早くに父を亡くし、女手ひとつで育ててくれたというのに、沙希を助けようとして共倒れだなんて申し訳なさすぎる。


「ところがね、死んだままでいいとお母さんは言うんだ。その代わり君を生き返らせてほしいって」


「え――?」


 アップルパイ相手に格闘していた沙希は、ナイフを片手に目を瞬かせた。


「無償の母の愛ってやつ? とにかく、そういうことだから。さくさく必要なことを決めていこうか」


「あ、はい……」









 これから生きていくことになる世界について簡単に教えてもらう。

 魔法や魔物が存在する世界。生活様式はこちらでいうところの西洋風、まだフランス革命的なものは起こっていない。


「この場合、トイレやお風呂はどんな感じなんでしょう」


「魔法が使える人はそれなりに快適なんじゃないかな」


「なるほど」


 このまま送ることもできるけど、これまで生きてきた分の経験や年月を、なにか希望するものや能力に置き換えることもできると少年は言った。サポートの一環なのだとか。ただし、その分若返っていく。


「お母さんの四十八年分もあるから合計で七十年、けっこういろいろできると思うよ」


「ぎりぎりまで使ってしまったら、赤ちゃんで新しい世界に放り出されるってことですか? 生きていけるのかしら……?」


「あー、そこまで気が回らない子って多いんだよね。だから、十歳を下回った時点で“生き返る”じゃなくて“生まれ変わって”もらうことにしてるんだ」


 たしかに、十歳ならなんとか生きていけそうだし、それくらいが妥協点なのかもしれない。


「どんなのがほしい?」


 売れ筋は定番の身体能力や魔力をどうこうするものや、剣術魔術の才能、何かしら鑑定する能力、薬の調合に錬金術、なんでも収納できる道具や丈夫な武器防具など。


「鑑定とか場合によっては錬金術とか、あと収納なんかは魔法でできないんですか?」


「できるよ」


 即答だった。沙希は首をかしげる。


「それぞれ別物としてもらう意味はあるのかな」


「何でも細分化してそれぞれ“スキル”として扱うっていうのが最近の流行りみたいだね。魔法でも属性がどうとか」


「流行りっていったいどこの……?」


 異世界事情、よくわからない。


「まあそれはいいとして――とりあえず庭付き一軒家と当座の生活資金をください」


「――えっと?」


 よく聞き取れなかったらしい少年のために、沙希は繰り返した。


「家と、お金をください」

プリンメモ


・全卵1個に対して牛乳120~130cc、砂糖大さじ2、バニラエッセンス少々。小さめのマグカップ2つ分になる。

・カラメルソースを少量作つくるのって、かえってめんどくさい。

・砂糖の半量をメープルシロップに置き換え、カラメルソース代りにメープルシロップを使ってメープル風味と言い張る。

・知人曰く、黒糖を使うとカラメルソースいらずのコクが出るとかなんとか。

・別に市販のカラメルソースを使えばいいんじゃね?




 こむるは、少し前に一世を風靡して、いまやすっかり定番となったとろとろ系よりも少し固めくらいが好みです。

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