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出会い

 さんざんテ ン プ レ 異 世 界 () とか言っておきながらお前もテンプレ書いてるじゃねーかって?

 むしろこのお話を作るにあたってあれこれ考えた副産物だから問題ないのです!




番外あれこれ:

 NAISEIするにあたって、ある特定の分野だけ妙に文化レベルが低い異世界さんがいらっしゃるじゃないですか、よく見るのはファッションとか文学とか特に料理とか。

 あれ、現代チートSUGEEEのインパクトを出したいってのはよくわかるんですが、なんか読んでて異世界さんをばかにしてるというか下に見ているような気がしてきて、なんか異世界さんに謝りたくなってくるんですよね。

 え、そんなしょうもないことで謝ってるのはお前だけだ、ですか。そうですか。

 なんかこう、外国人から見た日本人のここがスゴイ! とかこんな日本SUGEEEなエピソード! 的なスレを読んで日本マンセーしてるあの感じに似てるっていうか……みなさん愛国心に溢れてるよね。

 よく晴れた春の日。サキは森の入り口に無造作に置かれている倒木をベンチがわりに、お弁当を広げていた。

 森と草原の境界に茂っている木苺を摘みに来ているのである。


 今日の献立はとりの唐揚げと玉子焼き、カボチャとジャガイモの一口グラタン二種にごま塩のおにぎり。ちなみにサキは、玉子焼きは砂糖を入れて甘くしたのが好きだ。


 いただきます、と丁寧に頭を下げて食べようとーーしたところで森から出てきた冒険者らしき青年と目が合う。


 だいたい二十歳前後だろうか。整った顔立ちの、金髪に鮮やかなライムグリーンの瞳、藍色に銀の縁取りがされた軽装、腰には長剣とナイフ。

 かっこいいお兄さんだなあと眺めていると、彼の視線はサキの膝の上に置かれた小さな箱に向けられた。そして驚愕に目を見開く。


「玉子焼き!? おにぎりに唐揚げまで……!」


 そのままお弁当に目が釘付けになったお兄さんを見上げるサキも、驚きを隠せずにいた。


 思わず漏れたらしい青年の呟きに、もう二度と聞くことはないだろうと思っていたサキの生まれ育った国の言葉が混ざっていたのだったのだ。


(えっと? あれ、なんでこんなところに……あれ?)


 凍りついたように見つめ合う――訂正、別に見つめ合ってはいなかった、お兄さんが凝視しているのはお弁当だった。

 何か言わないと、でもとっさに何を言えばいいのかわからない。何度か口を開きかけては閉じ、結局サキは収納魔法と直結させている肩掛けかばんからピンクの水玉模様のハンカチの包みを取り出し、


「よかったら、一緒にお弁当食べませんか?」


 予備のお弁当を、お兄さんにそっと差し出した。









(いい天気だなあ)


 サキは水筒からほうじ茶を飲みながら、青い空を見上げた。

 隣では、お兄さんが泣きながらふたつめのお弁当を食べている。

 サキは、料理は作れるときにまとめて作って収納することにしている。魔法で作られた空間に入れたものは時間が止まる(お約束である)ので、作りたての状態で保存できて便利なのであるが、お弁当の冷めたご飯やおかずの独特の感じが好きなので、サキは、お弁当は冷ましてから入れることにしている。


(あ、鷹だ)


 草原のうさぎやねずみを狙っているのだろうか。

 そういえば、今日は珍しくまわりに誰もいない。いつもなら駆け出しの冒険者や小遣い稼ぎの子どもが、薬草あるいはうさぎ捕りをしている姿を見かけるのだけど。

 王都を出てすぐの草原はもちろん、森の浅いとこまでなら危険な獣や魔物はいない。そのため安心して作業ができるのだ。

 幼い弟や妹を連れて来る子もいるが、まだ薬草の見分けがつかないような子たちは、花や木の実を摘んだり鬼ごっこをしたりして遊んでいる。


 木苺を独り占めできるのはラッキーだけど、一緒にとる仲間がいないのは、それはそれで寂しい――などと考えているうちに、お兄さんは食べ終わったらしい。

 お茶の入ったコップを渡し、きれいに空になったお弁当を受け取る。


「ぐすっ、ありがとう……その、すまない。見ず知らずの他人にたかるような真似をして……」


「ううん、気にしないで」


 恥ずかしそうに目を伏せるお兄さんに笑いかける。


「ひとりで食べるのってちょっと寂しいなって思ってたし――お兄さん、随分久しぶりだったんでしょう? 向こうの食事」


 そう、仮にお兄さんが見かけ通りの歳だったとして二十年かそれくらいは食べていないのだろうと思うのだ。


 黒目、黒髪の自分に対して金髪――はともかく、黄緑色の目の人は、たぶんサキの故郷にはいない。

 それが意味するのは、サキとお兄さんとでは少々事情が異なるのではないか、ということで――


「あ、まだ自己紹介してなかったね。わたしサキっていいます。三ヶ月くらい前に“こっちに来た”の」


「ああ、そうか。俺はアルスと――ちょっと待て」


 アルスと名乗ったお兄さんは、サキが言外に込めたニュアンスを読み取り、眉をひそめた。


「こっちに“来た”――?」


「うん、そう。わたしは“来た”んだけど」


 サキはうなずく。


 こっちに。この世界に。向こうから。地球の日本から。


「でもお兄さんはたぶんそうじゃないんだよね」


「ああ――俺は、こっちで“生まれた”から……」


 困惑したようなアルスの声。

 三ヶ月ほど前に世界を越えてやってきたサキがはじめて出会った同郷の人は、正確には元・同郷の人だった。



お弁当メモ


一口グラタン

用意するもの:

・かぼちゃ、じゃがいも(一口大に切る)

・ホワイトソース、ミートソース(市販のものを使うと楽)

・粉チーズ、ピザ用チーズ、パン粉など(お好みで)

・お弁当用カップ(トースター、オーブンに対応したもの)


作り方:

・かぼちゃとじゃがいもに火を通す。茹でる、蒸す、レンジにかける、各々やりやすい方法で(こむるは蒸すのがおいしいと思う)。

・カップにひとつずつ入れる。楕円形のカップに二種類入れて、二色グラタンにするのもありだね!

・ソースをのせる(こむるはかぼちゃにホワイト、じゃがいもにミートの組み合わせが好き)。

・チーズをトッピングしてトースターで軽く焼く。その日使わない分は冷凍しておいて当日焼くと便利でしょう。


卵焼き

卵二個に対して、砂糖小さじ1、塩2分のひとつまみくらい。好みに応じて砂糖を各自調整。


りんご

意外と場所をとるうさぎさんのりんご。小さいお子のお弁当箱だとなおさら。

8分の1に割ったりんごをさらに横半分に切ってミニうさぎにして、立ててお弁当箱に入れてあげましょう。あらかわいい。

変色防止の塩水は、ぎりぎり味を感じるくらいの濃さで大丈夫。


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