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闇守護業 2《紺糸》
作:祐太



EL『終わりは地獄の贄』


EL『終わりは地獄の贄』


 翌日。

 やっぱり空調設備が無くて暑い事務所に、三人のロスキーパー社員は静かに待っていた。
 やがて軽快に人が階段を上がってくる音。全員が無表情で立ち上がる。

 淡緑の前髪を払い、撃鉄を指で上げる。 
 指に握られたスパナやドライバーが一回転して、再び女の拳に戻る。
 コキコキと指を鳴らしながら、いつものニヤつき顔をより一層ニヤつかせる。

 三人がドアの前に並ぶ。その様子は、猫達が何も知らずにやってくるネズミを待ち構える気迫に似ていた。
「おっはよーさんっ」
「「「おはようございます、部長……」」」
 見事に並んだ部下三人に、入ってきた真はきょとんと見回す。何故か皆俯き気味で顔が見えない。
「待っていたぞ、真……」
「そうよ、一時間も前から待ちわびてたんだから……」
「てめぇが来るのを楽しみにしてたんだぜぇ……」
「……えーっと、何か嫌〜な感じがするんやけど?」
 向けられた銃口とスパナと拳に、ゆっくりと真は両手を上げる。ドアに背を張り付け、後ずさる。
「その通りだ、よくわかったな」
「この状況で気づかん方がどうかしてると思うで?」
「じゃあ、この次がわかるかしら?」
「はい、なんとな〜く……」
「よし、覚悟は出来てんだな」

 じりじりと三人が詰め寄る。逃げ場は、無い。

「ちょ、ちょっと待てや! ワイ何かしたか!? 何っ? この生命が危険に晒されてる状況!?」
「心当たりは無いか?」
「……もしかして、昨日の事?」
「大正解よ、真」
「褒美をやらなきゃなぁ……」
「え、い、いや、そんなモンいらへんって……」
「遠慮すんなよ、なあ?」
「人の好意は素直に受け取るものよ」
「思いっきり敵意を感じるんですけどっ!」
「どちらでも大差はない……」
「あるっ! 絶対天と地の差があるって!! 何っ? ワイ何されるん!?」

「撃つ!」

「殴る!」

「改造する!」

「いーやーァァァ〜! 特に最後のがァ〜!!」
 逃げようとする部長を遼平が襟ごと掴む! ジタバタ暴れて涙ぐむ真をもう片手で押さえつけていた。
「だって仕方無かったやん! みんなであみだクジで決めたやろ!?」
「そもそも何故あんな仕事を引き受けてきたんだ!」
「今月営業ピンチやったから……」
「だからって警備員が害虫駆除!? 冗談じゃないわよ!」
「全員依頼こなせたんやから問題無いやんっ」
「大有りだ! 俺は一生モンの誤解されたんだぞ!?」
「ワイのせいやないって! 不可抗力やーっ!」
 溜まりに溜まっていた怒りが遂に噴火する。そこで真は、いつもなら皆の怒りを和らげてくれる人物がいない事に今更気づいた。

「……あれ? そういえば純也は?」
「風邪と手足骨折、全身打撲で全治一週間だ。家で寝込んでる!」
「それあんたのせいやんっ!」
「ぐ……、今は関係ねーだろ!」
「あっ、誤魔化したァーっ!」

 ふと事務所に電子音が鳴り響き、真のデスク上の端末に通信が届く。真はまだ遼平に襟を掴まれたまま、通信に出た。珍しく今時映像無しの通信……要するに《電話》だった。
「はい、こちら裏警備会社ロスキーパー中野区支部ですが……」
 受話器を耳に当てながら、真は時折「はい、はい、」と答える。そして、いったん保留状態にして受話器を置き、三人に振り返る。
「……なんか、今度は忍者屋敷の警備らしいんやけど……」


「「「即断れ――――っ!!!」」」


「は、はいっ」



 ……それから至極丁寧に真は依頼を断り、たっぷりと部下達の『好意』を浴びて…………部長の謎の大怪我(全治三週間)で、中野区支部はしばらくの間休業となった。



          依頼2《運命の蜘蛛の糸》完了



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
申し訳ないことにまた続編を出しそうです。
気軽な気持ちで感想を残していってくださると、作者が大変喜びます。













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