闇守護業 2《紺糸》(20/21)PDFで表示縦書き表示RDF


闇守護業 2《紺糸》
作:祐太



第五章『悪戯の如く残酷に微笑んで喰らう』(4)


「……どうやらもういないみたいだね?」

「はいあねさん、あの変な鎧男はまだ二階にいるみたいッス」
「今のうちに絵を盗みやしょう」
 そーっとスパイダーウェーブズの三人は絵画のある部屋に再び侵入してきた。なにやら二階で騒ぎがあったようで、あの鎧の警備員はまだ二階にいる。部屋の隅にさっきはいなかった子猫がいたが、三人は気に止めなかった。
「まったく、何だったんだろうね、あの鎧」
「実は幽霊……だったりして」
「はぁ? バカ言ってるんじゃないわよ」
「でもあねさん、ココは『蜘蛛屋敷』って呼ばれてて、なんでも幽霊に呪われてるとかって噂ですぜ?」
「バカバカしい! そんな幽霊の一人や二人、怖がってちゃ怪盗なんてできないわよ!」
「さっすがあねさん〜!」
「わかったら早く絵をいただくのよ!」
「「へいっ」」
 三人がかりで巨大な富士山の絵画を持ち上げようとした、そんな時。


「うわああぁぁぁぁ―――!!??」


「「「え?」」」
 何かが天井を突き破って落ちてきた! 丁度、怪盗三人組は頭上に降ってきた木片と何か重いモノに潰される。
「いたたた……なんなのよ!?」
「あ、あねさん……う、うう、後ろ……!」
「は?」
 木片を払いのけ、乱れた髪を手で梳かすキッサ。先に立ち上がった男二人が、怯えながら女の後ろを指差す。
「くっ、うぅ……」
 木片に囲まれてうつ伏せになっていたのは白い髪の子供……服はべっとり真っ赤に染まっている!

「「「ぎ、」」」

 ほんの一瞬三人は硬直して……。


「「「ぎゃあぁぁあぁぁぁ!!」」」


 前髪を垂らした子供は、ゆっくりと力無く這ってくる。腕を三人に差しのばし、口を開いて。
「く……あの子……を、ぼ、僕……は……」
 荒い息づかいでか細く傷だらけの腕を伸ばしてくる。三人は完全にビビりあがって壁にへばっていた。
「く、来るなぁぁっ」
「いやあぁ、すみませんすみません!」
「絵盗みませんから! 許してください〜!」

 そこで勢いよくドアが開けられる。蝶番が半分壊れたドアは、傾いた。
「絵は盗ませへんでェ! スパイダー……なんとかっ!」
「観念しなさい!」
 騎士鎧と三つ編みの女性が部屋に入ってくる。だが、二人はその異様な光景に肩すかし……というか、唖然とする。
「たた、助けてくださいっ」
「もう悪さしませんから!」
「幽霊があぁぁ〜!」
「へ?」
「ねぇシンっち、あれ……」
 怪盗達に泣き付かれて混乱する真。その横で友里依が顔を出して指差した。
「ニャア〜」
「ロッキー! ……良かっ…た、無事だった……んだね……」
 部屋の隅で足を舐めていた子猫が、木片の中で倒れていた子供に擦り寄っていく。更にそこへ、真達の横を通過してゴールデンレトリバーが少年へ駆け寄っていった。毛並みの良い犬は、倒れる少年を気遣うように寄り添って鳴く。


「リリアン、大丈夫、ロッキーは見つかったよ……。でも、ゴメン……リリアン、僕、もう疲れちゃったよ……なんかよくわかんないけど、最後に富士山が見られて僕は幸せなのかな……」


 そして少年は、巨大な富士山の浮世絵を霞む視界に納めながら静かに息を引き取って…………否、ただ気絶しただけ。
「……おい、純……也?」
「なんで純ちゃんがこんな所に?」
「なんでやろなァ……?」
 まだ泣いている怪盗集団を縛りあげながら、真は首を捻った。(なんかこういう感動動物アニメがあったなァ……)とその一場面だけを見て真は思い出す。確か……『フランスの犬』?




 ……こうして蜘蛛の糸は紡がれ、運命の名のもとに解かれていった……。













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