国境線とクレイジー
「あのー、特にエリカさん」
一行(不本意ながら俺含め)は、やっぱりひたすら西へ向かっていた。
それ以外どうしようもないし。
セルスが言葉を発した。
「この先、もう少ししたら【国境】なんですよ」
「ああ、川とかで分かれてるやつだな」
……。
何時から、エリカこんな……マトモなキャラになったんだ?
「この国とあっちの国、仲悪いんですよ。つまり……」
セルスが素早くナイフを抜いて、飛んできた矢を弾いた。
「……まあ、こんな感じなので、当たらない様に気をつけてください」
……いやいやいや。
回避方法とか、そんなのは無いのか?
「無い事も無いんですけど……」
「むしろそっちの方が危険だしね」
「……」
セルス、クレア、ヴィルドの三人が顔面の筋肉を引きつらせながら、無理に笑顔を作った。
『そっちに……する?』
遠慮する。
「ギャッハッハ!」
「こっこっこ」
エリカが全力疾走(多分)をしていた。
限りなく矢が飛んでくるが、お構いなし。
何でかは分からないが、矢がエリカに届く前に、直角に曲がってあらぬ方向へ飛んでゆくのだ。
「やっ、とっ」
「えいっ」
「ふん」
セルス、クレア、ヴィルドはそれぞれ適当な速度で走りながら、ナイフと杖とボウガンで防いでいる。
ヴィルド、何だその丈夫なボウガン。
「特注」
さいですか。
……俺?
避けてるから。
「何気に凄いな! ギャッハッハ!」
一旦停止したエリカが叫んだ。ほっとけ。
「キリがない……お前らー。ちょっと凄い事するから、クレアあたり、防御魔法とかしとけ。あるだろ?」
エリカが言った。
そして、コケコをクレアに向かって投げた。
「う、うん、分かった」
クレアが手早くシールドを張る。
「抜糸術、最終奥義ノ一……」
最終奥義!? こんな序盤で出しちゃって大丈夫なのか!? しかも【一】って、まだあるのか!?
エリカは両腕を真横に広げ、掌を空へと向けた。
もうお馴染み(?)、糸が金色の光を帯びる。
「降り注ぐ神の雨……全てを撃ち抜け……【黄金雨糸】」
糸は何本にも分かれて、空へ。
そして、本当に雨のように……降り注いだ。
その衝撃に大地は震え、轟音が響く。
威力とは対照的に、金の雨はとても美しく、光を浴びて輝いた。
矢が粉砕されてゆく。
ついでに、遥か遠くに見える塔の一部も壊した。狙撃手でも居たのだろうか。
「……二千分の一」
えー!? これでか!?
「流石ですね、エリカさん……」
やや諦め気味に、セルスが言った。
「本気でやったら、大地どころか世界粉砕してるぞ」
凄い怖い技だった黄金雨糸。
「最終奥義……」
「まあ、いっぱいあるんだけどな」
それもう最終奥義じゃないじゃん。
「あ、世界で思い出したんだが……なんでこの世界、名前がついてるんだ?」
エリカが言った。
……確かに、世界には別に、名前は……つけないよな?
「凄く有名な御伽噺だよ。聞く?」
クレアが言う。
「うむ」
「私はおばあちゃんから聞いたんだけど、えーっと……」
〜〜〜
昔々、出来たてのこの世界に、天使様がおりてきました。
天使様は、沢山の者を連れてきました。
その者達は、罪を犯していたりして、行き場の無い者ばかりでした。
天使様は言いました。
「ここを繁栄させるのだ。さすれば貴様等の罪は癒えるだろう」
他の世界からやってきた彼らは、まず、世界に名前をつけました。
何故かというと、その中の一人が提案したからです。
その一人は、本が大好きな人だったので、そんな提案をしたのです。
他の者達は、正直どうでも良かったのですが、その一人がちょっと怖い人だったので、提案に従い世界の名前を決めました。
それが、【SW】です。
〜〜〜
「……続きはないんですか?」
セルスが聞いた。
「うん、ここまで。その後どうなったのかは、教えてくれなかったんだよ」
「まあ、今繁栄してるみたいだし、いいんだろ」
終わり良ければ全て良し、か。
……ん? 教えてくれなかった?
って事は、クレアの祖母は、続きを知っていた……?
つまり、子供には聞かせられない内容だった……とか?
まあ、あくまで推測に過ぎないが……。
川を渡り、不法入国完了。
「人聞きの悪い……」
間違ってはいないぞ。
先程までの草原とは打って変わって、岩だらけである。
「この世界では、地殻変動……っていうのかな? それが多くて。まあつまり、草原歩いてたらいきなり砂漠になったとか、こんな風に岩だらけっていうのは、さほど珍しくはありません」
成程。
でもエリカ、また自分の体弄ってるし。……何か嫌な言い方だな。
「お。なあ、どうだコレ」
エリカがペラペラになっていた。
「紙!?」
「金神ならぬ金紙だね!?」
クレアがつまらない洒落を言った。
「う……」
「お前、何でそんな姿で喋れるんだ……?」
確かに、ペラペラなエリカは気管とか駄目なように見える。
「……気合で?」
疑問系にするな。
「……あ、分かった。クレイジーだからだ」
おい、何だそれ。
「アイムクレイジー!」
『知ってる』
即答されるエリカ。
俺もそう思っていたが。
「ユーアークレイジー!」
エリカが、ビシッと俺を指差して言った。
ふざけるなテメエ。
「ゼイアークレイジー!」
エリカが、ビシッと三人、セルスとクレアとヴィルドを指差して言った。
「ええっ!?」
「本当!?」
「ざけんな!?」
反論する三人。
「ウィーアークレイジー! さあ、画面外に居る皆も一緒に!」
それは色々と理由があるが、言っちゃ駄目だろ。
「そんな事は気にするな! せーの、
ウィーアークレイジー!」
『誰が言うかっ!』
まったくである。
でも、言った人は教えてくれい。
「歩きにくっ」
エリカが文句を言った。
確かに、このゴツゴツした道は歩きづらい。
「ふー……仕方が、ないでしょうっ……」
セルスがややイライラした口調で言った。
「はー……私、体力派じゃないし」
クレア、お前格闘派だろ。
「情けねえな……」
ヴィルドだけは涼しい顔である。
どうやら、こういう道は歩きなれているらしい。
「……思いついた」
エリカが頭に電球を出して言った。
マジで出して言った。
「ちょわっ!」
意味不明な掛け声と共に、エリカの背中に、
つばさが あらわれた!
……何か違うな。
「えええ!?」
「えええ!?」
「何い!?」
お前ら、もうこれしきの事では驚くな。身が持たん。
「……まあ、それもそうですね」
「だよねー」
「……いいのか、納得して」
「こっこっこ! 仲間ね、エリカ!」
……コケコはいつも、ずれた反応を返すな……
「超かっけー!」
と、飛びながら叫ぶエリカ。
それ、あれじゃん。作者が、理科の化石のところで、【デスモスチ○ス】っていう恐竜(?)の名前覚えるために編み出したやつじゃん。
(作者注:結局出ませんでした)
意味ねえな。
「ちなみに、新生代の第三紀だった筈〜」
教科書にのっていた示準化石のもう一つは、【ビカリ○】だったか。
「凄くどうでもいい事で時間稼ぎますね」
まったくだ。どんどん話が逸れていってるぞ。
「しゅん」
エリカが翼を消して、また地に下り立った。
「あれ? どうしてですか?」
「飛んでる方が疲れる」
『……』
何とも言えない表情をする三人だった。 |