今はまだ
―――君は、猫みたいだね
―――目とか、後はやっぱり性格とか
―――威嚇の仕方が面白いんだ。近づくのは許すけど、触ろうとするとその相手と戦うの
「……」
エリカは草原で、ぼうっと夜空を眺めていた。
頭に浮かぶのは、あの人の姿。
「……」
「エリカさーん! 助けてー!?」
セルスがエリカの元に走ってきた。
「逃げんじゃねえー!」
その後ろでは、ヴィルドがボウガンを連射している。
「ギャーッハッハッハ! セルス、何した?」
「何もしてませーん!」
セルスが泣き叫ぶ。
ヴィルドがエリカに気付いた。足を止める。
「テメー……俺をなめてんだろ!?」
「美味い?」
「味見!?」
セルスが思わず突っ込む。
「仲間なんて……認めねーぞ!」
ヴィルドが苦々しげに吐き捨てる。
「朝ご飯出来たよー」
その時、いい香りと共にクレアの声がした。
尚、女にしか見えないのでクレアで通します。
「わかりましたー」
「オーケーだ!」
「こっこ! 私は味にはうるさいわよ!」
セルス、エリカ、コケコが返事を返した。
「ヴィルド君、冷めるからなるべく早く食べてね?」
クレアがにっこりと笑って言う。
男だなんて、正直信じたくない。
「……し、仕方ないから食ってやるよ」
クレアとクレアが作った朝ご飯、恐るべし。
「さて……」
セルスが言う。
「どうしましょう?」
ヴィルドがずっこけた。
「組織倒すんじゃねーのかよ!?」
「ラスボスとの戦闘までには仲間との出会い、そして別れ、それから過去との決別、覚醒、レベル上げが必要不可欠ですよ? そもそも組織の居場所分からないですし」
セルスはわりとアホだった。
「馬鹿だねー」
クレアが呟く。
「遺跡探索と、強敵やライバルとの出会いと、『俺……ホントはお前の事が羨ましかったんだ……』って感じの今生の別れと、『ふっ……これは、俺への罰なんだろうな……』って感じの今生の別れと、『……やっぱり……私、死にたくはなかったかも……』って感じのヒロインとの今生の別れが抜けてるよ」
今生の別れ大好きかお前。というか、そっち?
「ギャッハッハ! 一旦の敗北も抜けてるぞ」
ああ、よくあるよね。途中にアホみたいなレベルの敵出てくるの。
……ゲームばっかりだな。
そして三人の間で、談議が開始された。
「……」
ヴィルドは呆れて何も言えない。
「こっこっこ。ま、その内慣れるわよ」
コケコがヴィルドの肩を叩いた。コケコ、実は飛べるんだな。
「超低空飛行なら、時速二百八十キロまで出せるわ」
速っ!? 高かったら駄目なのか?
「途中で走れないでしょ」
途中走るんかい。
「空中に居れるのは二分ぐらいよ」
ふーん。
「そんなわけで、町に行く事に決まりました」
あ、一応決めてたのか。
「ふーん」
「へー」
セルスの独断かよ
「俺、顔割れてるから無理だ」
ヴィルドが言った。
お前、一応怪盗だったっけ。
「じゃあ、仮面とかどうですか? ほら、これとか」
「絶対嫌だ」
セルスが懐から仮面を取り出した。
それは紛れもなくひょっ○こであったため、ヴィルドは即座に却下。
何でそんなもん持ってるんだ? それに仮面っていうよりお面だろ。
「企業秘密です。じゃあ、外で待っててください」
「他にはないのか……?」
「私はー……」
クレアが取り出したのは、お○め。
しかも血まみれ。
「何で血まみれ!?」
「えーっと、これはちょっとした親類間の揉め事でー……」
「すまんちょっとそれは何か血生臭いから。つーかそんなのしかないのかよ!?」
ヴィルドのツッコミももっともである。
「そこまで文句言うのなら……これぐらいか」
「無理っす」
ヴィルドが土下座した。
エリカが取り出したのは、【マジ狩る急ルリん♪ホップステップじゃんピン具璃利己ちゃん☆】というアニメの主人公の顔のお面だった。
つまりは璃利己ちゃんのお面。
金髪のツインテールにやたらでかくてキラキラした瞳にばっちばちの睫毛。絶対つけたくない。
町にざわざわとどよめきが起こった。
なぜなら、背の高いひょっ○こお面を被った奴が歩いていたから。
その横には可愛い感じの顔の少年、後ろには美青年と美少女。ついでに美青年の肩には丸い鶏らしき生き物。
「こここ! 何よついでって!」
失礼。
とにかく目立つ目立つ。
「……何で俺がこんな目に……」
ひょっ○こは溜息をついた。
「まあまあ」
セルスが宥める。
「大体お前とエリカの所為だろうが!」
「あ、名前」
「……」
ひょっ○こは照れた。
「いい加減それ止めろ!?」
ハッ。
道はかなり混雑しているが、エリカ達の行く所は人混みが割れる。
それにショックを隠せないセルスとひょっ○こ。
「……うー」
「……(……俺、ナレーターに鼻で笑われた? しかも無視?)」
「聞き込み調査だな!」
いきなりエリカが叫んだ。
「そうですね。あの、すいません」
セルスは行動がわりと速い。
「すいません、お聞きしたい事があるんですけど」
クレアも聞き込みを開始した。
セルス、クレアはさっさと歩いてゆく。
そして、ひょっ○ことエリカとコケコが残った。
「……。俺は、お前らの事を仲間だなんて思ってない」
「オレはお前の事を下僕だと思っているがな」
「……フン。そっちの方がましだ。馴れ合いなんて俺の性に合わない」
「じゃあどこかへ行ったらどうなの?」
コケコが核心をついた。
「エリカは止めないわよ。クレアとセルスはどうか知らないけど、勿論私も貴方の事なんて止めやしないわ。意地ばっかり張って」
「意地なんて張ってない」
「張ってるわよ」
コケコの表情は変わりもしないし、ひょっ○このお面も表情を変えたりしない。
「コケコ」
「ごめんなさいね、エリカ。いいこと、貴方は得しないわ。それに、ツンデレキャラは反感も買いやすいのよ」
コケコが息を吸う。
「……向こうから来るからって拒絶してたら、持っていた筈のものまで失うわよ」
最後にそう吐き捨てる様に言うと、コケコはエリカの肩から下りて歩き始めた。
エリカはそれについていく。
その場には、ひょっ○こだけが残る。
「……わかってる、でも―――」
―――最初から何も持っていなければ、傷付きはしないだろう?
「あれ、ヴィルドはどうしたんですか?」
「置いてきた」
「ええ!?」
「大丈夫、逃げはしないって。多分」
セルスと、追いついてきたエリカが言葉を交わした。
「逃げはしないでしょ? 道に迷ったりとか、合流できますかね」
セルスが心配そうに呟く。
―――信じなければ、信じてくれないよ
「……」
「エリカさん? どうかしました?」
「いや、別に」
―――本当の君はどこに居るの―――?
「……」
エリカのどこか遠い場所を見つめる様なその姿に、セルスは不安を隠しきれない。
何だか今日のエリカは、感傷的だ。
「あの、本当に……」
「ホームシックだ」
「……やっぱり、元の世界に戻りたいと思うんですよね?」
セルスが眉尻を下げて、問いかけた。
―――やっぱり、君と私は―――
「……あの日も、こんな気温だったから」
「え?」
エリカの蚊の鳴く様な声を聞き取れた者は、きっと居なかっただろう。
「戻りたくはないね」
「そ、そうですか」
「……全部終わったら、戻るかもしれんが。今はここに居る」
「……はい」
「聞き込み続けるぞ」
「わかりました」
結局のところ、得られた情報は【最西端の大陸に組織のアジトがあるらしいと友達が友達に聞いたって言ってたような覚えがない事もない】
これだけだった。 |