トーカの里帰り(5)
ようやく回復した俺達が見たものとは……!?
次回九十八話、【家政婦の後姿の仮面】! ご期待下さい!
その時、彼女の素顔がついに暴かれる……?
早速結論。ヒマです。
「……それも物凄く」
どうやってヒマを潰せばいいんだ、こんな何も無いところで。
「……」
そう考えたところで、自己嫌悪。
「いかん、何か、徐々に……ナレーターが出来なくなってる」
よく人間になるからか? 今もそうだし。
しかも女で。俺、男って言ったよな?
「はぁ……」
溜息をついた。もうこの時点で着々と人間化が進んでいる気がする。
他の奴らでも見に行くかと、とりあえず腰を上げた。
この行為に泣きたくなった。
「エリカ……」
「フィーネ」
えー、木の陰から見てるワケですが。
イチャイチャしてるんで、とりあえずここは放置で。
こちらナレーター。フローラって呼ぶな。
えー、なんていうか……トーカとヴィルドとグレンとセルスが……人間組が喋ってます。
「そういえば、戦ってるのって女の人ばっかりなんですね」
「うむ。うちの風習でな、戦うのは女。家事を行うのは男となっているのじゃ」
そこで、トーカは暗い顔をした。
「……十になった娘は里を一旦出て、適当に世界を見て戻ってくる。……そして、十五になった娘は、結婚相手を決めなければならないんじゃ」
「え?」
「離婚は無理だし、……大抵親が決めるけど」
トーカって……十五だよな、今。
「私は多分、お姉ちゃ……師匠に決められると思う」
心底世界の終わりのような顔をして、言った。
「だから、多分……今日で、さよなら」
泣きそうな顔をして。
「け、けど……十六になるまで、時間はあるんじゃないのか?」
「でも……それまでには戻れないと思うから」
トーカは二歩前に進んで、三人を振り返るように。
「だから……さよなら」
儚く、空気に融け込むように。
これ程悲しい笑顔を、三人も俺も、見た事があっただろうか?
「―――ッ!」
融けるのを止めようと伸ばした右手は、しっかりとトーカの肩に触れた。
「トーカ。俺が、必ず、そんな事にならないようにするから」
「え」
「だから」
ぐい、とやや乱暴に、グレンはトーカを抱きしめた。
トーカの表情に、小さな花が咲いた。
「だから……行かないで―――」
―――ごきゅ。
『あ』
「きゅう」
トーカの体から、かくんと力が抜けた。
擬音で表すとするなら……そうだな、【ぷらーん】?
「ごごごごごめんトーカぁぁぁ!」
「何してんですかグレン!」
「物凄くムードぶち壊しだぞ!?」
慌ててトーカに回復魔法をかけるグレン。
うーん……なんていうか、バカらしいな。
ま、これはこれでこいつららしい―――
「―――…………」
木に腕をついて、【反省】のポーズをとる。
何だ俺。完全に見守り役と化してるじゃねえか俺。
いや、ナレーターの仕事としては違和感ないんだけど……なんか違う。なんか違うぞ、俺よ。
「……ぅぅぅぅ」
ちくしょー。
「キャハハハハハー!」
アーチェは戦ってるし……。
「まだまだだよー! ホラ、がんばっ!」
「くっ……」
「負けない!」
特訓つけ?
……彼女らがそれ程強くならない事を祈る。
「あら、フローラ」
ナレーターだ。
「まあいいじゃないの。それで? どうしたの?」
……お前は何をやってる?
「ご覧の通りよ。組織を迎え撃とうとしてる、ってとこ」
コケコ、お前は……一体、何者だ?
「強いニワトリよ」
……。
「暇なら手伝いなさい」
俺は、黒い布の姿になる……じゃなく、戻る。
バタバタとはためく布。周囲に黒い球体を呼び出す。
しかし多いな。何千人居るんだ?
「さあ? わからないわ。殺しちゃ駄目よ、生かしたまま帰すから。……前よりは少ないし、大丈夫よね」
例の空間転移魔法か。……あんなもん、称号持ちの奴等でもどれぐらいが使えるか……。
「そうね。でも、私も称号持ちではあるから」
は?
「じゃあ―――行くわよ」
ばさり、と。
コケコの背に現れたのは、大きな純白の翼。
びくりと波打ち、ざわめき続ける天使の翼。
「―――」
唱えたのは、俺でも聞き取れない何かの呪文。
ふわりと、コケコの体が浮く。巨大な魔法陣が現れる。
崖下では、組織の兵達がそれを登り始めようとしていた。
「数時間の間、飲み込め―――彼らの意識を」
俺も球体に命令を出す。頷くように動いてから、組織の者共を覆うように広がっていく。
「さぁ……行きなさい」
魔法陣から現れたのは、笛を持った、大量の小さな天使達。
組織に向かって行く。
「眠りの天使」
奏でられた美しい音色に、黒い球体に、意識を奪われ、倒れる。
「こんなものかしら……じゃ、やるわよ。手伝いなさい」
へいへい。
……しっかし、何で俺ら……いや、お前だけでやろうとしたんだ?
「あまりにも痛々しすぎるからよ」
なんだそれ。
「彼らは、人間として扱われていないもの。目を見たら分かってしまうわ、彼らは機械でできた人形の様よ」
……。
「だから、見せるわけにはいかないの。刺激が強すぎて。前のなんてまだ良い方」
コケコは溜息を吐く。
「ほら、するってば」
あ、ああ―――。
ホント、お前は何者だ? コケコ……。
〜〜〜
「スオウ=ガーディン様あああああああっ!」
「ま、マリーナ……!」
語尾にハートが付きそうな勢いで走ってくるマリーナに、後ずさる俺。
「きゃっはあああああああああ!」
飛びつかれた。倒れそうになったけどぎりぎりで持ちこたえる。
「マリーナ……心臓に悪いから、止めてくれないか?」
「え!? それはドキドキするって事ですか!? いやん、マリーナ=エルデッサ嬉しいいいいいいいいっ!」
テンションについていけない……。
「……スオウ、マリーナ」
黒いローブにフード。シンディアが歩いてきた。
「邪魔」
どこか心地良い刺すようなオーラ。
本当、ウルには勿体無いぐらい、俺の好みなんだがな……。流石にあれだけウルの事が好きだと、何も言えない。
ウルめ。……あんまりにも気付かない様なら、無理矢理にでも奪ってやろうか。
しかし、マリーナも俺の何が良いのか……。
……ていうか、これって四角関係だよな。マリーナ→俺→シンディア→ウル。
ウルがマリーナ好きなら物凄く大変な事になるけど。
いや、ここはあえてマリーナ→俺→シンディア→ウル→エナ→キース→マリーナとか。
収集がつかん。
そして何を考えたいんだ、俺。
「シンディア=クレナハード……」
「シンドって呼べ。ウルが居たらどうするんだよ」
もう別にばらしてもいいんじゃないか?
「あ、エナがウルの隠し撮り写真焼き上がったって言ってた」
「な、何!? ちょっと行ってくる!」
……。恋は盲目ってか。
まあ、シンディアの隠し撮り写真をさりげなく買ってる俺も俺だが。
「恋は盲目かー……スオウ=ガーディン様の隠し撮り写真買ってる私も、人の事言えないけどー」
本人の前で言うか、それ。
ちなみにエナの撮る隠し撮り写真はかなり綺麗で出来がよく、数ある隠し撮り写真屋の中でも売り上げはトップだそうだ。
ちなみに更にその中でも人気の隠し撮りは、男部門ではアシュレイ=カルヴァート、俺、キースあたりか。女ではマリーナ、エナ……エナ、自分の写真に隠し撮りも何もないだろうがな。後、合言葉で売ってくれるシンディアか。
……ツーショット部門では、仮面取ったキースと俺とかマリーナとシンディアとかシンドとウルとか……なんか痛いな。
ちなみに、キースの仮面も絶賛発売中だ。キースが増えてきてて困る。本人も困ってる。 |