crazy more crazy 〜すいません、ここは異世界です〜。(23/39)PDFで表示縦書き表示RDF


 追いかけっこじゃなくなってるよねこれ。
crazy more crazy 〜すいません、ここは異世界です〜。
作:摩璃藻



メイド服と追いかけっこ(7)


「フィーネ=シェズ。戻る気? 裏切り者」
「無いわ。えぇと、キュルー=セヴェンだったかしら」

 銀色の髪をした女性。
 ……私と同じ立場の人だ。

「聞く? どうして裏切った?」
「……」

 私は、目を閉じた。
 思い出が浮かび上がる。
 セルス達と出会った。
 あの青年を助けた。
 ……【私の完成】。
 奪われた魂のカケラ。
 悲しみ。
 そして、ボロボロと涙を零す―――

「ね」

 ……。

「私は望まなかったからよ。……【生き返る】事なんて」
「そうね。確かに別人の体ではあるし」

 違う。そういう事じゃない。

「いい、貴方はとても綺麗な状態。私なんて、左眼無い?」

 キュルーは左眼に被さる前髪をだるそうに上げた。そこには、ぽっかりと黒い空洞が空いていた。

「そういう事じゃ、無い……」

 この体は誰の物?

 何らかの事情で人生を終えた、可愛い十代の女の子の物だった。
 穴を掘り返した組織は、死者の魂のカケラをこの体に突っ込んだ―――。

 私は誰?

 フィーネ=シェズはこの少女の名前。
 名前は大事な物だから、使わないわけにはいかないんだ。この体はフィーネの物なんだから。

 私は。私の名前は。

「……夢桜ゆめざくら ゆえ」

 元、日本生まれ日本育ちの、ただの……数学と音楽の教師。
 歌が好きな、ただの女だ。

「……?」
「私が言いたいのは……。蘇りなんて、あっちゃいけないのよっ!」

 キュルーは一瞬で双剣を抜き、私の定規を受け止めた。
 ギリギリと定規を押し付ける。
 戦闘用に強化されて、生前とほとんど同じ姿に治されて、ちゃんと年もとる、この体。
 でも、私は一年前。キュルーより、古いんだ。
 キュルーの方が、強くされてるに決まってる。

「うぁっ!」

 私は弾き飛ばされた。
 戦いの経験だって、それ程あるわけじゃない。
 正直言って、勝てる気がしない。だけど。

「戻る気が無い、殺すよう言われ? ど?」

 頭も言葉繋ぎも不十分。その分は戦闘能力の強化。記憶も理性も、私の全てが受け継がれた私は、裏切るという行動に走った。
 大抵は、もう一度生きられる事に感謝し、そして組織の成功と、その者が従ったかどうか。
 ……永遠の命が約束される。
 だから、裏切るなんて想定外だったと思う。
 私は、永遠の命なんていらない。この体に、安楽を与えてあげたい。私は、死んでしまおうと思った。
 でも、一度死んだからこそ。

 ―――生前より、酷い恐怖が襲う。

 私は凄く弱い。とても悩んだ。その結果。
 組織に立ち向かうことを、決意した。
 その間に殺されて。それなら。




 ―――けれど。


 まったくの予想外。イレギュラー。ありえない。


 でも、でも。


 やってきた。


 ―――彼は、日本から、地球から、私の居たところから、やってきた―――。


 聞きたい事も話したい事も沢山あって。


 彼は私を避けている。


 気付いてくれているんだと思う。


 だから、私と距離をとっているんだと思う。


 彼も私も、信じられないから。


 だって、あり得ないでしょう?


 ……【死んだ人と再会する】なんて。


 偶然。奇跡。まぐれ。


 それだけじゃとても現せないことだ。


 心の奥底では、望んでいたんだと思う。


 嗚呼。


 だからって、会ってしまうなんて。


 どうして……?


 話したい事も聞きたい事も沢山ある。


 信じる事に、近づこう。


 勇気の無い私が、どこかから勇気を持ってきて、近づこう。


 悲しいし、辛いし、狂ってしまいそうだけど、嬉しい、だなんて複雑な感情。


 抱いた事なんて、きっと、無かっただろうね。




 近づくために、まずは生きよう。
 仕方が無いと割り切ってやる。会えて嬉しかったんだよ。
 だから、今、私は【生きたい】んだ。


「ボイスオブアタック、発動!」


 同時に、大きなコンパスを構える。
 キュルーの眼光が鋭くなる。恐怖に心をくじかれそうだ。
 だけど、絶対に、勝利する。
 死ねないよ。

「破壊っ!」

 叫びながら、コンパスを振り上げる。
 向こうは短めの双剣。リーチなら、こっちの方が勝っている。
 全てを破壊しようとする、衝撃波がキュルーに向かって飛んでいく。
 キュルーは……




 笑った。

















「……ぁ……ああ……」


 折れたコンパス。腹に突き刺さる剣が二本。絞め上げられている私の首。
 地に足が届かない。ショートブーツが片方取れている。


 力の差が、ありすぎる。


「弱い」

 必死で、私の首を掴むキュルーの右腕を外そうともがく。
 両手に力が入らない。それは、全身に、言えるか。
 ……。

「ごろ……ざ、れて……だまる、が……ゲホッ、ぅ……」
「よく喋れる? 怪我。やばい」

 何で。
 力が欲しい。今程切実に思った事はない。
 力があれば、力があれば……。

「最後。言う事、あるか?」

 ……。

「何で……そ、な事?」
「命令。聞け言われる。美学? 後、だ、だ、だん……そう! だんばつま!」

 ……断末魔の事?

「が、はぁ……ハァッ……離して、くれ……ば、言え……っぐ、そうよ……」
「……。ソレは無茶? このまま、殺す」

 ……殺される気なんて、さらさらないよ。

「いやだ……っ! 開放ぅううううううう!」

 音の凄まじい衝撃波。
 吹き飛ばされるキュルー。
 今まで喋った分と、ありったけの魔力。
 しばらくの間魔法は使えないだろう。喉も、ほとんど潰れてしまっただろうし。
 ……でもね。

 エリカ。私はまだ、歌えるよ。歌は魂で歌うものだから。

 ……って、小説で誰か言ってた気がする。

「お前、殺される。私、殺す。悪足掻き? 無駄」

 私は、腹に刺さったままだった双剣を抜いた。
 そのまま、構える。
 これでキュルーに武器はない。

「……。無駄……っ?」



 轟音と共に、大地が震えた。



「何が? ちっ」
「あ゛……あ゛あ゛」

 うわあ、ゾンビみたいな声だ。
 そうじゃなくて。キュルーは、轟音の方向に走って行った。



 ……。
 ……助かった。私は座りこんだ。
 あのままだったら、私は殺されてしまっていた。
 轟音も気になるけど、とりあえず、生き延びられた。
 って言っても、これは、流石に手当てしないとやばい。まじで。
 ……へるぷみー。英語は専門外。そこ、発音悪いとか―――……だからそういう問題じゃなくて。
 ……どっちみち、行かなきゃならないのか……。


 〜〜〜


「全体、止まれっ!」

 ほふく前進男が、止まった。
 何がしたいんじゃコイツ。
 先程まで、散らばるために逃げる私をほふく前進で追いかけておったが。

「前方! メイド! 仁王立ち! パンツは見えない! 無念! ロングかっ! それもいいけど、私的にはやっぱりお色気―――」
「キモイ」
「ずげーんっ!」

 男が落ち込んだ。何か描写とか説明さえもめんどくさい。

「だが、私は負けぬ! たとえ、皆から気持ち悪いとか言われても!」

 組織内でも言われておるのか。
 男が顔を上げた。
 ふむ。黒髪に……

 ……仮面?

 何か、無駄に格好いい感じの……

「よし、お前に勝負を……って、何をしているのだ!?」
「仮面」
「止めろ、止めてくれ!」

 皆ー、気になるよなー?
 私は気になる。うむ、それで理由は上等じゃ。

 べり。

「……なんじゃ、可愛いではないか」

 何か、気持ち悪い顔なのかと思ったのじゃが。

「可愛い男なんて何がいい!? 女の子、全ては女の子だ! いくら可愛くても、男ならばそれは意味がない! 女の子はぷにぷにしててほにゃーってしててー……」

 台詞は気持ち悪いのう。
 座りこんで私に背を向け、泣いておるようじゃが……あ、体華奢じゃな。こう見ると。
 油断してた所為か、仮面をもぎ取られた。あ。

「次は負けぬぞ! また会おう! テレポート!」

 別に会いたくない。
 そう思った瞬間。
 とても大きな音が轟いた。
 そして、地面が揺れ動く。

「ぬお!?」

 うーむ……向こうは……?



 最初に居た場所……コケコの方ではないか?


 今回は、フィーネにスポットを当ててみました。
 ……ちょっとネタ入れすぎたかも。
 まいっか♪
 ……あ、次回の事なんにも決めてないや。











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