メイド服と追いかけっこ(6)
「アイア以外の生き物は絶滅すればいい」
「だっ、駄目だよ! それだったらシーヴも絶滅しちゃうよ!」
「……アイア、とても優しい子……私とアイア以外が絶滅すれば問題無し」
「そうだねっ!」
……何だろう、この微妙に怖い会話。
アイアと呼ばれた金髪の少年と、シーヴと呼ばれた茶髪の少女が俺の相手みたいだ。
「……まず、あの女を殺す。第一歩」
「うん! 行くよー」
アイアは杖を、シーヴは斧を構えた。俺男だけどね。
俺、不利じゃない? 二対一ってさ。
「アースブレイド!」
地面から剣が生えて、俺に向かって飛んできた。
それと同時に、シーヴも走ってくる。
「ライトシールド!」
剣は光の盾で防ぎ、斧は自分の黒剣で受け止める。
見かけによらず、力強いなあ。
今時の女の子って、そんなものか。
「黒刃剣杖一刀流……魅せる闇、闇華乱舞!」
……この技、実は適当に暴れるだけだったり。
それでも剣は斧を吹っ飛ばし、魔法も弾き飛ばす。
一歩、二歩、三歩目で、剣の切っ先はシーヴの首元を捕らえた。
二人が攻撃するより速く、俺はシーヴの首を飛ばす事が出来る。
「……貴様」
「シーヴ!」
……ええと、追い払えれば良いんだよなあ。
「殺す気は無いから、帰ってくれる?」
「……」
「シーヴ、帰ろうよ。シーヴが死んじゃったら、僕は……僕は……ううう……」
「ごめんなさいアイア。じゃあ帰りましょう。テレポート」
……。
最後睨まれた。超怖い。
〜〜〜
「もう終わりか?」
「……っぐ……」
全身が痛い。
俺の体には大量の切り傷があった。油断してる間に、黒フードの魔法でさくさくとやられてしまった。
「他愛もない……」
いつの間にか良い気になってた。
居心地は、一人の時より何倍も良かった。
明るくて、強くて、何でも出来そうな気がした。
……慢心していた……。
俺はすっくと立ち上がった。
痛いが、こいつが強いわけじゃない。
油断してた。
「……我等が血の守護魔神……」
正直息するのも辛いレベルだが、大丈夫だ。いける。
黒フードが怪訝そうな表情をする。
「……ハスレリーの血の絶やされぬよう……護りたまえ……」
続いて浮かぶ表情は、驚愕。
崇高なる剣と魔法により、騎士として魔法使いとして、主に絶対の忠誠を誓う一族。
ハスレリー。
「【闇血の魔神】」
振り向く。
そこには大きく重厚なつくりをした漆黒の扉。
細長い円形を描き、赤い装飾はどこか血飛沫を思わせる。
低い音を鳴らし、その扉が開く。
赤い瞳に黒く長い髪。
血と闇を司る、闇血の魔神―――。
「呼んだか、ハスレリーの血の者よ」
若い男の姿をしたそれは、軽く言った。
「死にかけてやがる! だっせー!」
……話には聞いてたが、むかつくなコイツ。
「……ぅ」
俺は倒れた。駄目だ、血を流しすぎた……
「いやいや死なれると困る。ほれ、立て」
闇血の魔神は、俺の首を掴んで持ち上げた。
む、無茶しやがる……
「おらよ」
……。
「いでででででででででで!」
首に噛みつかれた!?
「輸血輸血」
「んな輸血の仕方があるかああああ!?」
痛えよ!
「元気になったし、いいだろーが」
「もっとマシな方法は無かったのかっつってんだよ!」
「うるせえなあ。何だ、口からが良かったのか?」
……。
「お、静かになったな」
「俺は男だ!」
「じゃ、何でメイド服?」
……うぐ。
「そ、それは……」
「俺は別に良いけどね。男とか女とか気にしないし」
……。
「……変態……」
「ほーほーそんなのがお好みですか?」
「止めろ止めろ止めろはーなーせー!」
気持ち悪い!
「あの黒フードを……あ?」
「居なくなってんぞ。まあちょっと聞けばホモの痴話喧嘩に聞こえなくも」
「死ねえええええ!」
矢を思いっきり、闇血の魔神の肩にぶっ刺した。
「がっ!?」
「魔界に帰れ!」
ギュン、と魔神の周りの空気が捻じ曲げられ、元に戻った時には闇血の魔神は消えていた。
……わりと本気で、貞操の危機かと思ったじゃねえか……。
〜〜〜
「よいか、おぬし。でかい乳は、将来タレるのじゃぞ」
「タレても困らん」
杖突いたばあさんが戦いなんかすんなよ。
「む、なんじゃ? 老人に暴力か?」
「必要とあらばな」
「……男らしいというかなんというか」
男だ。無理矢理こんな格好にさせられてるだけ……言わないけどな。どうせ馬鹿にされるし。
右手のスイッチを押した。
白い煙がばあさんを包む。俺はその煙を、手榴弾の爆風で吹き飛ばす。
中から現れたのは、
「……何でばれたのかしら」
長く黒い髪に緑の瞳。
二丁拳銃の若い女性だった。わりとグラマー。
「お前、ヴィルドと戦ってたな」
「あら、よく知ってるわね。あの後、私の家に伝わる呪の力を特訓したのよ」
よーやるわ。
女性は拳銃をくるくる回した。
拳銃が、緑の光を帯びる。
「いい? 呪は、この拳銃の弾丸にのせられるの」
……ふーん。
「音速より速い弾丸は、呪の力でより威力と範囲が上がる。呪いは、たとえ弾丸を避けたとしても貴方に纏わり付きにいく。勿論見えないわ。さあ、どうする?」
女性は楽しそうに言った。
「俺に呪なんてものは効かんぞ」
「どうして?」
「……人間じゃないからな」
そしてなびきはじめる黒い布……。
「……何、それ」
びーむ。
「痛ぁっ!?」
びーむびーむびーむ。
「きゃあああああ!」
ふっとび運搬!
「ちょ、ちょっ……ああああぁぁぁぁぁ……」
きらーん。
一応言っておくとする。人間の姿の時が俺の本当の実力だ。ナレーターの姿の時は能力が沢山あるし……正直せこい。
〜〜〜
「ワイの名前は、ウル=ブラックストンや。よろしゅーに」
「……僕はセルス=サーティスです」
……エセ関西弁?
「嬢ちゃんかわええな。僕っちゅーのも中々新鮮で……」
「僕は男ですっ!」
「な、何いいいいぃぃぃぃ!? マジか!?」
…………。
「んじゃ遠慮せえへんわ」
男女差別!?
「行くで」
ウルは大きな槍を構えました。刃には、黒い模様があります。
僕はシャドーナイフを構えました。
「これはシャドーランスっちゅーてな。自分の影を操れる」
……あ、やっぱりですか。
本物……。
「武器匠グロッグ=スティアーロと、その娘ドロテーア=スティアーロの作品の一つですね」
「……よく知っとるな。その通りや。裏市で売っとったのを買った」
「ええ……。何せ、」
―――その模造品を持っていますから。
槍とナイフがぶつかる。
ナイフはすぐに砕け散った。
当然です。レプリカが本物に敵う訳がない。
「さあ、どうするんや?」
赤毛の青年、ウルがニヤリと笑いました。
このレプリカは、正体を隠すための物
殺されそうになる、それはどういう事か?
―――【鬼神】が現れる―――
普通の武器では、その力に耐えられずに、すぐに壊れてしまう
だから、そのために姿を現し、死なない様に戦わなければならない
それも駄目なら
作ればいい。何か丈夫な武器の真似をして。
さて、槍の切っ先は僕の首にあるのですが、どうしましょう。
目はもう既に真紅ですし、凄く眠いし、あー理性がー
「じゃあな、セルス」
あ。
鬼には異形の者と人型の者が居る
それは半々
【鬼神】は両方に属す
姿を自分の意思で変えられる
今の僕の右腕は、異形な者の手。
大きな赤い手。
爪先は鋭く尖っている。
「……」
「……一気に立場逆転やなあ」
その手はウルの頭を、今にも握りつぶそうとしています。
「逃げてええ?」
「どうぞ」
「ほなな」
……あ、スカートの裾破れてる。 |