crazy more crazy 〜すいません、ここは異世界です〜。(21/39)PDFで表示縦書き表示RDF


 人を殺しかけました。
 それから、死にかけました。

 真相は、後書きにて。
crazy more crazy 〜すいません、ここは異世界です〜。
作:摩璃藻



メイド服と追いかけっこ(5)


 とある世界に、少女が一人生まれました。
 お父さんもお母さんも何の変哲もない普通の人達でしたが、少女は違いました。


 莫大な魔力と、それを扱う、素晴らしい才能の持ち主でした。


 美しい金髪と、マリンブルーの瞳。


 その力に人々は恐怖しました。
 全てを凍らせてしまう、恐ろしい力に……。


 ただ、父と母。
 二人は彼女を愛しました。惜しみない愛情を注ぎました。
 二人にとっては、ただ自分達の、愛くるしい娘に過ぎないのですから。
 他の人は違いました。少女のせいで、二人は、長い時を過ごした祖国を追われました。
 それでも、娘を愛する気持ちは、何も揺るぎませんでした。むしろ誇ってさえいました。
 どのニュースを見ても戦争ばかりのこの世界を変えてくれる。
 この、強い力で。


 結局、山奥の小さな小屋に住んだ二人と少女。
 愛する人と、愛する娘。
 不幸なわけがありません。
 少し寂しい気持ちもありましたが、そんな事は二の次でした。
 何も辛い事など無い。
 家族は、無敵に見えました。


 二人は、少女を残して、去って行きました。
 その体には、病魔が巣食っていたのです。
 子供には感染しない病気。
 大きな町をいくつも潰した事があるこの病気は、今の医学ではすぐに治る病気。
 家族は医者ではありません。
 泣きながら、叫びながら、娘を置いてゆく事に恐怖しながら。
 二人は逝ってしまいました。少女を、残して。
 少女は泣きました。だけど、生きなければいけません。お父さんとお母さんの分も。


 少女は魔法を極めていきます。
 冷たい魔法が、みるみる内に山を覆っていきました。
 それだけではなく、時空魔法、重力魔法、他属性の魔法、何でも手を出しました。
 そして、脅威の早さで習得していきました。
 天才魔法使いとなった少女は、体も戦闘も強くなりました。
 いくつかの戦争を、彼女一人で終わらせました。
 全ては彼女の前に、凍てつき、血を流し、屈服しました。


 十歳のある日、少女は世界を渡る術を見つけました。
 渡りながら二年間。
 少女は色々と、知りました。人間としては、知ってはいけない領域まで。
 だから。
 人間をやめる事を、余儀なくされました。
 拒否しても抵抗しても、無駄でした。
 ある最低な神様の手によって。
 少女は―――






―――【魔女】として、祀り上げられてしまいました―――。






 〜〜〜


「というわけで、それが私の過去なんだけど……」
 私と対峙する一人の青年。
 長い黒髪に、鳶色の瞳。
 その表情には、驚愕の色。
「……お前……それ……普通に言う事か……?」
 ハハハ。
「まあね。とりあえず、今の所の目標は、その神に復讐する事。良い感じに遠い世界に飛ばしてくれやがって……」
「……少女がする……表情じゃないぞ……」
 はっ、いけないいけない。
 青年の手にはナイフが握られていて、多分、あれでぶすって刺されると凄い痛いと思う。だってさ、紫色の刀身のナイフなんて、毒以外ないっしょ。
「……俺の名は……スオウ=ガーディン……手合わせ、願う……」
「キャッハハハ、私は、不本意ながらも【魔女】。【魔王】のタメに、動く者。一応、本名はアーチェ=クロンクビスト。こちらこそ、よろしくねえ?」
 私の過去話聞いたら、ビビるかと思ったんだけどね。
「キャハハハハハハハァッキャハハッァキャハハハ!」
 狂った人みたーい!
「……フー……」
 青年の髪が、ばさりとなびいた。


「ええーいっ!」
 私は、木刀を思いっきり振り下ろす。
 あまりの厚みと長さの所為でよく見えないけど、手ごたえはあったから、そのまま押す。
 ズズズ、と、青年が後ろに下がって行っている。
 が、途中で弾かれた。
「あや?」
 地面に押し倒された私。
 目の前に、青年の精悍な顔。
 ずぶり。
 私の腹に、ナイフが突きたてられた。


「悪いな。これは……戦争なんだ。来世で幸せになってくれよ」


 私に背を向ける青年。
 塗られていたのは、やっぱり猛毒。
 だったらなあに?
 私を、
「誰だと思ってるのお?」
 あ、声に出ちゃった。
 青年が目を見開いた。
「キャハハ、キャハハハ、キャッハハハ」
 おっかしいぃ。
「私は【魔女】だよ。何回言ったら、理解してくれるの?」
 キャハハハハ。
 ナイフが刺さったまま、血を吐きながら、起き上がって、私は笑う。
 止められないよ?
「たとえ兵士が足掻こうと、私の進路を妨げる事さえできないんだよ」
 私の目は、きっと今、生き生きしてる。凄く、光ってる。キラキラしてる。
「殺すのは、止めておくよ。皆が悲しむだろうから。誰だって嫌だもんね」
 ―――さあ。


「炎、草木、時、闇、光、大地、空気、水、海、物、者、生ける者、死せる者」
 首を少し傾ける。
 口角が釣りあがる。
 両手を広げる。
 冷気がこの場を支配する。
「全ては私の力のもとに、凍り、凍てつき、氷像となる」
 私の足元から、全方位に向かって、氷が広がっていく。
 とっても愉快だよ。
「さあ」
 息を吸う。ああ、肺の中が冷たい。






「【アイスガーデン】」






 ピキン、パキンと音を立てて、大きな氷のドームが完成した。
 青年は居ない。逃げたみたいだ。
「これは芸術だね〜」
 とっても、綺麗。
「……あ、溶けてくれるかな。……まあいいか。エリカに頼もうっと」
―――私は、不本意ながらも【魔女】。
―――【魔王】【勇者】。その次あたりに、沢山の同列の者とならぶ。
「人間に、やられるわけ、ないでしょ?」
 でも、皆は好きだ。
 エリカは強いし、コケコは謎だし、フローラは面白いし、セルスも面白いし、ヴィルドも面白いし、グレンも面白いし、トーカも面白いし、フィーネは……うーん、よくわかんないけど。
 でも、皆は好きだ。
「……んんーっ!」
 大きく伸びをする。
 太陽は、暖かいよ。
「よおっし……皆、大丈夫だよね? ……ちょっと、寝よう」
 何かわかんないけど、疲れた。
「お休みなさいー」
 太陽の当たる草原で、戦いはまだ続いているけど……私は、目を閉じた―――。


 〜〜〜


 ギャッハッハ、ドモ☆ エリカでっす☆
 テンションが高いって? そりゃそうさ、初のオレ視点だし。
 ブチアゲブッチアゲ〜♪
「変な奴」
 少女はオレに対して、そんな感想を抱いたようだ。
 変って、最高の褒め言葉だな。
「ペチャパイ」
 とりあえず、オレの感想はそれだった。
「なあああああ!? 違うわよ! これから成長するのよ!」
「ペチャパイ」
「しつこい! しつこい! こぉろぉすうううううう!」
 少女が剣を構えて、オレに向かってきた。
 オレはとりあえず避けまくる。
「ギャハハ、そんなに、当てずっぽうじゃ、あたらな」
「殺す殺す殺すっ! スオウ様に振り向いてもらうんだから! 死ねえええええええ!」
 聞く耳持たず?
「分身っ!」
 少女が、えーと……二十八人になった。
 ちょ、多くね?
『殺す!』
 ちょっとデジャヴ……ごめん、他の奴ら。あんなん出しちゃって。
「うーむ……はっ」
 オレの体を剣が掠りまくるので、流石に避難した。
 上空に。
「翼……意外に役に立つっぽいな」
 バサバサとはためかせる。
『下りてきやがれ!』
「無理」
 オレの攻撃じゃ殺しそうだしなあ。
 ……そうだ。

「我は望む……忠誠の女聖騎士……我が身を守る盾となり、敵を殲滅する矛となる【ヴァルキリー】……我は望む……剣のみを極めた存在……【剣聖】……」

 何でこんなもの使えるのかって? 企業秘密だ!

 オレの真下の地面に、魔法陣が二つ、現れる。
 片方からは、銀色に光る甲冑に身を包んだ金髪の女性。片方からは、白く短めの髪をした、粗末な胸当てをつけた子供。
 女性の顔は鎧で見えないし、子供にはまったく表情がない。

「……誰だ? 私を呼ぶのは」
「……」
「あ、剣聖! お前か? 感謝するぞ、二人で呼んでくれて! エクスカリバーも居ない!」
「……」

 女性、ヴァルキリー、子供、剣聖は抱きしめあった。
 そしてそのままキスをする。
 ……まあ、剣聖は、子供なの見た目だけだし。

「そいつらを殺さないように倒してくれ。その後は存分にイチャイチャしてくれてていい」
「わかった」
「……」
 ヴァルキリーは返事を返し、剣聖は頷く。
「あ、契約」
「オレの名はエリカ=カネガミだ」
「よし、わかった」
「……」
 ヴァルキリーと剣聖は、木の棒を構えた。
 本当は剣を使うのだが、まあ、それは別に良い。

「さあ、愛の時間を頂くため、行くぞ! マイダーリン・剣聖!」
「……」

 ヴァルキリーが笑顔で言って、剣聖も無表情ながら頷く。

 ……どうでもいいが、剣聖って性別無いよな。














「テレポート……っ」

 少女は泣きながら帰って行きましたとさ。ちゃんちゃん。


 ふざけて友達の首しめてたら、勢いあまって大変な事に。大丈夫です、まだ殺してません(ぇ)
 車見てなくて、轢かれそうになりました。大丈夫です、数センチの差で当たってません。

 狂った人大好き! バトル好き! 隠れ設定と辛い過去好き! そんなわけで、どんどんこの物語はクレイジーになっていきます! YA!











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