crazy more crazy 〜すいません、ここは異世界です〜。(12/39)PDFで表示縦書き表示RDF


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crazy more crazy 〜すいません、ここは異世界です〜。
作:摩璃藻



人殺しとその恐怖と(3)


 セルスは、他の皆とは離れた位置で、溜息をついた。

―――なんでだろう
―――何で、【殺さなかった】んだろう?

 どうしてか彼の頭には、そんな考えが渦巻いていた。

―――いつも、止められなかった筈だ
―――止めようとも、しなかった筈だ
―――止めようと思って、止めたんだっけ?

 もう一度、深く溜息をつく。
 疑問だけがぐるぐる駆け巡る。

―――あの人が組織の一員かもしれなかったから?
―――でも、僕の中の血は正常だった


―――人殺しの血は、ちゃんと【発動】していた―――


 一つの解答を見つけて、それを自身で却下する。

―――抗えない筈なのに。
―――【覇王】【魔王】【勇者】
―――それらとも並ぶ筈の称号なのに。

 もっとも、【魔王】【勇者】は別格だが。

―――どうして?

 自問自答を繰り返す。
 それでもやはり、答えは出ない。








「カカカ! トーカ=アルベルと申す!」

 頭を掻くグレンと、いぶかしむヴィルドと、ニヤリと笑っているエリカ。
 セルスの姿は、先程から見つからなかった。
「おい、クレア……じゃなくて、グレン? どういう事だ」
 グレンから目を逸らして言うヴィルド。
「えーと、仲間にしてくれなきゃ降参しない、って言われて……」
 空笑を返すグレン。
「何で目、逸らすの?」
「信じたくねえからに決まってんだろ!」
 ヴィルドは、クレアが男だという事実をまだ認めたくないらしい。
 まったく。
「……信じたく? 何の話じゃ?」
「いや、ちょっとね……。ヴィルド、そんなわけだから。ごめん」
 トーカが不思議そうに聞いて、グレンが謝る。
 ヴィルドがちらりとグレンを見て、頭を抱えた。
「……はぁ」
「?」
「あはは……」
 第三者が見たら異様な光景である。
「とりあえず、全員生きてるな?」
「そうね! セルス、殺しちゃったかしら?」
 不気味な沈黙が、控え室を包んだ。
 トーカだけが、桃色のオーラを発している。
「何の話じゃ? そういえば、名前を聞いておらんかったな!」
 ひたすら明るいトーカ。
「……ヴィルド=ハスレリーだ……」
「グレン=フィクティだよ……」
「エリカ=カネガミだ!」
「コケコ=グレネード=コッケよ!」
 とりあえず、三人と一匹が自己紹介した。
「その黒いのは、ナレーターだ」
「……ナ、ナレーター?」
 うむ。まあ、気にするな
「そ、そうか」
「あともう一人居るぞ」
 エリカが言った。
「セルス=サーティスっていうんだけど……」
「ふむぅ? 何かあったのか?」
 トーカが聞く。
「うーん……あったと言えばあった」
「まあな……」
 グレンとヴィルドが額を押さえる。
 そういえば、イケメン三人揃ってるな。
 いやそれは本当にどうでもいいが。
「あ、監禁されてるけど、ご飯とかどうするの?」
 グレンが言った。
 まあその所為で、大会に出ざるをえない訳だ。
「ようやく、非常食の出番が回ってきたな!」
「こここ! 優しくね!」
「鶏じゃな! 香草焼きは美味いぞ!」
『駄目だから!?』
 二人と一匹が二人に止められた。
 非常にわかりにくいが、名前を書くともっと分かりにくくなるので、省略。
「じゃあ、我慢するか。断食修行だな!」
「おお、私もやったぞ! いや、あの時はマジで死にかけたわ! カカカ!」
 どうやら、エリカとトーカは意気投合してるらしい。
 流石、名前の最後に【カ】が付く者同士。
 別に関係ないが。
「あら、チョコレートならあるわよ」
『マジで? ていうか何で?』
 コケコの謎がまた増えた。














 本日は、第二回戦である。もしくは準々決勝。
 俺もまた出場らしい。
 面倒だ。
 今更だが、大会の説明を詳しくしようと思う。
 まず、戦う所はドーム状になっていて、観客席は丸く陣取っている。昨日も今日も満員だ。
 その真ん中で戦い、入り口は二つ。向かいになっている。
 出場者は十六名だ。
「……」
 俺の相手は、また、フードを目深に被った魔法使いだった。
 ……俺がキャラクター化してきていて困る。
「……ナレーターとは、また珍しい……」
 魔法使いが呟いた。
 え、まじで?
「教えてあげる……私は【魔女】。【魔王】をサポートする者」
 魔女か。成程……って、滅茶苦茶大物だし。
「ナレーター君、本気でぶつかってきてみてよ。……今時のナレーターは、戦うのよ」
 ……ナレーターはそういうものじゃねえけどな。
 ま、でも、面白い。
 いいだろう。っていうか、向こうのが強いけどな。
 俺の体が、ゆっくりと伸びていく。
 色、形が生まれる。
 で、最終的に、男の姿になった。
「遊んであげる。キャッハハハハ!」
「光栄です、っと」
 【魔女】がローブを取った。
 およそその少女の姿には似合わない、大きな木刀を構えた。
 木刀といっても、厚みがあり、長さも二メートルはある代物だ。
「まあ精々、戦ってね? すぐ負けるとか、止めてよ?」
「努力はする」
 俺は袖の中の物を取り出し、握りしめる。
 さーて、何秒持つかね。俺。

「キャハハハハ! えぇーい!」
 俺が先程まで居た場所に、大きなクレーターが出来る。
 降参したいところだが、まあ少しはダメージ与えてもみたいし。
 俺は、手の中のそれを、【魔女】の背中に向かって投げつけた。

 轟音。

 俺の投げた爆弾は、正常に作動した。
 良し。

「キャッハハハ! こんなので、倒せると思うぅ?」

 【魔女】はやはりというか、無傷だった。
「まさか。そもそも当ててないし」
「まあねえ」
 【魔女】は、木刀を床に突きたてた。
「凍れ!」
 ビキビキと音をたて、床が凍ってゆく。
 それはどんどん大きくなり、上半身だけの巨人っぽくなった。
「うはぁ……反則だろ」
 俺は思わず呟いた。
「これぐらい倒せなきゃ。さもなくば、消えるよ」
 それはちょっと嫌かもしれない。
 巨人は、やはり音をたてながら俺にパンチを繰り出した。
 遅いので避ける事に問題は出ないが、範囲が広くて困る。
 と思ったら、巨人の腹から氷柱が飛んできた。
「うぉっ」
 危ないな、おい。
 死ぬかと思ったぞ。
「キャハハハハ! 私も攻撃するから、気をつけてねぇ〜」
 【魔女】が空から、俺に向かってきた。
 それ、二対一じゃん。
「酷いな」
「大丈夫だよ、殺しはしないって! 巨人君は、だけど」
 それ、【魔女】の攻撃喰らったら死ぬじゃん。
 【魔女】は木刀で、俺に突きを繰り出す。
 必死で避けるが、そこに巨人の手が迫った。
 ヤベ。
「だっ!」
 咄嗟に意識を集中し、巨人の手の近くを爆発させる。手の一部にヒビが入り、軌道がそれる。
 だが、今度は【魔女】の突きが、頬を掠る。
 おいおい、絶体絶命だよ俺!
「降参する!」
「えー! マジ?」
 【魔女】は、文句を言いながらも了承してくれた。
「ま、またやろうね。機会があったら」
 ……もう絶対やりたくねえな。


 ……どんどん、ナレーターがキャラになってきてる……
 まあ、いいか。これはこれで(良くねえよ)











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