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こまともシリーズ

困ったので、とりあえず友人に相談してみた

作者:Aska



「というわけで、聖剣を抜いてしまったんだけど、どうしよう」
「その相談に、俺がどうしようだよ」

 困ったことが起きたので、とりあえず相談したいと友人に連絡を入れて数時間後。先ほどまで「お前が悩み事だと? ふっ……いいだろう、この俺に任せろ」とキリッとした顔で来てくれた頼もしい友人と、久しぶりに楽しい昼食を食べ、早速本題に入ったのであった。

 そして、僕の目の前で口元を引きつらせる相手に、やっぱりやばいことだったか、と自問した。

「やっぱりやばかったか?」
「やばかったというか、なんでお前そんなに冷静なんだ。抜いたって、抜いたんだよな。あの伝説の聖剣を」
「うん、すっぽりと」
「いや、すっぽりって」
「えっ、じゃあ、こうずずず…っとずっぽりん! とで」
「効果音にツッコんだんじゃない」

 今度は引っこ抜く真似まで見せたのだが、お気に召さなかったらしい。僕たちがいるのは、聖王都と呼ばれる、五百年前に伝説の勇者様の子孫たちが作ったとされる国の、どこにでもある食事処である。聖剣を抜いてしまったのが今朝のことだったので、お昼ご飯と一緒に相談をすることに決めたのだ。

「昔からそうだったけど、だからなんでそこまで冷静になれるんだ? 普通騒ぐか、せめて至急相談に来るだろう。のんきに昼飯を食っている場合じゃない」
「仕事中に騒いだら、お給料が減らされるじゃないか。しかも仕事放棄なんてしたら、罰則ものだよ。午後だって仕事があるのに、ご飯を食べないと倒れてしまうだろう」
「あれ? 俺が正論を言ったはずなのに、なんで逆に諭されているんだ」

 間違ったことは言っていないよな、とぶつぶつと呟く友人を横目に、店員さんに追加注文をお願いする。今日のおすすめ定食を綺麗に完食し、デザートもしっかり頼んでおく。僕の相談にのってくれる友人のために、六十センのアイスをもう一つ頼んでおいた。うん、僕ってやっぱりしっかりしている。

「友人、デザートのアイスを頼んでおいたよ。相談料だと思って、受け取ってくれ」
「おい、待て。聖剣引っこ抜いたなんてやばい相談を、アイス一個で片づける気か」
「何? ……仕方がないな、二個に注文し直そう」
「数じゃねぇよっ! それに、どっちにしても安すぎるだろっ! 俺がお前に、困ったちゃんみたいに見られる覚えはねェーー!」

 何故か叫びだした友人は、普通に店員に怒られた。


「わかった。思えばお前とは、三年の付き合いだ。こういう性格なのは、今更だった」
「ははっ、そうだね。僕としても、友人がいきなり叫び出す性格なのを忘れていたよ」
「……俺、何でこいつと友人をやっているんだろう」

 僕はたとえ友人が、絶叫魔であろうと変わらぬ友情を築けるよ。慈愛精神いっぱいの表情で告げた僕に、アイアンクローをかましてきた友人。なんということだ、まさかの裏切りである。いや、これが巷で有名なツンデレというものなのか。今度彼の友人らしき人たちに教えておいてやろう。

「お前に好きに喋らせると、全く話が見えてこない。俺が質問をするから、その通りに答えてくれ。いいな、その通りにだぞ」
「そこまで念を押さなくても、ちゃんと聞かれた質問に答えられる。僕は子どもではない、もう十八歳の成人だ。この聖王都にある神殿で働く、謙虚なる神官だぞ」
「言いたいことはいっぱいあるが、なんでその神官が聖剣引っこ抜いているんだよ」
「いや、だから、こうずずず…っとずっぽり――」
「抜いた感想は聞いてねェッ!」

 友人の後頭部におぼんが命中した。いい腕をしている。

「無になれ、俺よ無になれ…。まず、聖剣を引っこ抜くまでの過程を教えてくれ。なんか予兆とか夢のお告げとかなかったのか? 一応神官なんだし、神のお声とか」
「夜はいつも神官長に脱毛とか腰痛とか口内炎になるような呪術を複数唱えながら眠っているけど、特にそんなものはなかったな。睡眠は快適だ」
「……そうか、予兆はなかったのか。それじゃあ、聖剣に呼ばれたとかして台座に行ったのか?」
「いや、あの禿散らかした地位が高いだけの下をいびるしか能のない神官長の命令で、聖剣を安置する部屋の掃除を頼まれたんだ」
「…………神官長、嫌いか?」
「うん」

 友人曰く、すごくいい笑顔だったらしい。

 要約をすると、僕は若いなりにそれなりの地位がある神官なのだ。僕は生まれた時から、神力と呼ばれるものが常人よりもかなり多かった。片田舎で生まれた僕が、こうして栄えある神官という給料のいい職に就けたのもこの力のおかげである。

 その分やっかみやらも多かったが、真面目で仕事熱心な僕に次第にそういう嫌がらせもなくなっていった。数年前からは、僕が道を歩くと前を歩いていた人がすごいスピードで端によって、頭を下げてくれるのだ。慕われるというのも悪くない。

「いや、それたぶん、お前の仕返しの容赦のなさに…」
「えっ?」
「……まぁ、お前って仕事は絶対に手を抜かないからな。いびりたいやつも、変なところで完璧主義発揮するこいつに泣きたくなっただろうな…」

 何やら小声で呟かれたが、とにかく話を戻そう。そんな訳で、僕は年齢的に考えればそれなりに地位は高いが、まだまだ神官の中では下の方である。そのため、ちょっとした下っ端にはできないことを押し付けられてしまうのだ。神殿に苦情を言いにきた騎士団の説得とか、聖王都近くの魔物の浄化とか、伝説の聖剣の部屋の掃除とか。

 働く者として、上から言われたことはしっかりやるのが、仕事をする者の責任だ。ちゃんと苦情を言ってきた騎士団の方々全員に、納得するまで一日中(夢の中まで)頭の中に僕の説得が響くように、神力を使った簡易お告げを繰り返した。

 途中から疲れたので、録音した音声を流し続けることになったが、一週間後に騎士団長が泣きながら頭を下げにきた。あれには驚いたが、部下のためにすごい人だ。「このままじゃ、部下が廃人になってしまう…」とか、ものすごく悲痛な声で大げさに言われたけど、それだけ部下のために必死だったのだろう。上に立つ人って、やっぱりこういう人だよね。

 あとは、魔物の浄化だろうか。近年妙に魔物の数が増えてきており、なんでも魔王でも現れたのではないか、と専らの噂だ。聖王都の王族の皆様方も事態を深刻に捉えている、って噂で聞いた。全部噂だが、所詮僕は一介の神官である。聖王都の周りで時々群れだす魔物に、全力で籠めた神力ビームで吹っ飛ばすことしかできない。

 誰かを巻き込んで昇天させたらまずいため、基本浄化は僕一人の作業になる。正直一体ずつちまちまやるのは時間がかかって大変だから、身体強化して走って魔導汽車のように数百匹ぐらいトレインしてから、殲滅を繰り返している。ちょっとトレインを手伝ってくれ、とお願いしたことはあるのだが、神官にも騎士団の人たちにも全力で首を横に振られてしまった。

 僕はまだまだ下っ端神官だし、聖王都の権力争いみたいなので、神殿と騎士の溝は見えないところで深いらしい。魔物に困っているのはみんな同じなのだし、ここは力を合わせるべきところだ。こういうところは、嘆かわしい限りだな。

「お前の性格で一番救われているのは、たぶんお前自身だよな」
「もちろんだ。僕も真面目な性格でよかったと思っているよ。不真面目なのは、周りとの歩調を乱してしまうからね」

 ……友人よ、なんでそんなに口元を引きつらせるのだ。


「それで、聖剣の部屋の掃除を頼まれて……抜いちゃったのか」
「……友人よ、君にはわからないか? 伝説の勇者のみが引き抜けると言われる聖剣が、目の前にあるんだぞ。とりあえず、思わずノリで引き抜いちゃうだろう、人間として」
「お前絶対、謙虚な神官じゃねぇよ」

 ちなみに引き抜いたのは、ちゃんと部屋を塵一つなくピカピカにした後だった。あの神官長でさえ、小姑ごっこができないぐらい完璧にしてみせた。

「えっ、あっ。そういえば、その引き抜いちゃった聖剣はどうしたんだ」
「元の場所に突き刺しておいた」
「そんな対処でいいのォッ!?」

 ハッ、と後頭部に迫りくるおぼんをキャッチした友人に、時間差で脛におぼんが襲い掛かった。ミラクルだ。

「ッ…! ッゥ……! そ、それで、聖剣はそのまま、なのか」
「そのままだね。元の場所に戻したら、突然光り出して抵抗をしてきたから、神力の鎖で縛って、隠蔽はしておいたけど」
「本当に謙虚な神官どもに、全力で謝ってこい」

 あのまま元の場所に突き刺して終わりだったのなら、僕だって今回のことはなかったこととして目を瞑ったさ。きっと台座の調子が悪かったんだ。故障中だったんだって。

 だが、よくわからないがあの聖剣からは執念を感じた。いくら僕が1時間かけて説得をしても、ブォンブォン光って僕の神力から逃れようとするのだ。つい勢いで抜いちゃっただけの、ただの神官の僕に勇者をやれ、とものすごく訴えられた気がする。他を当たれと言っても、聞かない。聞かない。


 故に、それなりに付き合いがあり、王族にも神殿にも告げ口をしないだろうと確信できた友人を呼びだして、相談をすることにしたのだ。

「友人、魔族だしね」
「……お前ぐらいだよ。聖王都の結界を誤魔化して、魔族の俺を街に入れたあげく、飯に誘うのは」
「友人は、魔族の特徴を隠すことができるから。それでもかなり力は弱まるんだろう? それをわかっていながら、聖王都に入ってくる友人も友人さ」

 普段の友人なら、店員さんのおぼんが奇跡を起こしても、防ぎきれるだろう。だが今の彼では、おぼんエンペラーと呼ばれる店員さんの攻撃を防げない。それぐらい力が落ちているのだ。それをわかっていながら、入ってくる友人はかなり奇特だ。

「お前だって、いくら力が弱まろうと俺の力なら、この街を壊滅に追いやれるかもしれねぇぞ。簡単に入れてもいいのか」
「悪ぶっても、無駄無駄。僕みたいな一介の神官と互角の魔族が、力が弱まった状態で僕に勝てるとでも? 友人はそんなわかりきったことをしないだろう」
「お前がおかしいからな。俺と互角な、お前がおかしいからな。そして今日、ようやくお前がおかしい理由がわかったけどな」
「おかしい、って何度もひどいな」

 ものすごく心外である。確かに最初に出会った3年前は、かなりの大激闘をしたと思うけど。なんか聖王都に一人はっちゃけに来た友人と、たまたま浄化作業をしていた僕が、かちあってしまったのだ。地をかけ、無人の地で三日三晩やりあったが、あれはギリギリの戦いだったと思う。結局引き分けになってしまった。

 その後も何度か戦ったが、気づけば知り合いとして色々話すようになっていた。魔族の暮らしや、人間の暮らし。彼は力試しに聖王都に来た、と言っていたが神官一人に止められたのだ。おかしいのは、聖王都を一人で落とせると思っていた友人の妄想だろう。夢を見ちゃうお年頃だったのだろう、と生温かい目で見てしまった。

「やめてくれ、その目は本気でやめてくれ。お前、俺以外の魔族にあったことはあるのかよ」
「初めて魔族を見たのは、友人が初めてだ。あとは、時々友人の友達を見かけたことぐらいか? 赤髪の魔族とか、大きな身体をした魔族とか。なかなか強そうだったな」
「……あれをなかなか強そうと言える、お前がおかしい。魔族の基準を、こいつ絶対にわかってねぇ」

 魔族なんて種族と、こんな大都市で普通会えるわけがない。五百年前の文献や、神殿に残っている魔族の伝承は、それはもうすごいものらしい。大陸を割り、空を割り、海を掻っ捌いた魔族と勇者の戦いである。前に見た演劇で、ナレーションさんがそう力強く言っていたから、間違いない。僕は勇者に選ばれてしまったらしいけど、さすがに大陸はちょっとしか割れないし、海も一刀両断まではできない。

 その程度の僕が、いくら聖剣を持っても、魔王に勝てるはずがない。魔族なんて攻めてきたら、僕なんてきっと手も足も出ないだろう。聖王都に攻めてこられた時点で、五百年前の大戦争の始まりになってしまっていたはずだ。そう考えれば、友人一人が来ただけなのは幸いだった。彼は若いし、見た目は僕と同い年ぐらいだ。やんちゃ坊主だったのだろう。


「なんか、もういいや。というか、魔族の俺に聖剣のことを聞く神経がわからん。……もし、魔王様に告げ口をしたらどうするつもりだ?」
「あっ、魔王様ってやっぱりいるんだ。うーん、出来たら内緒にしてくれたら嬉しいな。ついでにあんまり暴れないでね、って言っておいてくれると助かる。魔王様なんてすごい存在と戦うなんてやばいし、旅とか嫌だし、野宿なんてごめんだし、高給取りをやめたくないし」
「出ている。本音が出ている」

 疲れたように、脱力したように、友人は食事処のテーブルに突っ伏した。でも、これは結構切実だ。もし僕が勇者だとばれたら、国に目をつけられるだろう。今まで細々と生きてきた僕に、伝説の存在とか無理無理。もっと適任者がいるはずだ、と心から思う。

 それでも、本当に追い詰められた人類は勇者を求めるだろう。そうなったら僕は、魔王を倒さないといけなくなるのだろうか。僕の命を懸けて、この世界の人々を救うために。

「お前、本当に意味がわからねぇ。謙虚の方向性が、絶対に違う。……まぁ、俺の口から魔王様に聖剣のことが伝わることはないから安心しろよ」
「おっ、本当? ありがとう、友人よ」
「あっさり信じるなよ…」
「ん? 僕はこれまで、友達ができなかったんだ。だから、いつか友達ができたら、困ったときは相談をしたり、助け合ったりしたいと思っていた。信じるのもその一つだ。友達と言うのは、そういうものなのだろう?」

 『はじめてのお友達作りで大切なこと』という本に載っていた、と自信満々に告げると、何故か友人は目頭を押さえだした。もしかして、共感してくれているのだろうか。この本には、大変すばらしいことがたくさん載っていたからな。今度友人にも貸してやろう。

「……はぁ、わかった。とりあえず、お前はそのまま聖剣を封印していろ。魔物の活性化は、ちょっと頑張って押さえてみせるからよ」
「なんだ、友人は権力者と知り合いがいるのか?」
「おう、いるいる。だから、勇者選定とかが始まらないように、王族を見張っておけ。このまま神官として、悠々自適に暮らしていきたいんだろう?」
「まぁ、ゆくゆくは神官長を蹴り落とすぐらいには偉くなって、頑張るつもりだったけど…」
「なら、それだけ考えとけ。魔王がいたって襲ってこなければ、勇者なんていらないだろ」
「それは、一理あるかもしれない。だけど、友人は大丈夫なのか。このくそ生意気な餓鬼めッ! って魔王様に消し飛ばされたりはしないか?」
「お前、俺を心配しているのか、落としているのかどっちだよッ!? って、ッヒ……!!」

 エンペラーの奥義が光った。



******



「お帰りなさいませ」
「あぁ、もどった。まったく……あそこの店員は一体何者だ。エンペラーってなんだよ」
「お疲れですか? また人間の国に、行っていらっしゃったようですが」
「……友人と、飯を食いに行っただけだ。ただの他愛のないおしゃべりだよ」

 赤髪の麗人に自身が着ていたコートを預け、静かに下がらせると、茶色の髪を手で掻き撫でた。横目に鏡を見つめ、纏っていた魔力を霧散させると、そこには銀色の髪と赤い目をした一人の魔族の男が立っていた。

 絨毯の敷き詰められた廊下を渡り、城の中心地である玉座へと向かって、青年は当然のように足を運んでいた。足を動かしながら考えるのは、先ほどまで友人と話していたやり取りである。

 魔物の活性化の原因は、その魔物の王の未熟が問題であった。力はあるが、どうもそれに振り回され、魔力を溢れ出してしまっていた王の力にあてられてしまったのだ。その王は三年前から、少しずつコントロールする術を身に着けていったが、最初の頃に魔力にあてられた獣はそのままだった。

 魔の王の名は、魔王と呼ばれる。今から五十年ほど前に、五百年前にいたとされる魔王と同等の器を持って生まれた男がいた。その男は、昔大陸中に暴虐の嵐を巻き起こした王と、同じ力を持ったことに酔っていた。人間と争うのは、魔族として当然だと思っていたのだ。だから、己の魔力が魔物を狂わせるとわかっていても放置した。

 魔族の中でも膨大な魔力と力を持った王は、人間の国の中でも、五百年前の勇者の子孫が作ったとされる国に狙いを定めた。大戦争の引き金にはふさわしい、と高笑いしたのだ。

 そんなノリではっちゃけてしまった魔王様は、十五歳の少年にぼっこぼこにされた。向こうも同じぐらいぼっこぼこだったが、そんなことは慰めにもならない。えっ、嘘でしょ? と有頂天になっていた魔王様の鼻っ柱が盛大に折れた。

 その相手と会話をするようになって、ただの神官だと知った時は、どん底まで落ち込んだ。我こそは魔王様だー! とはっちゃけていた自分がものすごく恥ずかしかった。五十年越しの黒歴史に叫びまくった。十五歳の少年に生温かい目を向けられた時は、死にたくなった。

 魔王様はその少年に、自身の身分を明かすことはできなかった。実は魔王です、なんて口が裂けても言えなかったのだ。魔族でも下と見られている自分が、実はトップです、とか魔族のみんなにも申し訳がなさ過ぎて言えなかった。

 それからの魔王様は頑張った。五百年前の魔王様と重ねた自分自身を黒歴史として封印し、この世界の情勢と種族との関係を1から勉強しなおしたのだ。それにより、世界は500年前よりもだいぶ様変わりをしていることに気づく。魔王として、魔を導く者として、前を見据えるようになっていった。

 それに気づかせてくれた人間は、本当に破天荒の塊であった。だが、彼と友人になったことに後悔はない。堂々と黒歴史を抉ってくるが、魔王様は負けなかった。あの少年は、魔王にとって恩人だったのだから。そして少年は、知らず知らずのうちに世界を救っていた勇者であった。


「聖剣を抜く前に、世界を救っているとか、あいつは本当におかしいやつだ。しかも今度は聖剣を抜いて、魔王を動かすんだからな」

 彼に自分が魔王だと告げるつもりはない。あの青年は、今後も破天荒な神官として勇者の国を困らせてもらおう。そして自分は、そんな彼の友人としてまた何か困っていたら相談にのってやろうと考える。そのためには、勇者などいらない世界を作る必要があった。

「世界中にいる魔族を、一度招集しよう。暴れている魔物を鎮静化させ、人間の国にちょっかいをかけないように言っておかなければな」

 プランを練りながら、彼は楽しそうに口元に笑みを浮かべた。急いで取りかからないと、勇者を招集されて、聖剣のことがばれたらまずい。あの破天荒と、聖剣とプラスで戦うとか本気でやっていられない。何より、魔王として相対したくない。黒歴史をあの空気を読まない男は、絶対に抉りまくってくる。そう確信していた魔王様は、かなり本気を出したのであった。


 それから数年後。友人にいつものように相談にのってもらう神官の青年と、ツッコミとおぼんが炸裂しながら話を聞く魔族の青年が今もどこかにいるらしい。


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