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洛中魔界・洛外迷宮 作者:影宮芯二
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3/11

少し走った先に、町家家屋の連なりにあって目立つ、一際大きな建物があった。
彼の言う、武家屋敷というのはこれのことらしかった。
立派なつくりの門は、誰かの手で開け放たれたままになっていた。

「ここだ。俺は、この場所で見張っているから、どれでも気に入った武器を取ってくるといい。入って、右寄りに進めば武器庫みたいな部屋がある。簡単に見つけられるだろう」

「わかった見てくる」

「さっきまで中には何もいなかったが、気をつけてな」

時生が門を通ろうとすると、それより先に入っていく者がいた。
最初に出会った女子生徒だ。

「私も入る」

有無を言わせず、建物の影に消えていくので、時生は急いで後を追う。

中は薄暗い。
彼女がずかずかと侵入していくので、土足で家屋に踏み入ることを躊躇する暇もなかった。

「ここみたい」

八畳程の室内に、ところ狭しと武具が並んでいた。刀、槍、弓。火縄銃らしき物まである。選り好みしている間はない。とりあえず目についた刀に手を伸ばす。

(重い…)

ジャージ男は軽々と振り回していたが、時生の体格と体重では、むしろ刀のほうに振り回されるようにしかならないだろう。
刀を置いて、槍に持ちかえる。当たり前だが、もっと重い。

武器庫を見回す。

長短二対で飾ってある日本刀が目についた。他より装飾も豪華で、値打ちのある物に見えた。しかし、問題は重さだ。
短いほうの刀に手を伸ばした。
握り、抜刀する。

しっくりくる。そんな表現が思い浮かんだ。

これなら戦える自分がイメージできる。

「それにするんだ」

女生徒から声を掛けられて、時生は彼女を見た。
両手に三本ほど刀を抱えている。

「持てるだけ持っていった方がいいと思ったんだけど」

彼女は槍に片腕をのばすが、やめた。

「真剣って重いね。全然、走れなくなったら意味ないから、このくらいが限界かあ」

時生は彼女が自分で戦う気ではなかったんだと気付き、少しほっとした気持ちになる。
時生はこんな時は男が前に出て、女を守るべきだ、などという思想を押しつける気はなかった。本来は、そんなの平等なんじゃないの、というスタンスだったはずなのだが。
それでも、実際に起こるはずのないことが、こうして起きてみると、女の子に戦いをさせるのは何か気が引ける気分があるのだった。
先の展開を考えていたんだと思い、時生は感心した。
確かに、あのジャージ男のように戦力になりそうな人物にこの先、合流できても、武器がなければ戦えないだろう。

時生ももう二本、刀を持っていくことにする。

「私、古川伊代」

「芳田時生」

「じゃあ、芳田君。急いで戻らないと」

そう言って、古川伊代はまたも先に行動を起こすが、抱えた刀が戸口に引っ掛かりそうになる。

「わっ」

「大丈夫?」

「え? 今の見た? 見たか。見たよなぁ」

伊代は恥ずかしかったのかぶつぶつ言いながら廊下を進む。
時生も続いた。

「大丈夫、大丈夫。私、たまにドジするけど運動神経はいいほうだから。これでも、バスケ部でレギュラーなの。本当の話よ。じゃあ、ところで、芳田君は、何か運動してる人?」

「す‥いや、特には」

「す?」

二年前まで、水泳をやっていたのだが、やめた後のオタク生活による衰えが激しいので、自分のことは、運動している属性に含めないほうが妥当だと思ったのだ。しかも、やらされていたという表現が、今にして考えても正確だ。
あの日々が、ここにきて少しでも報われれば、やっていてよかったんだなと、振り返ることもできるのだが。

「す?」

伊代は、気になったのだろう水泳の「す」を繰り返しているが、時生としては想像に任せることにした。
時生は伊代を追い抜いて、門から外に出た。

「お待たせ‥」

二人の女子はすぐそこにいたが、ジャージの男は離れたところで戦闘に巻き込まれていた。
例の化け物が複数いるのに加えて、初めて見る人間も男女合わせて四名が、通りのむこう側に見える。
ジャージ男は、人間を庇って、一人で立ち向かっている。

どうやら、早くも手に入れた武器を使うときがきたようだった。

「スキューバダイビング?」

時生の後ろから、門から出てくる伊代の声がした。
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