挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
洛中魔界・洛外迷宮 作者:影宮芯二
1/11

芳田時生は、七条烏丸の交差点付近で目覚めた。
正確には、意識を取り戻したというべきか。
何しろ、今この時より前の自分の状態がどうだったのか、皆目、見当がつかない。
学校にいたはず、だと思う。
服は制服のままだが、鞄はもっていない。
学校はここから何㎞も離れたところだから、自分がここにいること自体が不自然だった。

おかしなことはそれだけではない。
街中だというのに、人がいないし、車も一つも動いていない。
静寂の中に、時生は自分自身の息づかいだけを聞いていた。

(一体、何が起こっているんだ…?)

このままま立ち尽くしていても仕方ない。
曇天を見上げる先に、薄霧に包まれた京都タワーがある。
幻影の様なシルエットに、時生はなぜか不安と恐怖を感じた。

深い意味もなく、タワーとは逆方向に歩き始めた。

霧のせいで視界は良好とはいえない。

ジャリッ

突然、砂利の地面を践んで、時生は戸惑う。
どこかの寺の敷地に入ったかと考えたが、そんなはずはなかった。
烏丸通りをまっすぐ北上してきたのだから。

よく見渡せば前方の景色は、時代劇さながらの古風な家屋だらけになっている。
少しずつ、霧は晴れ始めているようだ。
体ごと、時生は振り返った。
こちらは見慣れた、京都駅ビルとタワーの、21世紀そのものの風景。
のはずだった。
時生は絶句する。
駅ビルの向こうに「建築物」の姿を見たからだ。

「壁…なのか?」

恐ろしく高い絶壁が、薄くなり始めた霧のむこうの空にそびえている。時生の視界からは、東西のどこまで存在するのか窺い知れない。

そのとき、時生はどこかから、ここにきて初めて自分以外が発する物音を聞いた 。

奇声と悲鳴。
そう遠くない。
日本家屋の町並み側の、すぐそこの辻から聞こえるようだった。
時生が、何かを判断するより早く、最初の「それ」は姿をあらわした。

全速力の女子高生。
声を掛けなければ、そのまま走り去っていただろう。

「ちょ、ちょっと!」

我ながら情けない声が出たと、時生は思った。
信じられないといった表情で彼女は時生を見た。

一瞬の間があった。

「逃げて!」

そう叫ぶと、時生にむけて走り寄る。
だが、時生の後ろにある光景を認識するに至って、その顔が凍りつく。

「何なの、これ?」

答えようのない問いは、時生にむけられたものではなかったかもしれないが、それでも、やはりもどかしさを覚えずにはいられなかった。

しかし、状況は彼に時間を与えてはくれない。

やがて、彼女が現れた辻の陰から「それら」がやってきたからだ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ