「どうしたんだ?」
マリウス王子が横に立っていた。
「殿下、殿下……」
トニオは王子の手を握りしめ、さらにはその体にしがみついて、そして初めて目覚めた。
「悪夢でも見たのか?」
トニオは返事もできない。なんなんだ、今のは? あれは……夢?
自分が汗びっしょりになっていることに気づいた。加えて。従者である自分の寝台の横に主人マリウスがいることにも。
「すみません。そうですね。あれは、夢です。 よかった。夢だ。」
まだ息が荒い。
「私の名を呼んだぞ。」
「そうですか?」
声がハッキリ震えている。
「何か飲むか?」
そう言われて、ようやくわれに返った。
「そんな、めっそうもありません。私が自分で……」
「ほら」
すでに、王太子は冷たい薄荷茶を差し出していた。
「すみません。」
恐縮しながら受け取って飲む。汗がすうっとひいていく。
「申し訳ありません。宿居が主をお起こししてしまうなんて……」
「体が硬直していた。金縛り というやつだな。疲れてる証拠だ。」
疲れてる? そうだろうか? あれは予兆ではないのだろうか? トニオは新たな恐怖にとらわれた。子供の頃から、ごくたまにあった。悪いことが起こる前に見る、夢。
「そんなに怖い夢だったのか? お前のそんな顔は初めて見るぞ。」
「なん……でもありません。」
「とてもそうは思えないな。ともかくそれは『夢』だ。私はここに居て無事だ。だから安心して眠れ。ここに居ようか?」
「そんな……」
王子が彼の寝台に座り、彼の頭を膝にのせた。いけない。滅相もない。そう思うのに、それだけのことですうっと恐怖がひいた。
「眠れ。」
術にでもかけられたかのように トニオはすとんと眠りにおちた。
小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。