表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

水雫の懺悔

作者: 津島



「私、貴方だけは信用してあげる。だから、だからどうか________」



file1【報告書】


以下、ターゲット殺害報告書に記されていたことだ。


「先刻。_月_日、○*・×…」

黒く塗り潰されている

字が読めない程黒く、執拗に塗り潰されている


「ターゲットである時滝楓叶トキタキフウカを殺害、後に拷問し情報を吐かせる、が一向に喋らない為痺れを切らした調査員がターゲットを殺害する」



「一向に喋らなかったが一つだけ漏らした「水雫」と言うのが気になる所。

恋人か友達か、親族かは分かっていない。調査を進める」


____見付けた。私の愛しい人



file2【ある人の懺悔】


俺は、ただ1人最愛の人を残して逝ってしまった

前々から辞めておけと注意されていたのに、それをまともに受け止めなかったのが悪かったのだろう

俺はギャンブラーだった

賭けるものは金なんて安いもんじゃあ断じて無ェ。

賭けるものは【生命】さ

勝ったら生きる

負けたら死ぬ

単純なゲームだった

それに飲まれていったのさ

今となっちゃあ笑い話だがな


彼女は…水雫は、最後まで俺を心配してくれた

つくづく優しい女だったさ。…ただ、性に関する知識が備わって無かったがな。

まぁあれだけ複雑な家庭環境だ、知らないのも頷ける


いい様にいえば優しい、悪いように言えば腹黒天然…そんな水雫に俺は惹かれたんだと思う。

水雫とは中学1年から付き合っていたが、中学2年生に上がる時水雫は問題を起こした、なかなか怒らない彼女が、先生に、生徒に、学校に、憤怒したのさ。

其処からはずっと不登校気味

保健室登校だった


水雫の居ない教室は退屈極まりなく放課後に保健室へと乗り込んだものさ、「水雫は居るか」って

そういうと彼奴、へにゃりと笑って「あぁここに居るよ」って返事をしてくれるんだ

これは守らなければ、と思ったんだ




だけど俺は死んじまった

賭けに負けたのさ

本当に、水雫には悪い事をした

愛し合おうって誓ったのに

あの時、賭けを辞めていれば幸せに暮らせていたのかな。そんな考えはもう遅い




file3【前後で揺れる】


楓叶の名前を見付けた時、私は嬉しさに飛び上がりそうになった

女みたいで嫌だと愚痴を零していたあの名前。

もう見ることは無いと思っていた

愚痴より先に涙が零れ落ちた


敵対組織の書類庫の中で涙を流す女性…余りに異様な光景だろう。

普段の水雫なら泣くことは滅多に無い

彼が死んでから泣くことはめっきり減ったのだ

まともに泣いたのは何年ぶりだろう、軽く両手の指は使い切る程だ


暫く泣くとぱらぱらと報告書を見る

其処には彼のプロフィールから全てが書かれていた

もう一言で言うと気持ち悪い。殺す為にこれだけ調べなければならないのかと思うと少し笑いが込み上げてくる。


あぁ、本当に愛しい。

私に、色を、感情を、温もりを教えてくれた最初で最後の人

有難う


fileend【決意】



水雫は、今幸せだろうか


楓叶は、無事に逝けたのかな


水雫は、新しい人に出逢えただろうか


楓叶は、向こうでもギャンブルしてるのかな?


水雫は、生きる事を諦めてないだろうか


楓叶は、死ぬ事を放棄してないだろうか


ねぇ、最後に一言言えるなら


貴方に最後一言だけ言えるなら


俺は


私は


「幸せになってくれ」


「もう充分幸せだよ」



そう言いたい



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ