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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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221 七つの顔の女だぜ! 10

「あれ、騎馬が2騎、急速接近中です。道を空けましょう!」
 探知魔法ではなく、目視で確認したマイルの指示に、レーナ達はロープで繋がれた盗賊を街道の端に寄せ、道を空けさせた。
「あ、そうだ、あの人達もザルバフの町へ向かうでしょうから、ギルドへの伝言を頼みましょうよ! あの人達ももうすぐ野営するでしょうけど、明日、私達よりずっと早く町に到着するでしょうから。上手くすれば、ギルドから護送の応援が来てくれるかも……」

「う~ん、どうかなぁ……。急いでいるみたいだし、もし騎士とか軍の急使だったりしたら、無視されると思うけどなぁ……」
「でも、駄目で元々、頼むだけ頼んでみましょうよ」
「そもそも、止まってくれるかどうかも怪しいのに、ぐだぐだ考えても仕方ないわよ。道を塞いで無理矢理止めるわけにもいかないでしょう」
 メーヴィス、ポーリン、レーナが、それぞれ意見を述べるが、とにかく、止まって話しを聞いてくれるなら、ということに落ち着いた。
 そして接近した2騎の騎馬は、『赤き誓い』と盗賊達一行の横を通り過ぎることなく、そこで停止した。

「貴様達、何者だ!」
 そしてその装備は、騎士や伝令兵のものではなく、明らかにハンターのそれであった。
 その誰何すいかの声に、マイルが軽やかに答えた。
「あ、旅の者です。襲ってきた盗賊を捕らえたので、今朝出発したザルバフの町へと引き返すところです。もしザルバフの町へ向かわれるなら、ハンターギルドに応援を寄越すよう伝言をお願いしたいのですが……」
「「え…………」」
 ローブに繋がれた17~18人の男達と、半数はまだ未成年の、4人の少女達。
 それらをまじまじと見たふたりの騎馬の男は、眼を見開き、口を半開きにして呆然と固まっていた。

 復活した男達に聞いたところ、ふたりは商隊の護衛依頼を受けたハンターであり、賊の待ち伏せに備えての前方哨戒を担当しているらしい。そのため、本隊より少し先行していたところ、20人前後の人影を視認したため、当然、確認のため接近したとのこと。当然の対処であろう。
 もし怪しい気配があれば、手前ですぐ引き返し本隊に警告するつもりであったが、どうやら賊の待ち伏せのようではなく、いつでも反転して逃げ出せる体勢で接近したとのことであった。

 商隊は、できれば明日の明るい内にザルバフの町へ到着したいため、今日は少し暗くなっても進み続けるつもりであり、もう少し距離を稼ぐ予定らしかった。森の中ならばともかく、街道を進むだけであれば、多少暗くなっても大きな問題はない。さすがに、真っ暗になっては馬がつまづいて足を痛める等の危険が高まるため、あまり無理はできないが……。
 そしてマイル達が事情を説明したところ、驚きはしたものの、納得したらしいふたりは本隊へと引き返していった。

「でも、そう簡単に信じていいんですかね? もし私達が盗賊の仲間で、商隊が来た途端とたんに盗賊達のロープがぱらりと解けて、隠し持っていた剣で襲い掛かる、とか、考えないんでしょうか……」
「馬鹿ね、もし騙すつもりなら、素人の女の子4人で20人近い盗賊を捕まえた、なんて荒唐無稽なお話にするわけないじゃない。騙すなら、もう少しマシな嘘を吐くわよ。あんたの『にほんフカシ話』じゃあるまいし……」
 マイルの疑問は、レーナにより一蹴された。

 そしてしばらくすると、後方から中規模の商隊がやってきた。馬車12台に、その前後には2騎ずつの騎馬がついている。当然、馬車の中には最低でも10人以上の護衛が乗っているはずである。
 その商隊は、マイル達に追いつくと、そこで停止した。そして中央付近の馬車から、商人らしき男性と、年配のハンターらしき男性が降りてきた。状況から考えて、この商隊の責任者と、護衛達のリーダー役であろう。

「初めまして、私、この商隊の責任者、セリヴォスと申します。この度は、我々商人にとっての仇敵、盗賊一味を捕らえて戴いたこと、感謝致します。
 ……それにしても……」
 ロープで繋がれた盗賊達を眺め、驚いたような、そして呆れたような顔のセリヴォス。
「……この眼で見ても、信じられませんな……」
 セリヴォスがそう言うのも、無理はない。馬車から降りてきた他の護衛達も、眼を剥いて固まっている。
 それに、素人の少女達にこうも簡単に盗賊を退治されては、護衛達は立場がない。
 まぁ、4人の騎馬と馬車に乗った10人以上の護衛を雇っているこの商隊が、40人以上の大盗賊団以外に襲われる可能性はまず無いし、そんな巨大な盗賊団がそうそういるわけがない。王都から遠く離れた田舎町付近ではそれだけの大所帯を支えられるだけの獲物がいないし、無茶をすれば領主軍、下手をすると国軍が出てくる。
 なので、この商隊の護衛達が盗賊と戦うことになる可能性はまず無かったし、商隊の責任者であるセリヴォスからの礼は、自分達からというより、商人全てに代わって、という意味なのであろう。

「4人での護送は大変でしょうし、危険です。是非、私共に御協力させて戴きたい。今夜はこのあたりで御一緒に野営致しましょう」
 そう申し出てくれたセリヴォスに、マイルが嬉しそうに答えた。
「ありがとうございます、助かります! で、野営なんですが、もう少し進んでからにしたいんですが……」
 元々、今日中にもう少し距離を稼いでおきたかったセリヴォスには、異存はなかった。そして盗賊達の首にかけたロープを馬車に結ぶことにより、馬車の速度に合わせて歩かないと首が絞まるという「ポーリン式盗賊護送法」を用いることにより、順調に進み始めた一行であった。



「「「「「………………」」」」」
 2組目の偽盗賊一味、そして1組目の新人盗賊一味を魔法で掘り返した『赤き誓い』一行を、畏怖の目で見つめる商隊の人々。
 セリヴォス以下3人の商人、12人の御者、そして騎馬を含めた16人の護衛ハンター達の全員が声も無く見つめる、その所業。

 首まで土中に埋められた上、その周囲の土を魔法で固められ、全く身動きできない完全に無防備の状態で街道脇の森の中に放置されるという、想像するだけでも恐怖に包まれる鬼畜の所業。
 もし野獣や魔物が姿を現したら。もしそのまま放置され、助けが来なければ。
 ……想像したくもない。
 そして、もし発見されたとしても、魔法で固められた土を、身体を傷付けないように掘り出すのにどれだけ時間がかかることか。たまたま通りがかった旅人が、偶然、クワやツルハシを持っているはずもない。おそらく、掘り出すことを断念して「次の町に着いたら、ギルドに知らせておく」と言って立ち去るのが精一杯であろう。
 いや、それも、横に立ててある『こいつら、盗賊』という立て看板があっては、望み薄か。

 そして問題なのが、いや、別に問題があるわけではないが、それでも皆の思いとしては「問題」なのが、これらの『3組の盗賊達を無傷で捕らえた、とんでもない実力者』が、どう見ても一般人にしか見えない少女達であるということであった。
「お肉、焼けましたよ。スープもできました!」
 食材から調理器具、食器に至るまで、何でも出てくる収納持ちの貴族のお嬢様。
 失禁していた盗賊の衣服と身体を浄化してやった、見た事のない魔法を使うおっとりとしたメイドの少女は、馬車の車輪を直す時に怪我をした御者の傷を一瞬のうちに治してくれた。
 見習い騎士の少女は、料理のための薪を一瞬で用意した。……拾い集めたのではない。倒木を、剣で切り裂いたのである。
 普通、剣はそのようなことができるようには作られていないし、例えそうであっても、「そうできるだけの技と力を持った者」など、存在しない。いや、存在するはずがなかった。
 ……薪に魔法で点火した赤毛の少女が、凄く普通に感じた。そこに、唯一の平安を感じた商隊の一行であった。
 知らないということは、幸せであった。本当に……。
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