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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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206 邪 神

 部屋の扉を閉めてから、そっと防音・防振の魔法を解除したマイル。
 こんな魔法を掛けたままだと、賊が侵入しても気付かず、大変なことになってしまう。睡眠魔法など、論外であった。いくら確率が低いとはいえ、仲間をそんな危険に晒すわけにはいかない。

 そして、宿屋からそっと抜け出すマイル。行き先は、何と、王宮であった。
 王宮の近くまで行くと、光学迷彩、遮音、振動遮断、そして念の為に臭いも遮断する結界魔法を使用する。王宮なのだから、獣人を嗅覚探知要員として配備している可能性もゼロではない。いくら確率が低くても、警戒するに越したことはない。何しろ、見つかったら大事だ。
 マイルは、結界魔法が完璧であることを確認してから、王宮へと忍び込んだ。

 別に、衛兵の前を堂々と通過しても構わないのだが、それでは面白くない。いや、正直言うと、「本当は見えているのではないか」とか、「今、急に結界が解けたら」とか考えてしまい、背中がむずむずして落ち着かないのである。
 なので、万一のことがあっても良いように、一応は「結界無しで忍び込んでいる」という想定で行動しているのである。そして、発見された時に正体がバレないよう、いつもの服装ではなく、ちゃんと変装している。
 顔には、仮面マスク。頭には、猫耳カチューシャ。そして衣服は、本当は女怪盗を目指してレオタードとかにしたかったけれど、レオタードは着たことも実物に触れたこともないためよく分からず、そして生地が薄いような気がしたため気後きおくれし、代わりに、馴染み深くてよく知っているスクール水着で代用した。やはり、実戦証明(コンバット・プルーフ)済みのものでないと安心できない。
 何しろ、ドロワーズの上に着るわけにはいかないので、下着無しで着ることになるのだから。
 それに、レオタードもスクール水着も、そういうものに関する知識のないこの世界の者にとっては大差ないだろうとの判断であった。
 ……確かに、その通りかも知れない。破廉恥で信じがたい恰好、という点では、どちらも大差ないであろうから。

(探索魔法! あの連中が捕らえられている場所は……)
 そう、マイルは、あの誘拐犯達に直接取材、というか、話を聞くつもりなのであった。自分のやり方で。
 一応の訊問(拷問付き)フルコースは終わっているだろうけど、自分がその情報を得られないのでは意味がない。なので、マイルはもう一度、「個人的な訊問」というやつをやるつもりなのである。
 ……いい迷惑であった。
 何しろ、犯人達にとってそれは、受けるわれのない、全くの理不尽な行為なのであった。
 しかしマイルは、小さいことは気にしない。ここは地球ではなく、そして日本でもない。それくらいは、ごく些細ささいなことであった。……マイルにとっては。

(よし、これだ!)
 こんなこともあろうかと、ちゃんと犯人達、特にあの指導者の探知反応をちゃんと覚えていたマイルは、犯人達が捕らえられている場所を把握した。そこは、勿論王宮の重要な部分ではなく、別棟として建てられた罪人の収容施設であった。
(数人ずつ、いくつかに分けられてるのか。まぁ、当たり前だよね。危険な魔術師達を全員一箇所に集める馬鹿はいないよね。それに、口裏を合わせられたり、悪だくみの相談がし放題、とか、それはないよね~)
 そして、見つかりようのない結界魔法に包まれて、収容施設へと忍び込むマイルであった。



こんばんわ(グッドイブニング)~」
「だ、誰だ!」
 見張りの兵士がふたりとも急に眠り込み、その不自然さに警戒心を強めていた誘拐犯達。
 この部屋の牢に捕らえられているのは、指揮官を含む5人のようであった。
 そしてそこに突然掛けられた、姿無き怪しい声。焦って誰何すいかするのも当たり前であった。

「泥棒です……」
 そう、ここは、お約束の台詞を言わずにはいられないマイルであった。
「ど、泥棒だと?」
「あ、いえ、泥棒の振りをしているだけで……」
 本当に泥棒だと思われては、話が進まなくなってしまう。なので、慌てて訂正するマイル。
 ちゃんと話を聞くためには、姿を見せるべきである。姿を見せない相手に、正直に話をしてくれる者はいないであろうから。なので、マイルは結界魔法を解いた。
「私の名は、『猫目少女』!」
 そう、泥棒3姉妹と、猫妖怪の娘、更に『猫目小僧』という漫画のキャラクターを混ぜ合わせ、そしてファリルちゃんへのリスペクトを込めた芸名であった。

「なっ! ち、ち……」
「「「ちっぱい!」」」
「「痴女!!」」
 酷い言われようであった。ふたつの派閥、両方共。

「な、ななな……」
 男達の予想外のリアクションに、動揺し、そして怒りに顔を赤くするマイル。
 しかし、それも仕方ない。この世界では女性の下着はドロワーズであり、身体にピッタリとした露出度の高い水着など、下着姿というよりは全裸に近いと認識されるものであった。

「猫獣人か! これだから、慎みのない獣人族は……」
「貞操観念のない、獣そのものだな!」
「恥ずかしくはないのか、全く……」
「まぁ、貧相な小娘の裸など、何の興味もないがな」
「う、うむ、なかなか良い恰好であるな……」
 散々な評価である。
 最後のは、別に嬉しくはない!

(うう……。酷い言われようだけど、私のことより、このままでは猫獣人に対する風評被害が!
 仕方ない、ここは、猫獣人のみなさんに迷惑がかからないよう、名を変えるしか……)
 そしてマイルは、頭に着けた猫耳型カチューシャを取り外し、アイテムボックスに収納した。
「「「「「え? 耳が取れた?」」」」」
 驚く男達に、マイルは仕切り直して再び名乗った。
「私の名は、『邪神ちゃん』!」
「「「「「何じゃ、そりゃあああああ!!」」」」」



 そして、数分後。
 ようやく落ち着きを取り戻した男達に、マイルは自己紹介を行っていた。
「そういうわけで、我は、遙かな昔にこの世界を訪れた異界の神々の生き残りである。
 仲間達が撤退した時、逃げ帰るのをいさぎよしとしなかった者達がこの世界に留まり、最後のひと合戦と洒落込しゃれこんで、この世界の者達と相打ちとなりほぼ壊滅。瀕死ひんしとなった我は、結界の中に自らの身を封印し、永き眠りに就いておったのじゃ。それが、何やら久し振りに故郷ふるさとへのゲートが開く波動が伝わり、目が覚めてしもうたのじゃ……」

 既に捕らえられ、そして洗いざらい吐かされた今、王宮側が今更自分達を騙す必要もないであろうし、騙されても、これ以上知られて困ることを隠しているわけでもない。
 そして何より、この少女が王宮側の官吏や間諜であるとは思えなかった。こんな官吏や間諜はいない。そういう者は、もっと地味で目立たないものである。あの、ミアマ・サトデイル先生の小説ではあるまいし……。
 それに、ここへ忍び込んだり見張りを眠らせたりと、明らかにこの少女は王宮側とは敵対する姿勢を示している。
 そう思い、少女が言う「異界の神」という言葉を信じたわけではないが、男達の警戒心は少し薄れた。
 そして、マイルがデモンストレーションを行った。

 くねくね
 指の力だけで曲がる鉄柱。
 ごおっ! ぴかぴか!
 口から炎、眼から怪光線。
 そして、マイル・女神化現象ゴッデス・フェノメノン

 男達は、牢の中でひれ伏した。
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