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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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198 謎の誘拐団 6

「この人達は、このまま捨てて行きます」
 戦闘力を失った16人の男達を、アイテムボックスから取り出した、以前釣りのために作った糸でみんなで手分けして縛り上げた後、マイルが皆にそう告げた。
 糸は細くて強靱な上、後ろ手で縛った腕は、親指同士とかも縛っているため、無理に力を入れるとスッパリと切れて指が落ちそうであった。
 細い糸くらい引き千切れるだろうと思い、後で力を込めて引き千切ろうと思っていた男達は、それを聞いて顔を青ざめた。親指を失った剣士など、何の役にも立ちはしない。

「拷も……、訊問に必要な時間が惜しいですし、どうせ誘拐した人達はすぐ近くです。このまま追った方が早いですから。行きます!」
 手足や指を縛り上げた上、男達同士も縛って、更に大木に結び付けたので、逃げ出すことはできないだろう。ロープと違い、細い釣り糸でメチャクチャに固く結びつけたので、刃物で切らない限りは解けないだろう。勿論、剣やナイフ等は全てマイルが収納に回収済みであった。
 一応、ヤバそうな傷にはマイルとポーリンが治癒魔法を掛けている。勿論、完治させたりはしていない。回収に戻るまで死なないように。ただ、それだけのための治癒魔法である。
 手加減していた『赤き誓い』と違い、『女神のしもべ』が相手をした方は、放置していたら死ぬかも知れない状態の者がいたが、それが一応は生き延びられる程度に治癒されたのを見て、眼を剥く『女神のしもべ』の面々であった。
 そして、さっさと歩き出したマイルに、慌てて付いていく『赤き誓い』と『女神のしもべ』。

 この時点で、マイルは既に探知魔法により誘拐犯達とファリルちゃんの位置を把握していた。なので、先程の戦いは、情報収集のためではなく、単なる「障害の排除」に過ぎなかった。
 そして、ファリルちゃんが無事であること、その位置を掴んだことにより、マイルにほんの少し余裕と安心感が生まれていた。
 そうでなければ、先程の戦いで手加減するため余計な時間をかけたりせず、殺しはしないものの身体中の骨を叩き折るくらいの強行手段に出たはずである。

 かなり暗くなり、何とか先頭のマイルに付いて歩くことで進み続けた一行。もうしばらくで灯り無しでは厳しくなると思われた頃、マイルが立ち止まった。
「……いました」
 皆が縦隊の行軍隊形を崩してマイルの周囲に集まり、木々の間からマイルが指し示す方を見ると、木々がなく少し広い空き地のようになったところに、先程の男達と同じような、服はそれぞれバラバラであるがお揃いの黒いマントを着けた30人近い男達の姿があった。女性はいないようである。
 20人少々が空き地の中心部を囲むように円を描いて立っており、他の7~8人がその外周に、外側を向いて立っている。内側の者達はスタッフを手にしているところから、全員が魔術師だと思われる。外周の男達は、皆、剣を装備している。どうやら、外側の者達は魔術師達の護衛役らしい。
 空き地の所々にかがり火が焚かれており、周囲は明るい。そして、円陣の中心部には……。

「……格子力、バリアー!」
 小さくそう呟くと、マイルはようやく安心したような顔をした。
「これで、ひと安心です!」
 そう、円陣の中心部には、地面に敷かれた布の上に横たえられたファリルちゃんの姿があったのである。高性能であるマイルの眼が呼吸で上下するファリルちゃんの胸の動きを確認したか、それとも探索魔法で確認したのかは分からないが、とにかくファリルちゃんの無事を確認したらしく、そして格子力バリアで保護した今、もはやファリルちゃんの安全は絶対である。……たとえここが、これから戦場となろうとも……。

「どうしましょうか……。どうやら内側の連中はみんな魔術師みたいですから、さっきのようには行きませんわよ。不用意に出れば、さすがにこちらが不利ですわ。それに、ファリルちゃんを人質に取られれば、動けなくなりますし……。
 レーナちゃん達の魔法で奇襲攻撃をするにも、ファリルちゃんを巻き込んだり、人質にされる可能性がありますわ……」
 どうやら、先程の見張り兼防衛要員達に魔術師が含まれていなかったのは、魔術師達は全員ここに集まっていたためらしかった。逆に、これだけの魔術師がいるのは、明らかに前衛職に対する比率が高過ぎる。
 テリュシアの言葉に、思案するみんなであったが……。
「じゃ、行きましょうか」
 そう言って、てくてくと歩き出すマイル。
「「「「「え?」」」」」
 それを見て唖然とする『女神のしもべ』と、肩を竦め、マイルの後に続く『赤き誓い』の面々。

「な、ななな、何を! 焦りの余り、正常な判断力を失いましたの? 待ちなさい!」
 焦って止めようとするテリュシアに、メーヴィスが振り向いて言った。
「まぁ、マイルだからねぇ……」
「な、何ですかそれは! 全然、説明になっていませんわよ!」
 メーヴィスの言葉に納得できないテリュシアが小声でわめくが、『赤き誓い』の面々はマイルに続いてぞろぞろと歩き去り、仕方なく慌ててそれに続く『女神のしもべ』。
「もう! 知りませんわよ、どうなっても!」
 安全第一、何事も予備の案を用意してから行動に移る『女神のしもべ』の面々は、久し振りの「逃げ道を用意していない、危険な行為」に不安そうな顔であったが、『赤き誓い』を、そしてファリルちゃんを見捨てることができるはずもなく、後に続くしかなかったのである。

「何だ、お前達は!」
 護衛らしき男達のうちのひとりが誰何した。
 しかし、先程の場所からここまで、大した距離ではない。当然、あの夜鳥の鳴き真似での警報はここでも聞こえたであろうし、あの警報で見張り兼防衛要員が対処に向かったのも承知しているはずであった。だからこそ、あの男達も、戦いの後で大声を出して仲間に危険を知らせようとしたりはしなかったのであろう。不審者の侵入は既に伝わっているのだから。
 そして、見張り員から結果の報告が無く、マイル達がここにこうして現れた、ということの意味が分からないはずもなかった。

「ファリルちゃんを返して貰います」
 既に外周の者達は全員が集まり、マイル達の正面に立ち塞がっていた。そしてマイルのその言葉に、もはや誰何の必要もなく剣を抜き放つ男達。
 そして、マイル達が9人中3人が魔術師という魔術偏重型のパーティだと判断した内周の者達は、6人を支援として派出した。そして他の15~16人の魔術師達は、マイル達を気にも留めずに何やら怪しげな詠唱を始めた。
 攻撃魔法かと緊張した皆であるが、その詠唱は具体的な攻撃を意味する言葉ではなく、何やら抽象的な言葉がだらだらと続くだけであった。言うならば、神に対する祈りのような……。
 しかし、幼女を攫って捧げる祈りであれば、その相手は神ではなく、邪神か魔神あたりであろう。

「さっさと片付けるぞ! 我々も早く戻って召喚呪文の詠唱に加わらねばならんのだ!」
 支援に出てきた魔術師のひとりが、親切にも情報を教えてくれた。
「召喚呪文……」
 マイルが、低い声で呟いた。
 召喚 + 攫った幼女 = 生け贄。
 マイルの前世での知識では、それ以外の組み合わせが思いつかなかった。

「……あは」
 ぎょっ!
 レーナ、メーヴィス、ポーリンの3人は、驚愕に眼を見開いた。

「あはは……」
 笑っている。
 マイルが、笑っている。……眼が全く笑っていない顔で。

「あはははははは!」
 そして、全然笑っていないその眼は、完全に逝ってしまっていた。漫画的に表現するならば、ぐるぐると渦巻き模様になっているが如く……。

 そして、敵の魔術師が魔法を放った。
 6人中5人が攻撃魔法を放ち、あとのひとりは防御魔法を発動寸前でホールドしていた。
 攻撃を行った5人のうち、3人が相手側の魔術師それぞれにひとりずつファイアーボールを放ち、残りのふたりは各パーティの前衛に対して炎弾を放った。
 この小娘達が見張り達を倒したということは、若い前衛達が到底剣の達人とは思えない以上、魔術師の腕によるものとしか思えない。魔術の腕は、外見とは関係ないのであるから。
 なので、3人が魔術師を狙って命中精度の高いファイアーボールをそれぞれ1発ずつ放ち、ふたりが敵の2チームの前衛に向かってそれぞれ1発ずつの炎弾を放つ。炎弾ならば剣で受けられても爆発するし、外れてもそれなりに被害を与えるか体勢を崩させることができる。そして最後のひとりは、敵からの魔法攻撃に備えて防御魔法の準備をして待機。……完璧である。

 そして『赤き誓い』に向かって飛来した、3発の魔法弾。
 自分達目掛けて飛んできた2発のファイアーボールは、レーナとポーリンがそれぞれ魔法防御で受け止めた。そして前衛のマイルとメーヴィスに向かった、爆裂効果のある炎弾は。
「……抗魔剣!」
 メーヴィスが振った剣に斬られた瞬間、音も無く消え去る炎弾。
 マイルが弾き返す前に、わくわくして待ち構えていたメーヴィスが、やっとこの日が来た、と喜びの表情も露わに、実戦初公開の抗魔剣を披露したのであった。

 一方『女神のしもべ』は、器用貧乏ではあるが自分の命は惜しいので、これだけは必死で鍛錬した防御魔法で何とかファイアーボールを防いだラセリナと、敵の魔術師が魔法を放つ素振りをした時点で既に弓に矢をつがえていたタシアの矢が空中で炎弾を射抜き、爆散させた。
 ファイアーボールも炎弾も、弓矢に較べれば遥かに速度が遅いため、その弾道を見分けることなど弓士にとっては造作もない。

「「「「「「え…………」」」」」」
 しかし、5発の魔法攻撃が全て簡単にあしらわれたということは、敵の魔術師達にとっては、かなりの衝撃だったようである。特に、メーヴィスの「抗魔剣」が。
 魔法防御は、分かる。自分達も使うし、反射的に短時間で張れるよう鍛錬しておくのは魔術師の常識なのであるから。なので、今回は相手の魔術師組に攻撃をさせず、防御に魔法を使わせて次の魔法の詠唱完了まで無力化し、そして前衛に被害を与えて味方の護衛剣士達が突っ込むためのお膳立てをしてやるだけで充分だと考えていたのである。
 しかしそれが、全ての攻撃を完全に防がれての、まさかの無傷。しかも、弓矢での爆裂系魔法「炎弾」の迎撃。
 ……まぁ、それはいい。そういう手法もあるし、たまたまうまく命中するという幸運くらい誰にでも起こり得るものである。
 しかし、あれは無い。
 剣で爆裂系魔法を斬って、爆発を起こさず、何もなかったかのようにスッと消える。
 そのようなことがあるはずがない。あって良いはずがない!

 防御も含めて、6人掛かりで仕掛けた魔法戦を、3人の魔術師と弓士、そして剣士にあしらわれた。その信じがたい事実に愕然とする6人の魔術師と、突撃のタイミングを失い、立ち尽くす8人の護衛剣士達であった。


『平均値』5巻の、購入特典が決定しました。(^^)/

【私、能力は平均値でって言ったよね!5】
初回版限定封入特典「雨上がり」
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WonderGOO「酵母役を公募する」
明屋書店「天才オリアーナ」

初版特典1編、書店特典9編です。(^^)/
発刊予定は6月15日です。
よろしくお願い致します。

あ、今回、本誌の書き下ろし短編は2編あります。
巻頭書き下ろしが……。(^^ゞ
もう、これが通るなら、何でもアリやな。(^^ゞ

そして、カラーピンナップががが!(^^)/
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