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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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196 謎の誘拐団 4

「何者だ!」
 驚いたことに、いきなり攻撃をされるのではなく、誰何すいかされた。しかも、現れたのは剣をき黒いマントに身を包んだ、如何にも怪しそうな男がひとりだけ。他の者は、潜んでいるのであろう。
 奇襲を狙っているのか、それともマイル達がここに現れたのは偶然だと考えて、うまく言いくるめて追い返そうとしているのか……。
 まさか臭いを辿って追跡されたなどとは思ってもいないだろうから、目視で追跡者がいないことを確認していたならば、無関係の者がたまたま現れたのかも知れない、と考えることも、あり得ないわけではない。
 もっとも、そうそう夜の森に用事がある者がいるとは思えないので、その確率はそう高くはないであろうが。いくら王都に近い小規模な森とはいえ、夜の森は危険である。重要な用事がない限り、うろつく者などいるとは思えない。特に、年若い女性とかは。
「ハンターよ。こんな夜中に森の中で、団体さんで何をやってるのよ!」
「それはこっちの台詞だ!」
(((((あちゃ~!)))))
 『女神のしもべ』の5人は、頭を抱えた。

 せっかく相手がひとりで現れて話をしてくれるのだから、ここはうまく誘導して失言を誘い、情報を入手すべきところである。なのにレーナは、自分達が相手が大人数だということを知っている、という情報を無駄に漏らした。幸いにも相手はそれにピンと来ていないようであるが、駆け引きとしては大失敗である。
 マイルも表情を歪めている。いつもならば笑ってスルーするが、今は、少しでも情報が欲しいので、マイルも真剣であった。この後、戦いになって勝てたとしても、正しい情報が手に入るとは限らないのだ。話ができるうちに相手の失言を誘いたいが、そのためには、余計な情報を与えるべきではなかった。

「夜に森に来るなど、いったい何をしに来たのだ!」
「人にものを尋ねる時には、自分から先に説明しなさいよ! あんた達こそ、何をしているのよ」
 レーナも相手側も、互いに自分が話の主導権を取ろうとして舌戦を繰り広げるが、当然、平行線で物別れに終わる。どうやら、相手もあまり頭が良くはないようである。まぁ、交渉や説得等、対人スキルが低いだけかも知れないが……。

「やれ!」
 会話によって追い払うことを諦めたのか、男が大声でそう叫ぶと、男の後方の藪や木陰から残りの男達が現れた。その数、15人。伏兵を残す、という考えは無かったようである。
 また、後方に回り込むということもしなかったのは、ひとりも逃がさず、ということではなく、前方、つまり男達から見て後方への突破を許さなければそれで良い、ということなのかも知れなかった。
 現れた男達は、皆、普通の衣服に黒いマントを羽織はおり、剣を手にしていた。最初に現れた男と同じ恰好である。
 森でフルプレートアーマーを身に着ける者もいないであろうが、これだけ戦う気満々の連中が人数を揃えていて革の防具すら着けていないというのもまた、おかしな話である。
 そして更に、どうやら魔術師は含まれていないようなのである。これだけの人数がいれば、普通は2~3人の魔術師が含まれていても良さそうなものであるが、人材不足なのか、たまたまなのか……。

「偽装かも知れないから、魔法にも気を付けて!」
 テリュシアが、『赤き誓い』の方に向かって小声で警告した。おそらく、『女神のしもべ』のメンバーには、今更そんな警告をする必要はないということなのであろう。
「「…………」」
 本職は魔術師でありながら剣士の恰好をしているマイルが自分達のパーティにいながら、そして以前の盗賊団もどきの時にも剣を持って普通の盗賊の振りをした魔術師達を相手に戦っていながら、そこに考えが至らなかったレーナとポーリン。さすがにマイルとメーヴィスはそれを配慮していたようであるが……。

(戦闘力はともかく、駆け引き、ということに関しては、素人か……)
 『女神のしもべ』の5人は、敵に関してそう判断していた。
 戦力を隠しており、そして力尽くでの攻撃を決断したならば、当然、奇襲を行うべきであろう。わざわざ大声で指示を出して伏兵の存在を教えたりせず、何か不自然ではない合図を決めておき、その合図で一斉に襲い掛かるべきである。それを、分かりやすい叫びに、ぞろぞろと姿を現す仲間達。
 しかし、駆け引きに慣れていないということは、決して戦闘力が低いということとイコールではない。戦場で戦う兵士や暗殺者とかは、別に相手と話したり駆け引きをしたりしないが、だからといって、決して弱いというわけではないのだから。
 そうこうしているうちに、最初に姿を見せた男が下がり、自分が所属するチームであろう3人と合流し、どうやら向こうの戦闘態勢が整ったようである。

 『赤き誓い』と『女神のしもべ』は、左に『赤き誓い』、右に『女神のしもべ』が位置取り、その間に2メートルくらいの間を開けていた。互いの戦闘力や戦い方を知らない仲間とは、安全のためにそれくらいの間は取っておきたい。また、それくらいであれば、そこに敵が入り込む恐れもなく、その方向からの攻撃を気にする必要もない。

 敵は、4人編成のチームが2組ずつに分かれて、『赤き誓い』と『女神のしもべ』に襲い掛かった。人数や体格、前衛の比率等から考えて、『女神のしもべ』の方が明らかに脅威度が高いと思いそうなものであるが、向こうも慣れたチーム編成を崩したくなかったのか、それとも小娘の新米パーティなど自分達が戦力調整を行うまでもないと考えたのか……。
 まぁ、確かに、8対4と、8対5。共に2倍か、それに近い人数差である。7対4と9対5にしたところで、大差ない。それに、未成年の子供を含む4人の方を2倍の戦力でさっさと片付けて、その後もう片方へ加勢すれば良いのだ。

 そして、敵が突入した。
 ふたりずつ2列になった4人のチームが、2メートルくらいの間隔を空けて前後に並び、それが2組、『赤き誓い』と『女神のしもべ』にそれぞれ突っ込んだ。
 おそらく、最初のチームの前列の2人が相手の前衛に正面から襲い掛かり、後列のふたりが左右に出てそれぞれ横から相手に斬り掛かる。その間に後ろのチームが横をすり抜けて後衛に襲い掛かり、一瞬で勝負をつける、という隊形なのであろう。
 相手と接近戦を行うのが前衛だけ、というのではなく、全ての相手に同時に接近戦を仕掛ける。魔術師を含まない、剣士のみのチームとしては妥当な戦術である。

(つぶて)よ、敵の眼を潰せ!」
 攻撃態勢を整えていたのは、何も敵側だけではない。小声で詠唱を行っていたラセリナが、大きな声で攻撃魔法の発動ワードを叫んだ。
 器用貧乏の魔術師であるラセリナには小石を生成するような贅沢なことはできず、ただ単に地面の小石や土塊つちくれ、木の破片等を巻き上げて飛ばすだけである。なので、「礫」という呪文であっても、何でも飛ばす。
 そして敵方は、その物騒な呪文を聞いて、反射的に腕で眼を護ろうとした。剣や槍を持った相手の前に飛び出しながら。

「ぐあっ!」
「ぎゃあ!」
「うあああぁ!」

 槍で肩を貫かれ、剣で胴をぎ払われ、そして剣を腹に突き立てられて、一瞬のうちに3人が沈んだ。最初のチームで無事なのは、ひとりだけ。
「え……」
 こうなっては、後ろのチームが後衛を狙うどころではない。そんなことをすれば、横をすり抜ける時に攻撃され、たとえそれをしのいでも、後衛に対峙した時に背後から斬り掛かられる。
 無事難を逃れたひとりが慌てて下がり後方チームと合流し、5対5となって膠着状態に、と思われた時、槍士のフィリーが僅かに身体を左に傾け、その右に位置していたテリュシアは逆に右に身体を傾けた。
「……風よ、逆巻け!」
 再び叫ばれたラセリナの攻撃呪文に、敵の5人が襲い来る強風で体勢を崩されないようにと踏ん張ったところに、ひゅん、と1本の矢が襲い掛かった。そう、フィリーとテリュシアがその間に空間を空けたのは、この矢を通すためであった。

「こんなひょろひょろ矢など!」
 矢の命中コースにいた男は、余裕綽々(しゃくしゃく)でその矢を剣で叩き落とそうとした。どうやら、対人戦闘の駆け引きには不慣れであっても、武術そのものはかなり研鑽しているようである。実戦知らずの、道場剣士なのであろうか……。

「え?」
 そして、その右肩に深々と刺さった矢。
「ど、どうして……」
 驚きのあまり、痛みをまだ脳が認識していないのか、自分の肩から生えた矢を呆然と見つめる敵の剣士。
 そう、先程のラセリナの風魔法は、相手を吹き飛ばそうとしたわけではなかった。器用貧乏のラセリナに、そんな威力の風魔法など使えない。
 しかし、弱い風でもできることはある。そう、着弾寸前の矢の進路を少しずらすとか……。

((……強い!))
 最初に魔法で一発喰らわせた後、敵はマイルとメーヴィスに任せて『女神のしもべ』の戦いを見ていたレーナとポーリンは、驚きに目をみはっていた。
 剣技や槍技、そして魔法の腕が凄く優れているわけではない。
 いや、才能がないわけではないが、まだまだ若く、未熟な技。そして、大した威力でもない凡庸な魔法。
 しかし、強い。
 レーナの口から、思わず言葉が漏れた。
「これが、素人の少女達がFランクから始めて、ひとりも死ぬことなくCランクハンターになったという、『女神のしもべ』……」

 『赤き誓い』も強い。確かに強いが、それはただ単に『強い個人が集まっているだけ』である。その戦いは個人の能力に依存しており、それ以上でも、それ以下でもない。
 しかし、『女神のしもべ』は違う。
 ひとりひとりは凡庸な力しか無くとも、パーティとして強い。
 レーナは、悔しかった。
 『赤き誓い』と『女神のしもべ』が戦えば、間違いなく『赤き誓い』が勝つだろう。
 しかし、レーナは悔しい思いを抑えることができなかった。

 マイルとメーヴィス?
 残った敵を後衛のレーナとポーリンに近付けさせないように、そして殺したり重傷を負わせたりせずに倒そうという「縛りプレイ」で必死に戦っていたので、他の者の戦いを見ているどころではなかった。


いよいよ、私の書籍化作品2シリーズ目、『ポーション頼みで生き延びます!』、もう日付が変わっているので、本日、6月2日(金)発売です!(^^)/
『平均値』の一発屋で終わるのか、『ポーション』も続巻を出して貰えるのか……。
謎が謎を呼ぶぞ!(^^)/
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