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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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19 初仕事

 ハンター登録の翌日、マイルは早速初仕事に出掛けた。
 収納魔法を使えることにするので荷物を持つ必要はないが、手ぶらだと奇異に思われるかも知れないから、一応背負い袋は背負っている。中身は獲れた獲物を入れるための袋だけである。昼食用のパンと水筒は、傷まないよう時間停止のアイテムボックスの方に入れてある。
 装備は、革の胸当てに革のブーツ、腰には謎剣。一応は、駆け出しハンターっぽく見える。
 地方都市なので、狩り場である森までの距離は近い。大人の足で1時間程度。そこへマイルは15分で到着した。勿論、人の姿がある時には減速したからその時間なのである。本気で走ると環境に優しくないので、決してやらない。

「ここが狩り場の森……」
 教わったとおりに来たし、地図も書いて貰った。間違いはないだろう。
 人気のないうっそうとした森に、マイルは思考を口に出して喋っていた。黙って考えているのは何か心細かったので。

「初心者以外はもっと奥の方へ行っているのか、別の森に行っているのか……。
 初心者用の場所なんだから、お金になる大物の魔物はいないだろうから、当たり前か……」
 ひとりで呟きながら森へとはいって行くマイル。

 しばらく歩くと、木の枝にとまった鳥を見つけた。薄暗い森の中でもなぜか良く見えるマイルの眼であった。
 見つけはしたが、剣では木の上の鳥はどうしようもない。しかし、割と大きいから、獲れれば買い取って貰えるはず。駄目なら宿で捌いて貰って自分で食べればいい。
 マイルは地面を見回し、こぶしくらいの大きさの石を見つけるとそれを拾い上げた。そして腕を振りかぶって、鳥を目掛けて思い切り投げつけた。

 どぉん!

 物凄い音が響いた。
 そして鳥の姿は消えていた。鳥がいた場所から上の部分の木も消えていた。
 どうやら、鳥は逃げたわけではないらしい。
 マイルの、いささか良すぎる眼には、残った木にへばりついた少量の肉片と羽、そして血痕が見えていた。

「あああああ……」


 数分後、ようやく気を取り直したマイルは再び歩を進めていた。上着のポケットには、小指の先ほどの小石がいくつか入れられている。
 これならば貫通するだけで済むだろう。頭部を狙うのもいい。
 マイルは、学習する子であった。

 先程の音が悪かったのか、獲物の姿がない。
 マイルは、とりあえず薬草を採取することにした。
 しかし、まともに探していてはなかなか見つからないと聞いていたので、ズルをすることにした。そう、探索魔法である。
 マイルは、便利なものがあるのにわざわざ苦労をしようとは思わない。これくらいのズルは受け入れるタイプである。

「探索魔法! 薬草の場所を示せ!」

『前方に十七歩進み、そこで左折、六歩進んで下さい』

「カーナビかッッ! それ、ただの道案内でしょ! 魔法じゃないでしょうがっ!!」
『元々、皆さんが魔法と呼ばれているものは、全て我々の手によるものですが……』
「そうだった………」

 もっとそれらしいもの、例えば視界にレーダー画面のようなものが映って赤や青の光点で示されるとか、薬草のある場所に光の柱が立ち上るとかいうのを期待していたマイルは、がっくりと膝をついた。

『そういうのをお望みでしたら、そう致しますが……』

「できるんかい!!」


 あまりナノマシンに頼るのは良くないので、魔法の行使は別として会話は控えようとしていたマイルであったが、つい突っ込んでしまった。
 誰かに見られたら、ひとりでボケ突っ込みをしている変な人だと思われてしまう。

 探索魔法を、音声案内ではなくレーダー方式に変えて貰い、黙々と薬草を採取するマイル。何でも、網膜に直接信号を送っているらしい。
 ある程度溜まると違う種類のものに変え、次々とアイテムボックスに収納して行く。あまり同じ種類のものばかり採るのは良くないと思ったのである。


 薬草の採取を始めてしばらくすると、あの大きな音の影響も治まったのか、巣穴に籠もっていた動物たちが姿を現し始めた。
 少し離れた場所に姿を見せたホーンラビットに向けて、マイルはポケットから取り出した小石を指で弾いた。
 地球にも、鉄球やコイン等を指で弾く『指弾術』というものがあるそうだが、それはあくまでも敵の眼や顔面を狙い注意を逸らしたり怯ませたりするためのものであろう。しかし、マイルのそれは。

 ぶしゅ!

 貫通した。
 うまく頭部に当たったため、肉や毛皮は無傷で、角も大丈夫。商品価値は落ちていない。
 それに気を良くしたマイルは、薬草採取はやめて狩猟に切り替えた。
 ホーンラビット。鳥。キツネのようなもの。片っ端から小石の餌食に。
 途中で小石を補充して、再び撃ちまくる。
 槍や剣では近付く前に逃げられるし、弓矢の命中精度は決して高くはない。そのため、普通のハンターにはこんなに鳥や小動物が獲れるわけではない。
 そして遂に現れた大物、猪!

 どしゅ!


 大猟であった。
 ホクホク顔で帰路に就くマイル。
 が、そこで気が付いた。

「あ、私、魔術師なのに一度も魔法使ってない……」

 どうやら、マイルは探索魔法を使ったことは『魔法を使った』と認識していないらしかった。
 確かに攻撃魔法と違って『魔法で狩りをした!』という印象は低いが、それでは探索魔法の立場がない。恐らく、『カーナビ』、『道案内』という最初のイメージが強すぎたのであろうが……。
 そして、結局マイルは、攻撃魔法どころか、剣すらも使ってはいなかったのである。



 マイルは獲物を換金するためハンターギルドへとやって来た。
 獲れた獲物の一部を入れた袋を右肩に背負っている。
 今後の便利さを考えて、収納の魔法を使えることは隠さないつもりだが、手ぶらだと獲物が獲れなかったと思われそうで嫌だったから、ちゃんと獲れてますよ、というアピールのつもりであった。

 常時依頼の薬草とホーンラビット、そしてその他の肉系統の素材売却のみなので、受付窓口は介さず直接納品所へと向かうマイルに突然男性から声が掛けられた。

「ちょっといいかな?」

 ナンパかいちゃもんか?
 身構えるマイルに、声を掛けた男性、というか、少年は少し慌てたように言葉を続けた。

「い、いや、変なことじゃないよ! パーティの勧誘だから!
 俺達5人でパーティ組んでるんだけど、ちょっと攻撃力が不足気味でさ。もうひとり募集してるんだよ。こいつらがメンバー」
 少年の後ろには、少年と少女がふたりずつ立っていた。

「君、見ない顔だからよその街から来たんだろう? その獲物から見て、結構腕は立ちそうだけど、やっぱりソロは何かあった時に危険だからね。
 うちならば年齢もそう離れていないし、女の子もいるから安心だよ。どうだい、考えてみてくれないか?」

 マイルはパーティにはいる気は全くなかった。パーティだと、マイルの特異性にすぐ気付かれるだろうし、そうなればマイルを利用しようとするか、下手をするとどこかの貴族あたりに情報を売られるかも知れない。
 しかし、荷物を抱えたままここで立ち話をするのは目立つし、変に食い下がられて揉めるのもまずい。

「あの、とりあえず納品を済ませてからでいいですか?」
「あ、ごめん。ここで待ってるよ」
 少年は素直に引いてくれた。

 マイルは納品所に行き、名前と登録番号を告げて袋から獲物を取り出した。
 これにより、受付を通さない常時依頼や素材売却であってもハンターの成果が記録に残されて昇格の資料となる。

「おお、嬢ちゃん、若いのにいい腕してるじゃねぇか。数も多いし、毛皮の傷みが殆どねぇ。少しイロを付けてやるよ」
 納品所のおじさんが、感心したようにそう言ってくれた。

「本当ですか! ありがとうございます!
 あ、それと、獲物は他にもあるんですが……」
 そう言いながらマイルが収納魔法から残りの獲物を取りだして台の上に並べ始めると、おじさんの眼が驚愕に見開かれた。
「し、収納魔法だと……。それに、その獲物の量は何なんだよ……」
「え? 何かおかしな事でも?」
「いや、おかしいも何も………」
 マイルが最後に猪を取り出すと、おじさんはあんぐりと口を開けた。
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