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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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187 妖精狩り 3

 そして、しばらく後。
 話を聞いたらすぐに解放するし、その話も強要するわけではない、ここで妖精に会ったことは誰にも話さない、と約束することにより、ようやく何とか落ち着いて静かになった妖精達。
 マイルはアイテムボックスからテントを出すと、妖精達をその中に運び込み、ゆっくりと話を聞くことにした。無造作にテントを出したマイルに、妖精達は少し驚いたようである。

「このいましめを解いてくれんか」
 一番年上らしき男性、多分村長(むらおさ)と思われる妖精がそう言ってきたが、勿論そうするわけにはいかない。いくら身体が小さいとはいえ、妖精はすばしっこいし、それなりに魔法も使えるのである。
 いや、マイルは自分の身を案じているわけではない。妖精達の一斉攻撃を防いで再度捕獲しようとして、この暗闇と狭いテントの中、妖精達を「ぷちっ」と潰してしまわないかと、それが心配なのであった。
 なので、正直にそう言ったところ、妖精達は黙り込んだ。

「いや、すぐに終わりますから! ちょっとお話を聞きたいだけですから! だから、少しの間だけ、我慢して下さい」
 そう言って、マイルは頭の中でナノちゃんにお願いした。
(話が終わるまで、妖精さん達の魔法を封じる、ってことはできるの?)
『権限レベル5のマイル様がそう指示されれば、当然それが優先されます。妖精種は身体が小さいため思念波の出力も弱いですから、飛翔能力以外は、元々大した魔法は使えませんが』
 それならば、安心である。いくら弱い魔法であっても、テントに火を付けられては堪らないし、拘束している糸を焼き切ることくらいはできるであろうから。
(じゃ、それでお願いね)
『承知!』

「じゃ、本題に入りますね。お聞きしたいのは、皆さんの間に伝わっている、大昔の文明のことなんですが……」
「え……」
 村長らしき妖精が、驚いたような顔をした。
「し、知っているのか、『神々の国』のことを……」
 村長の後ろで、妖精達が、魔法が、火が出ない、とか騒いでいるが、気にしない。

「はい、エルフと古竜からは、既に話を聞いています。なので大体のところは知っているのですが、もしかすると新しい情報があるかもと、妖精族に伝わるお話も、是非お聞きしたいと……」
 エルフと古竜から既に聞いている、と聞き、驚く村長。
 そりゃ、エルフはともかく、古竜とそんな話をできる人間がいるなどとは、考えたこともないであろう。

「……そうか。ならば、教えても構わんか……」
「村長!」
「村長様!」
 何人かの妖精達が村長を止めようとしたが、村長はそれを制した。
「何も、秘密にするようなことではない。それどころか、神々も祖先達も、この話を伝え、広めることを望まれておったはずじゃ。それを、世代交代が早い人間達が失伝しただけのことじゃ。
 人間達の間に伝承が復活するならば、喜ばしいことではないか」
「「「「…………」」」」
 そして、村長は話してくれた。人間に較べ、遥かに長い寿命を持つ妖精達の間に伝わる物語を。



 ……そして、大した収穫はなかった。
 既にエルフのクーレレイア博士や古竜のベレデテスから聞いた話と、ほとんど変わらなかったのである。いや、それらよりも情報量が少なかった。
 まぁ、仕方あるまい。妖精達の間にどの程度の情報が伝わっているかが分かっただけで、今回の遠征の目的は充分に達せられたのだから。それも、今回の休養の5日間丸々を充てるつもりが、初日で終わったのだから、上出来であった。
 ……そして、『妖精の友釣り』は、楽しかった。妖精達にとっては悪夢であっただろうが。
 そう、楽しい時間を満喫できて、マイルは満足していたのであった。

 そしてマイルがふと見た先に居たのは。
(妖精の、……幼生?)
 そう、それは、妖精の幼生……、いや、幼女であった。

「ペッ……マスコットとして、私について来ませんか? 美味しい食べ物、食べ放題です!
 ……太りすぎて飛べなくならない程度までなら」
 マイルの眼が、怪しく輝いた。
「え? ど、どうしようかなぁ?」
 美味しい食べ物食べ放題、という言葉に釣られて、悩む幼女。そして。
「「「「「誰が行かせるかあああぁっっ!」」」」」
 大勢から思い切り怒鳴られた。
「それに、さっき何と言おうとした! 『ペ』? ペ、何じゃ?」
「え、そ、その……、」
「『ペット』って言おうとしただろうがあああぁ~!」
 ペ……マスコットの入手は、失敗に終わった。


「じゃ、解放しますね。色々とありがとうございました」
「「「「「え……」」」」」
 驚いた様子の妖精達。どうやら、マイルが本当に約束を守るとは思っていなかったようである。
 それもそうか。既に捕らえてある妖精達を街へ持ち帰れば、ひと財産どころか、孫子まごこの代まで贅沢できるだけの資産が築けるのである。人間が、みすみすそれを逃すはずがない。
 そして、マイルの方も、少し考えていた。
(考えてみると、私、ちょっと酷いことをしちゃった? 仲間の姿をした化け物の背中が割れて、とか、下手したらトラウマものかも……)
 『ちょっと』ではなかった。『ちょっと』では……。

(このままだと、人間に対する悪評が、またひとつ追加されるかも……。
 マズい、それはマズい! 種族間の宥和ゆうわを図りたい私が正反対のことをするのは、どうにも耐えがたいものがある……)
 そして、妖精達を解放するために手を動かしながら色々と考えていたマイルは、遂に名案を思い付いたのであった。マイルは突然テントをアイテムボックスに収納した。

「幻惑魔法解除!」
 唐突にそう叫んだマイルは、頭の中で魔法の呪文……というより、ナノマシンに直接指示を出した。
(光線屈折、散乱! 水分凝結、冷却して結晶化、形成! 重力中和、形成維持……)
 そう、超久し振りの、『マイル・女神化現象ゴッデス・フェノメノン』だッッ!
 そして、空気中の水蒸気が凝結して凍結、氷の結晶がマイルの背に純白の翼を形成する。
 頭上には光の円環、周囲にきらめく光の粒子……。

「なっ! ま、まさか、真祖様……」
(え? 女神様じゃなくて、そっち?)
 村長が漏らした言葉に少し驚いたが、別に女神様であろうが真祖様とやらであろうが、大した違いはない。

「うむ、そなた達が正しく伝承を伝え、幸せに生きているか確かめに来たのだ。壮健なようで、安心したぞ。では、達者で暮らすのだぞ!」
 ひゅん!
 適当なことを言って、光学魔法で姿を消したマイル。そしてそのまま、そろりそろりとその場を後にした。
(よし、これで「酷いことをしたのは、謎のLサイズの妖精(エ・フェラリオ)、真祖様とやらの仕業」ということになって、人間の悪評が広まることはない! 女神様のせいにする予定からは少し変わったけど、結果オーライ、鴎来堂おうらいどう!)
 そして、意気揚々と引き揚げる、マイルであった……。


「おお、おお、まさか真祖様が我らを見守って下さっておったとは……」
 感激に震える、村長以下、妖精族一同。
「しかし、人間の中にも約束を守る者がいるのかと思ったら、人間ではなく真祖様だったとは。
 やはり、人間は約束を守ったりしない、ということは間違いではなかったか……。
 これからも、より一層、人間共には注意せねばな。おそらく真祖様は、その警告のためにあのようなことをなさったのであろう……」
 せっかくの人間の株を上げるチャンスが、台無しであった。
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