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149 王都 ~再び仮住まい~

「何よ、その『ふぁざこん』って?」

「あ~、その、まぁ、『異常なまでの、お父さん大好きっ()』のことですよ」

「ああ……」

 何となく、意味が伝わったようであった。


「で、まぁ、嬢ちゃんが無事元気でやっているかどうか、知りたかっただけじゃ。

 今度、あそこの村に連絡する時に、両親に伝えてやりたいしのぅ。

 いや、嬢ちゃんのことじゃから、しょっちゅう手紙を出しているのは間違いないんじゃが、ほれ、親に心配かけたくないからと、困っていたり病気になっていたりしても、『元気にやっている』とかの嘘の手紙を書いたりするじゃろう? だから、第三者の話が聞ければ、親も安心するじゃろうと思ってのぅ……」


 エルフの男性、エルサトークの説明に納得する、『赤き誓い』の面々。

 言っていることは理解できるし、連絡先とかではなく元気そうな様子だけなら、別段問題はないであろう。そう考え、場所の特定を避けるために遺跡の件とかには触れず、元気そうな様子や、世間話の時に聞いた、博士の失敗談……子供の振りをしてお祭りでのお菓子の無料配布の列に並んだら、配布担当者が顔見知りのシスターで、追い返された話とか……をしてあげた。


 そうこうしている内に、マイルの手紙への加筆も終わり、元々はいっていた大小ふたつの封筒にエルサトークから受け取った手紙を加えて包み直した。

 その後、受付嬢に包みを渡し依頼金を払ったマイルは、半額分を払い何度も礼を言うエルサトークと別れて、皆と共にハンターギルドを後にした。


 これで、荷は次のギルド便で運ばれ、何度か中継されてティルス王国の王都支部に届いた後、そこから包みに書かれた宛先へと配達される。その後は、受け取った者が対処してくれる。

 最初に受け取る者がきちんと指示通りにしてくれるかどうかは信頼関係の問題であり、その点は、マイルは全く心配していなかった。

 ギルドは、その荷がどこから発送されたものであるかは、決して漏らさない。料金は前払いだし、差出人名は包みを開ければ分かるのだから、それで問題はない。名前や住所等、どこまで相手に教えるかは、依頼人の自由である。


 これで、多分マイル達の居場所が露見することはあるまい。

 秘密保全に関して、ギルドはかなり信用できるし、手紙には必要な情報以外は書いていないのだから。

「さ、王都目指して、しゅっぱぁ~つ!」

 元気なマイルの掛け声に、苦笑するレーナ達3人であった。

「……ところで、『40~50歳くらいになるとあまり親に甘えなくなり』ということで、博士がその例外、ってことは、クーレレイア博士って、いったい何歳くらいなんでしょうか?」

「「「…………」」」

 マイルの何気ない言葉に、黙り込むメーヴィス、レーナ、ポーリンの3人であった。


 そして、マイル達は気付いていなかった。

 あのエルフの男性、エルサトークに話したことが、どういう結果を招くかということに。

 確かに、マイル達はクーレレイア博士の居場所については、何も教えなかった。

 しかし、博士の居場所を当然知っている者がいたのである。


 次の氏族間の連絡の時、エルサトークは送付書類にクーレレイア博士の両親宛の手紙を同封した。

 書類を受け取った氏族長からその手紙を渡された博士の両親は大層喜び、次の娘からの手紙への返信に、そのことを記した。




「ぎゃあああああぁ~~!」

 大好きな父親に恥ずかしい失敗談、しかも、思い出したくもない、あの『子供菓子詐取失敗事件』を知られた。

 あまりみっともない真似をしないように、と書かれた父親からの手紙を握り締め、ベッドでのたうち回るクーレレイア博士。


「ぐぎぎ! この私に、よりにもよってとうさまに対して恥を掻かせるなんて……。

 許さん! ……というか、うっかりこの話をしてしまった相手で、少女4人組。

 見つけた! 見つけたわよ!!」

 ベッドの上で吠えるクーレレイア博士であったが、父親からの大切な手紙をくしゃくしゃに握り潰していることに気付くと、慌てて丁寧にシワを伸ばし、大事そうに机の引き出しにしまい込むのであった。




「エルフって、どれくらい生きるんですかねぇ。色々な本を読んだけど、どの本にも、あまりはっきりとは書かれていないんですよねぇ……」

 マイルがそう言っても、マイル程本を読んでいるわけでもない平民のレーナやポーリンに答えられるわけがない。しかし、有力伯爵家の娘であり、その歓心を得ようとして色々な話をしてくれる父親や兄達に囲まれていたメーヴィスは、謎の多いエルフについてもある程度の知識を持っていた。


「ああ、それは、はっきりしたことが判らないから、明言できないんだよ。

 寿命が長いエルフは、その大半が、老齢のためではなく、事故や病気、魔物との戦いとかで死ぬことになるからね。それに、寿命による死を迎えた者も、その年齢に大きな差があるらしいんだ。

 魔力の大小による、とか、生まれる時に女神がサイコロを振ってお決めになる、とか、色々な説があるんだけどね……。

 で、エルフは、生まれてから15~16歳になるくらいまでは人間とほぼ同じくらいの速度で成長するけれど、その後はすごくゆっくりと成長して、人生の大半は15~35歳くらいの姿で過ごすそうだ。その後、やや老化の速度が上がり、後はゆっくりと老いていく。

 だから、さっきのエルサトークさんは、かなりの年齢のはずだよ。クーレレイア博士から見れば、祖父とか曾祖父とかいうレベルではなく、御先祖様、というレベルの年代だと思うよ」

「ふぇ~!」

 メーヴィスの説明に、感嘆の声を漏らすマイル。

 そして、『若い時代が長い』ということから、ある種族のことを思い出した。

(……サイヤ人か!)


 そして、時々狩りや採取、魔物討伐等をしながらの数度の野営を経て、ようやくこの国、ヴァノラーク王国の王都、シャレイラーズへと到着した。

 この国はマイルの母国であるブランデル王国の隣国であり、メーヴィス達の母国、そしてマイルがハンターになった国である、ティルス王国の丁度反対側になる。

 この国には、離れた国の新米Cランクハンターの噂など、欠片かけらも流れてきてはいまい。

 なので、少しやらかして名前が売れたパーティではなく、全く無名の新人パーティとして、この王都でしばらく活動する。それが、差し当たっての『赤き誓い』の活動方針であった。

 ティルス王国の王都では、あの卒業検定のせいで、少し名前が売れすぎていた。地道にやるには、身分不相応な評判は邪魔になるだけである。


「さて、まずは宿探しね。しばらく滞在するんだから、いいところを探すわよ。

 宿を押さえたら、ギルドに顔を出して、しばらくここに滞在することの挨拶と、情報収集よ。

 その後は、私達『赤き誓い』の伝説の第3章の始まりを祝して、夕食は豪勢に行くわよ!」

「「「おお!」」」


「……で、1章と2章というのは?」

 マイルの素朴な質問に、レーナは当然のような顔をして答えた。

「ハンター養成学校での出会い編が第1章、ティルス王国王都編が第2章よ。

 そして第10章あたりで王国の危機を救い、Sランクになる予定よ」

「「「…………」」」



「ここね!」

 とある宿屋の前に立つ、『赤き誓い』一行。

 そう、ここが、この街で彼女達が選んだ宿であった。

 最初、少しギルドに寄って宿の確認を、と考えたのであるが、「ギルドが特定の宿を勧めるのは、贔屓ひいきや営業妨害になるため、禁止されています」と言われ、紹介を断られてしまったのである。

 まぁ、言われてみれば、その通りである。

 小さな町だと、金持ち用と庶民用にはっきり分かれた2軒の宿があったりして、不幸な事件を防ぐためもあり、予備知識として教えてくれたりするけれど、たくさんの宿屋がある王都となれば、自分で選んでくれ、ということであろう。


 そう考えれば、あの『乙女の祈り亭』と『荒熊亭』の時に、どちらも庶民用の宿なのに、ギルド職員がそれぞれ片方を推したというのは、問題が……。

 いやいや、あれは自分達が聞いたから、勝手が分からず困っているよそ者の若い少女達のためにと、よかれと思って教えてくれたのだろう。そういうことにして、深く考えるのはやめた4人であった。


 ともかく、4人でいくつかの宿を外から見て、外観、掃除や手入れが行き届いているかどうか、外に貼ってある料金表、出入りしている客層等、慎重に検討した結果、決めた宿である。

 これで外れを引いたなら、自分達の未熟を反省し、次回に活かせば良い。

 それに、いきなり一ヵ月契約を結んだりはしないので、外れであれば、さっさと宿替えをすれば済むことである。


 かららん


「いらっしゃいませ!」

 ドアベルの音を鳴らしながら4人が宿屋にはいると、受付カウンターから少女の元気な声がした。

 ……宿屋の受付カウンターはいつも少女?

 当たり前である。

 この世界、子供の死亡率が高いため、皆、子供は大勢作る。いや、別に死亡率が高いのは子供だけではないが、やはり子供の方が病の抵抗力が弱く、事故の場合も死にやすい。

 そして、男の子と女の子がいた場合、力仕事、汚れ仕事、危険な仕事、客と対面する仕事の4つの仕事があったとすれば、女の子をどの仕事に割り当てるか。

 ……考えるまでもない。


 受付を女の子がやらない宿屋は、娘がいなくて家族だけでやっているところだけである。

 人を雇うなら、若い女の子を雇うに決まっている。できれば、成人前の。その方が賃金も安くて済むし、その、アレである。……言うまでもない。

 そして、この宿屋の受付もまた、多分に漏れず、幼い少女の仕事であった。

「こ、ここに滞在しましょう! もう、ずっとここに住み着きましょう!」

 マイルが、眼をぎらつかせてレーナの腕を掴んだ。

「あ、あんた、何を……」


 そう、この宿の受付の少女は、5~6歳くらいの幼女であった。

 そして、その頭には、ふたつの耳が付いていた。

 いや、人間誰しも、耳はふたつである。

 しかし、その幼女の耳は、顔の側面ではなく、頭の上に付いていた。ちょこん、と。

 そう、俗に言うところの、『猫耳』であった。


「「「じゅ、獣人……」」」

「ゲットだぜ!」

 ひとりだけ、声が揃わなかった。

 それが誰とは言わないが……。


コミケットにて、アース・スターエンターテイメントの企業ブースにおいて『平均値』のグッズが販売されるようで……。(^^ゞ

サイン本(第1巻)

複製原画(サイン付き額装品)

タペストリー(『赤き誓い』入浴バージョン)

その他、他の作品(ノベル、コミックス、アニメ、声優アイドルユニット『アース・スタードリーム』等)のものもたくさん!

詳細は、アース・スターのwebにて。(^^)/


ううう、『平均値』のものだけたくさん売れ残ったらどうしよう……。


コミック版「私、能力は平均値でって言ったよね!」第5話、いよいよ本日公開です。お楽しみに!(^^)/

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「ハンター養成学校での出会い編が第1章、ティルス王国王都編が第2章よ。 >そして第10章あたりで王国の危機を救い、Sランクになる予定よ」 大丈夫?自伝ノート(黒歴史)書いてない?
[一言] 528~543話は、第10章だったっけ?
[一言] ヴァノラーク王国の王都、シャレイラーズ 洒落いら~ず
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