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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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147 夜なべで何を書いている?

「もうすぐ、次の町に着くわよ」
 小休止を終え、腰を上げたレーナが地図を見ながらそう言った。
 勿論、旅をするのだから、レーナ達も地図くらい持っている。でないと、すぐに道に迷ってしまう。
 しかし、地図とは言っても、現代日本で使われているようなものではない。
 何というか、RPGロールプレイングゲームの説明書に書いてある世界地図みたいなやつである。そう、あの、縮尺率無視、森と川と山しか描いてないようなやつ。
 だが、それでも三叉路を間違えずに進めるだけでも、地図を買う意味は大きかった。何しろ、道を間違えただけで簡単に死ぬような世界なのだから。

 というわけで、あの『料理は美味しいが、居心地の悪いお祝い』を何とか耐え抜いた翌朝、『赤き誓い』は早速出立したのであった。
 もう、『赤き誓い』がやるべきことは何もなかったし、そもそも、あれ以上あの空気には耐えられなかった。2組のカップルのいちゃいちゃを見せつけられて『甘酸っぺぇ~~!』とのたうつのも、メリザのどんよりどよどよとした顔を見せられるのも……。

 そもそも、この4人は、みんなそれなりに可愛いのに、なぜか全員が揃いも揃って『年齢、イコール彼氏いない歴』であった。
 過去は、皆それぞれ事情があったし、今は、とにかく早くAランクになりたいメーヴィス。Bランクを目指すレーナ。そしてお金を貯めたいポーリン。誰一人として、男などに時間を浪費するつもりの者はいなかったのである。
 ただひとり、マイルだけは、そろそろ男の子のお友達もいていいかも、と思っていたのであるが、旅の日々ではそれもままならず、そしてレーナの妨害工作が酷かった。……マイルはそれに全く気付いていなかったが。

 とにかく、そういうわけで、何度も礼を言う大将夫妻に押し付けられそうになった謝礼金を『退屈凌ぎの遊びで稼ぐつもりはないわよ』と突っ返し、大将夫婦、残念そうな兄弟、少し安堵したかのような顔のラフィアとアリル、そしてどんよりとしたままのメリザに見送られて、さっさと町を後にした『赤き誓い』一行であった。

「メリザさん、幸せになれるといいですね」
「大丈夫でしょ。大将と女将さんが、それとなく条件のいい男達の本職やら稼ぎやらを吹き込むって言っていたし。
 宿屋が付いてる若い美人なんだから……、というか、あの娘目当ての男がたくさんいるんだから、あまり贅沢言わなきゃ選り取り見取りなんでしょ。心配する必要なんかないわよ!」
 マイルとレーナも、何となく少し親近感を覚えていたメリザの幸せを願っているようであった。
 どこに親近感を覚えたかは、定かではない。


 そして夕方前。
 マイルのアイテムボックスのお陰で身軽な『赤き誓い』一行は、普通のハンターよりかなり移動速度が速いため、1日に40キロ以上進める。普通の旅人は30キロが精々であるから、いくら若いハンターとはいえ、少女の足としては破格の速度である。
 全く、アイテムボックス様々である。しかも、治癒や回復の魔法付き。

 そういうわけで、少々早めに次の宿泊予定の町に着いた一行は、いつものようにギルド支部に顔を出し、連絡ボードと依頼ボードを確認した後、宿を取った。
 この町の宿屋はどれも大差なく、料金が僅かに違うが、その分設備や料理等に違いがあるため、そこは個人の好みによるらしい。
 ま、普通はそうである。

 適当に選んだ宿で夕食を摂り、一日中移動して少し疲れたのか、身体清浄魔法でさっぱりした後、早めに休むメーヴィス、レーナ、ポーリンの3人。
 マイルは、いつものように、夜更かしをする。
 野外行動中以外は8時間きっちり眠る3人に対し、マイルは6時間も眠れば充分なのである。前世から、そういう生活パターンだったので。
 そして、光が漏れないように遮光シールドを張ってからライティングの魔法を使い、質の悪い紙と、ナノマシンに頼んで作って貰った「ボールペンのようなもの」をアイテムボックスから取り出すと、何やら書き物を始めた。

 最初は、この世界の皆が使っているように羽根ペンを使ってみたのであるが、いちいちインクを付けるのが面倒になったので、「万年筆のようなもの」を作ってみたのであるが、紙質が悪いためにペン先が引っ掛かったりインクがにじんだりして、散々であった。
 次に、簡単で堅実な「鉛筆」にしたのだが、やはり紙に引っ掛かるのと、いちいち削らなければならないのに、イライラしてしまった。
 ……マイル、短気過ぎである。
 いや、普段のマイルは結構忍耐強いのであるが、読書と書き物を邪魔された場合のみ、別人のように短気になる。それがマイルであった。

 そして遂にマイルが辿り着いたのが、「ボールペンのようなもの」であった。
 ナノマシンは、マイルが「自動車を作ってくれ」とか言っても、それはルール違反だとして受けてくれない。しかし、ボールペンはマイルが仕組みを知っているので、時間さえかければナノマシン抜きでもこの世界で作り出せる。なので、それは「この世界にはあり得ない物を作る」のではなく、ただ単に手間を省く、というだけのことなので、マイルの知識範囲内で作成可能な物を作るのはナノマシン的にはOKであるらしかった。
 今ひとつ、その境目がはっきりしないのであるが……。

 とにかく、そういうわけで、マイルは「ボールペンのようなもの」で書き物を続けていた。
 そしてそのボールペンのボールとチップ部分にオリハルコンとミスリルが使われていようと、これまたナノマシン的には大きな問題ではないらしかった。
 紙は、相手方に渡るものであるし、大々的に生産するつもりもないため、市販のものを使うしかなかった。質が悪く、馬鹿高いのであるが、それは仕方ない。
 そして日付が変わる頃、ようやくマイルもベッドへと潜り込むのであった。



 翌朝、朝食を済ませた後、『赤き誓い』一行は宿を引き払ってギルドへと向かった。
 何の変哲もないこの町に留まるつもりはなく、このままこの国の王都へと向かうつもりなのであるが、念の為に王都行きのついでに受けられる丁度良い依頼がないかと、最新情報の確認のためである。
 普通、小さな町では難度が高い依頼、珍しい依頼、面白そうな依頼等は滅多にない。ここは、小さな町はスルーしてさっさと王都へ向かい、王都でしばらく滞在する方が良いだろうとの判断であった。
 そして依頼ボードを確認した結果、やはり面白そうな依頼や割の良い依頼は無く、次の王都行きの商隊の出発まで数日ある上、護衛の募集は既に終わっていた。

「じゃ、このまま出発するわよ。今から出れば……」
「あ、ちょっと待って下さい!」
 レーナの言葉を遮るマイル。
「ちょっと発送依頼をしますから、少しだけ待って下さい」
 そう言いながら、普通のハンターに偽装するために背負っている荷物の中から、何やら包みを取り出したマイル。
「すぐ終わりますから!」
 そう言って、マイルは受付窓口の方へと駆けていった。いつもお馴染みの受注・完了報告の窓口ではなく、『赤き誓い』の面々には馴染みの薄い、依頼窓口の方へ。
「すみません、これ、ギルド定期便での発送をお願いします。ティルス王国の王都まで、書類の配送依頼です」

 そう、それは、ギルドが取り扱っている『配送依頼』であった。
 他の街に荷物を運ぶには、自分で運ぶか、商業ギルド経由で商人に依頼するのが一般的である。
 しかし、通常の商品ではなく、嵩張かさばらない書類や貴重品などの場合、ハンターギルドの定期連絡便での輸送を依頼する場合がある。但し、商人に依頼する場合に較べ、かなり割高になるが……。

 なぜ割高なのにハンターギルドに依頼するのか?
 それは、安全性が圧倒的に高いからである。
 商人に依頼した場合、いくら商業ギルドが仲介したとはいえ、受けるのは普通の商人である。中にはタチの悪い者もいるし、盗賊に襲われる可能性もある。
 しかし、ハンターギルドの定期便は、ギルドの書類を運ぶのが主な業務であり、襲っても金目の物が積まれている確率は低い。

 そして、重要なギルドの書類を輸送するのであるから、腕の立つハンターを充分な数、護衛に付けている。更に、もしハンターギルドの馬車を襲えば、それは大陸中のハンターギルドを敵に回したということであり、即座に、採算度外視での大規模な討伐隊が組まれる。周辺国全てにおいて。
 事件が起きた国、及びその隣接国の全てから討伐隊が押し寄せる。そしてそれは、犯人を捕らえ、皆殺しにするまで止まらない。ハンターギルドは、自分達を舐めてかかり、喧嘩を吹っ掛けてきた者を決して許さない。でないと、同様の事件がまた起きるからである。
『ハンターギルドには手を出すな』
 これを、犯罪者達の脳裏に刻み込むためには、予算も手段も惜しまない。
 それが、ハンターギルドなのである。

 そして、腕の良い多くの護衛を雇う上、馬車1台でしかないギルドの定期便は、当然のことながら積載量が限られる。しかも、商人の荷馬車と違い高速で飛ばすため、満載にするようなこともない。
 速くて安全で積載量がほんの僅か。
 便乗搭載の料金が高くなるのも当然のことであった。

「ちょっとお待ち戴けるかな?」
 マイルが受付嬢に包みを差し出そうとした時、後ろから声が掛けられた。
 マイルがその声の方へと振り向くと……。
「え、エルフ?」
 そう、ほっそりしていて背が高く、髪を伸ばした温和そうな顔立ちの、……そして耳が尖った、初老の男性。
 誰が見てもエルフだとしか思わないであろう、まさに『エルフの中のエルフ』である。

「うわ、うわわ! エルフさんです! 初めて見ました!」
「クーレレイア博士と何日も一緒だったでしょうが!」
 慌てるマイルの頭が、レーナによってはたかれた。
「あ、そういえば……」
 あまり耳が目立っていなかったクーレレイア博士のことを、すっかりエルフだという認識から外してしまっていたマイルであった。
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