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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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117 再会

 小規模商隊と『赤き誓い』は、何事もなく、無事王都へと到着した。
 ギルドで護衛依頼の完了手続きをして報酬を受け取り、その後、ヘルモルトでの仕事の完了報告も行った。報酬は既に現地で受け取っているので、報告と書類手続きだけである。完了証明はヘルモルトのギルド支部で貰っているので、問題ない。

「よくもそう毎回毎回、難易度の高い依頼をきちんとこなせますねぇ……」
 受付嬢のレリアが、書類手続きをしながら、呆れたような顔をしていた。
「はい、これで手続き完了です。帰る前に、ギルドマスターのところに顔を出して下さいね」
「「「「は~い!」」」」

 ギルドマスターのところに顔を出すと、笑顔で迎えられた。……強面こわもての笑顔というのは、少し、いや、かなり不気味である。
「よくやってくれた! 前回に引き続き、厄介な依頼を片付けてくれて、大助かりだ!
 地方の支部には『さすが王都支部だ』と思わせられるし、他の若手パーティも、新人に負けてはいられないと、奮起してくれるだろう。いやぁ、ありがたいよ、本当に!
 それに、王宮からも、下手をすると獣人達との揉め事になる可能性があった事件を穏便に解決してくれたと、陛下からの感謝の言葉を賜ったぞ! 十数年振りのことじゃないかな、うちの支部が陛下から直々にお言葉を賜るなど……」
 どうやら、王宮もギルドも、最新情報を入手しているらしい。続報を持った伝令がかなり早く着いたか、もしくは、ロブレスに乗ったチェルシーが追加の報告書を携えて伝令を追い、途中で手渡したのかも知れない。
 そういえば、領都ではロブレス、チェルシー、そしてクーレレイア博士も見掛けなかったな、と思う4人であった。


「帰ったよ~」
「お、お姉さん達、無事だったんですか!」
 宿に戻って、いつものようにドアを開けながら受付カウンターの方に声を掛けると、レニーちゃんが大声で叫びながら駆け寄って来た。
「心配させないで下さいよぉっ! 予定の日を過ぎても全然戻ってこないから、心配したじゃないですかっ!」
 涙目で食って掛かるレニーちゃんをマイル達が何とか宥め、ようやく落ち着いたレニーちゃん。
「あ、みんなにも知らせなきゃ!」
 レニーちゃんはそう言ってカウンターに戻ると、何やら木札を取り出し、入り口の外側に掛けた。

 ハンターは、いつ行方知れずになるか分からず、遺体が発見されれば幸運な方、というやくざな稼業である。有名なAランクパーティならばともかく、駆け出しのCランクパーティが消えようがどうしようが、誰も気にしたりはしない。なので、大袈裟な、と思い苦笑しながらも、『赤き誓い』の4人は、何気なくその掛札に書かれている文字を読んだ。

『本日、浴室全区画解放、お湯の使用制限なし。小銀貨3枚』

「「「「…………」」」」
 がっくりと肩を落とす4人。
 レニーちゃんは、やはりレニーちゃんであった。
 その日の夜は何度も給湯に駆り出され、代わりに食事と宿泊費は無料にさせた。
 それによって入浴料自体としては儲けが減っても、宣伝と集客効果を考えれば、充分にペイするはずである。
「お姉さん達、いくら無料だからって言っても、食べ過ぎです!」
 本気喰いのマイルとレーナに、レニーちゃんの泣きが入っていたが。


 『赤き誓い』の4人は、翌日、やや遅めの時間にギルドへと向かった。
 長期の依頼を終えて早々に次の依頼を受ける、というわけではない。
 昨日は依頼完了処理とギルドマスターとの話くらいしかしていなかったので、現在の依頼状況とか、不在の間に何か知っておくべき情報が流れていたりしないか、とかの情報収集のためである。
 そういう理由で、長期間不在にしていたハンターとか休養中のハンターは、用がなくともギルドには時々顔を出すものなのである。

「あ、来た来た!」
 マイル達がギルドにはいると、奥の方から、聞き覚えのある声がした。
「クーレレイア博士?」
 そう、発掘現場からロブレスに乗って、領都へと先行したクーレレイア博士であった。
 そしてその後ろには、何やら見覚えのある面々の姿が。
 そう、報告のため王都へと向かった、調査隊を始めとする、獣人達に捕らえられていたハンター達である。

「ど、どうして王都へ?」
「領主様に報告した後、ロブレスちゃんに乗せて貰って、王都への報告隊を追いかけて貰ったのよ。
 で、途中で合流して、そのまま王都へ向かい、無事報告を完了、というわけ。
 ロブレスちゃんは、私を降ろした後、チェルシーちゃんと一緒に領都に引き返したわ」
 さすがにロブレスに乗って王都に舞い降りる、というのは無理がある。賢明な判断だろう。
 そして、王宮やギルドが最新の情報を正確に把握していた理由も判明した。正確に、とは言っても、マイル達が調整した、という条件付きであるが。しかし、嘘は入っていないので、問題はない。

「あ、あの、俺達の武器が回収された、と博士から聞いたんだが……」
 クーレレイア博士の後ろから、声が掛けられた。
 皆を代表して話しかけたのは、調査隊の護衛を請け負っていたパーティのリーダーであった。
 彼らにとっては死活問題なので、話に割り込むのも無理はない。

「ええ、向こうと話がついたので、返して貰いましたよ。はい!」
 何もない空中から、どさどさ、と現れた、武器と防具。
 マイルの非常識については、逃走の時にたっぷりと見せられていたため、今更驚くような者はいない。遠巻きに見ていた、他のハンター達も含めて。

「ああっ、俺の愛剣だ!」
「良かった! 先輩の形見の、ブレストアーマーが……」
 皆、思い入れのある武具が戻り、嬉しそうであった。
「感謝する。そこそこの蓄えはあっても、パーティの全員が武具を買い直すとなれば、大ダメージだからな。中には、買い直せるだけの蓄えがない者達もいる。救出して貰ったことといい、君たちには、本当に感謝している」
 護衛リーダーの言葉に合わせて、他の者達も一斉に頭を下げた。

「で、武具を奪還してくれたことに対する礼金だが……」
 こういう時の相場は、武具の査定価格の2~5割である。
 勿論、奪還する相手の強さ、運んで戻る道程の長さや危険度等、色々な条件によってその比率が変わる。
 今回の場合であれば、いくら話し合いで済んだとはいえ、それはあくまでも結果論。数十人の獣人達の居留地へ危険を覚悟で踏み込んでの奪還であるから、4~5割になっても全然おかしくはなかった。

「いらないわよ」
「「「「え?」」」」
 ハンターとして当然の権利である礼金の受け取りを放棄するレーナの言葉に、借り物の武器を自分の武器に付け替えていたハンター達から驚きの声があがった。
「護衛依頼を受けていた調査団のパーティはともかく、その他のパーティは、森での稼ぎはなかったんでしょ。うちは充分稼げたから、いいわよ、それくらい」

「い、いいのか? 本当に?」
 護衛リーダーが答えるより早く、後ろから、他のハンターがそう問い返した。
 護衛依頼を受けていたパーティは元々堅実な活動をしており、ギルドの口座にも、そこそこの蓄えがあった。そのため、武具が戻った今、自分達はそうお金に困っているわけではないが、どうやら他のハンター達はそうではないらしい。自分達がどうしても礼金を払うと言い張れば、彼らもそれに合わせなければならなくなる。

 本当は、いくら強いとはいえ新米の少女パーティに施しを受けるなど、中堅のハンターとして許容できることではない。しかし、自分達が我を通せば、財政状態が苦しいらしい他のハンター達が苦境に陥ることになる。それもまた、同郷のハンター仲間として看過し難い。
「く、う、うぅ……、す、すまん……」
 不本意ながらもレーナの申し出を受けたリーダーに、状況を察したレーナが提案した。
「じゃあ、礼金の代わりに、その分、困っているパーティがいたら助けてやってよ。その依頼金の前渡し、ってことでどうかしら?」
 相手が守るかどうかの保証など全くない、気休め程度の口約束である。しかしレーナ達は、大きく頷くハンター達が、何となくその約束を守ってくれそうな気がしていた。

 レーナ達の遣り取りを聞いていた他のハンター達やギルド職員は、感心していた。
 自分達に余裕があるからと、他のハンターを気遣う、その心遣い。
 人によっては、それを「自らの当然の権利を放棄する、馬鹿のやること」と嘲笑うかも知れないが、この場にいる者で、そう思う者はひとりもいなかった。
 もし自分がその立場だったら。
 窮地に陥ったとき、温かい言葉で助けられたら。
 そう考えると、とても馬鹿にしたりはできなかった。

 『赤き誓い』
 ハンター養成学校の卒業検定で一躍名を売った、美少女揃いの期待の新人。
 その戦闘能力だけでなく、約束は必ず守り、依頼達成率100パーセント。そして他のハンター達に対する優しさと心遣い。
 彼女達の評判は、ますます上がるのであった。

 その時ギルドにいた者は、皆、笑顔であった。ハンター達も、ギルド職員も。
 儲けを逃して苦虫を噛み潰したかのような顔をしているポーリンと、何度もお礼を言われて照れ隠しに仏頂面をしているレーナ、そして何やら『覚悟完了!』というような顔をしたマイルを除いて……。

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