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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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115 帰路

「じゃ、ギルドへの報告は、さっきの打ち合わせ通りにやるわよ。領主への報告は、クーレレイア博士がやってくれるから、私達からは多分必要ないだろうし。
 もしかすると、ギルドへの報告も、形だけで済むかもね。多分、博士の領主への報告にギルドマスターも立ち会うと思うから……」
 歩きながらのレーナの言葉に、皆、頷いた。

 先程の、クーレレイア博士を交えての打ち合わせ(古竜3頭も聞いていた。チェルシーは、ロブレスの調子を確かめるよう言いくるめて、不参加)で決めた「領主への報告内容」は、次の通りであった。
 獣人達は、古竜の指示で遺跡の調査をやっていた。理由は、古竜達の研究のため。獣人達はただ、古竜への義理と、僅かな報酬で手伝っていただけで、侵略等の他意は全くなかった。
 遺跡はただの石造りの建物の廃墟で、空想画が描かれている程度であった。『外れ』として、獣人達は既に撤収準備を始めている。これから現地へ向かっても、恐らくもう誰もいないと思われる。
 最初は、獣人達に発見されて再び戦いになりかけたが、そこに古竜が現れて、獣人達との戦いは中断された。そして、調査隊の装備は、全部返してくれた。
 ……嘘はない。確かに。

 戦いがあったことは、全面的にカットした。
 人間側に危機感や猜疑心を煽るだけであるし、そもそも、少女4人が数十人の獣人、そして3頭の古竜を相手に戦って勝利を収めたなどと言っても、誰も信じないであろう。下手をすると、依頼報酬を支払って貰えなくなる可能性すらある。いくらクーレレイア博士が口添えをしてくれても。そして博士もまた、報酬なしで嘘吐き呼ばわりされ、信用に傷が付くかも知れなかった。
 また、もしその報告をそのまま信じて貰えた場合、更に厄介なことになる。間違いなく。
 数十人の獣人と3頭の古竜を相手にして勝てる、後ろ盾のない4人の少女。
 放っておかれるわけがない。この国からも、他国からも。

 幸い、チェルシーは墜落後の戦いは見ていなかった。墜落前も、現場に到着し、ただのワイバーンが通過したと見せかけて偵察するつもりが、人間の少女達が竜種に襲われているのが見えたので咄嗟に攻撃しただけなので、特に何かを見たというわけではなかった。なので、あの後に誤解が解けて和解したのだ、と言われれば、そうなのか、と思うしかない。
 しかし、自分が稼いだ時間がみんなに勝利をもたらしたという大殊勲が『なかったこと』にされるのは可哀想なので、いつか、何らかの形でお返ししようと決める『赤き誓い』の4人であった。

 クーレレイア博士は、依頼主に対する義務よりも、種族間の関係悪化阻止を優先した。当然である。
 また、見かけの数倍(もしくは、数十倍)の年齢であるクーレレイア博士は、ハンター達のしきたりについても、ある程度の知識があった。そして勿論、『犯罪者以外のハンターの、過去や能力等の詮索や口外は御法度。それは最低の行為であり、たとえハンター以外の者であっても、それを犯した場合、以後の一切の依頼の拒否、そして場合によっては、「なぜかその後、その依頼者の姿を見た者は誰もいなかった」等の残念なことになることがある』ということを知っていた。
 そして、博士は『赤き誓い』を敵に回す気は更々なかった。

「……ところで、マイル。古竜を倒した、アレは?」
 そう、その『ハンターのしきたり』は、パーティ仲間には適用されなかった。
 仲間の実力を知らなければ、まともな連携など取れはしないのだから。そして、信用していない者とパーティを組むことなど、まともなハンターのやることではない。
 そしてレーナのその質問に対する、マイルの答えは。
「実家の、秘伝の技です!」
「「「…………」」」

(まずい、疑われている!)
 さすがのマイルも、それに気が付いた。
「あ、あの、実は、『火事場の馬鹿力』というものがありまして……」
 マイルは、人間の心と肉体の関係や、心のリミッターが外れた時に魔力や肉体の潜在能力が云々、と、色々説明した。
 それでも不審そうなみんなに、マイルはこう説明した。
「ほら、レーナさんも経験してるじゃないですか! 昔、盗賊を倒した時に!」
「「「あ……」」」
「そして、メーヴィスさんの『真・神速剣』。あれも、気を練ることにより、自分の肉体の能力を100パーセント出し切る技、つまり、意識して『火事場の馬鹿力』を出している状態なんですよ!」
「あ!」
 どうやら、少し信じて貰えたようである。あとひと息!

「そして、『火事場の馬鹿力』は、普段自分の意思では出し切れない潜在能力を出し切ることなんですが、それと似た、『火事場のクソ力』というものがありまして……。
 これは、『馬鹿力』が『元々自分が持っていた力を解放する』ということに対し、『元々持ってはいなかった、あるはずのない力』を出すものです。
 その力の源泉は完全には解明されていませんが、友の危機を救うために敵の前に立ちはだかった時に発現する場合が多いことから、その力は『友情パワー』ではないかと言われています。自分の命を盾にしてでも護りたい、どうしても護らねば、という、友への熱い想いが強烈なエネルギーとなって(ほとばし)り……」

「はぁ、もういいわよ!」
 レーナは、マイルへの追及を諦めたようであった。
(…………勝った!)
 新世界の神のような、邪悪な嗤いを浮かべるマイルであった。
 結局、『リミッターを外して本気になれば、3頭の古竜に勝てる』という事実そのものが、そもそも既に常識を外れているのだということに気付かずに……。


「……というわけです」
 ハンターギルド、ヘルモルト支部の2階。言わずと知れた、ギルドマスターの部屋である。
 例によってマイルが報告し、それを聞いたギルドマスターは大きく頷いた。
「うむ、詳細は、既にクーレレイア博士から聞いている。その内容と完全に合致するので、全く問題はない。既に領主様からも、博士の報告を基にして算出した報酬を預かっている。これだ」
 そう言って、ギルドマスターは引き出しから布袋を取り出すと、テーブルの上にドン、と置いた。
「「「「おおおおお!」」」」

 獣人と古竜を降し、領地を守った、というならば、これくらいは出して当然である。
 しかし報告では、獣人達と古竜には元々侵略の意図はなく、話し合いをしただけ、となっているので、それから考えると、この金貨の量は、かなりの大盤振る舞い、『太っ腹』である。
「それと、領主様からの伝言だ。『大儀であった』。以上だ」
「何だか、偉そうですね……」
「いや、事実、偉い人だから!」
 マイルの感想に、メーヴィスが突っ込んだ。
 更に、ギルドマスターもフォローする。

「領主様は、貴族としての悪い所はひととおり全て兼ね備えておられるが、そう悪い方ではないのだ」
((((いや、それ、十分『悪い奴』だよね!))))
 やはりこのギルドマスター、本当は領主が嫌いなんじゃなかろうか、と思う4人であった。
「とにかく、領主様が平民に労いの言葉をお与えになるなど、10年近く前に、お子様を命懸けで守った者にお与えになって以来だ。それくらい、感謝されているということなのだから、素直に受けてくれ」
 そう言われると、悪い気もしない。報酬額も随分張り込んでくれたようだし、領地軍の秘密兵器であるはずのロブレスを、惜しげもなく出してくれた。
 実戦訓練のつもりだったのかも知れないが、せっかくのワイバーンと騎乗員を、十分な訓練を積ませて役に立てる前に出してくれたということは、4人もそれなりに評価していた。

「分かったわよ。ここは、ありがたくお言葉を受けておくわ。そう領主様に伝えて頂戴」
「うむ、そう言って貰えると、助かる」
 レーナの言葉に、ギルドマスターも少し安心した様子である。
 そして、やはり領主への直接の報告は必要ないとのことであり、4人はその後、1階で王都行きの護衛依頼がないか確認した。
 幸いにも護衛依頼の受諾待ちの小規模商隊があり、ギルド員がすぐに商隊の責任者を呼んでくれて、うまく話が纏まった。今回の件は広まっていないが、どうやら、前回のことを知っている商人だったらしい。でないと、若い少女4人では不安に思う者が多いはずである。
 とにかく、これで徒歩移動ではなく馬車に乗れて、しかもお金が稼げる。
 商隊は出発待機していたのであるから、勿論、出発は翌日の早朝であった。


「旨いですなぁ! いやぁ、こんな良い護衛が雇えて、運が良かったですな!」
「いや、全く!」
 マイルの料理は、商人達に大好評であった。
 例によって、安くて軽くて嵩張らない携帯食シリーズ、堅パンと乾燥クズ野菜のスープを出されそうになったので、それを制止して、マイルがちょこっと狩ってきた猪を調理してみんなに振る舞ったのである。
 アイテムボックスのものは使わない。それだと、自分達の持ち出しになってしまうからである。
 今狩れば、それは「護衛任務遂行中に狩った物」なので、商人側に提供することにあまり抵抗がない。
 それでも商人達は「それでは申し訳ないから、別途、料金を払う」と言ってくれたので、護衛料金に上乗せして貰う、ということで話がついた。
 水も、節約する必要がなく、使い放題。商人達が言うには、こんな快適な移動は滅多にない、とのことであった。

 馬車が4台で、商人がそれぞれひとりずつ。御者を雇うような贅沢はできず、商人が御者も務める、零細商人の寄り合い所帯である。マイル達『赤き誓い』を合わせても総勢8名の、小規模商隊であった。
 先頭馬車の荷物の一部を他の3台に少しずつ移し、『赤き誓い』は全員が先頭馬車に乗っている。何かあった時の初動対処が重要なので、各馬車にひとりずつ、などという馬鹿げたことはしない。そんな配置だと、瞬時の対応が遅れ、対処もバラバラになってしまう。
 それに、ひとりずつバラバラだと、話もできず、退屈である。馬車の中で、王都までずっとひとりきり、というのは、勘弁して欲しい。

 王都への旅は、順調であった。
 マイルが、時々考え込むような様子を見せることと、それに気付いていながら、余計な詮索はせずに、そっとしておいてくれる3人の仲間の心中を除いて……。
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