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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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112 遺跡

 ひと息入れた後、獣人達を遠ざけて、3頭の古竜と『赤き誓い』プラス、クーレレイア博士の、5人と3頭の話し合いが行われた。場所は、あの大穴の近くである。古竜達は建物にははいれないので、屋外なのは仕方ない。
 マイル達と向き合って座るベレデテスは、戦いによる高揚が去った今、落ち込んでいた。それはそれは大きく。
 そして、若さ故か、古竜としては浅慮で血の気が多い、あのウェンスが大人しくしているのは、かなりの重症である。
 一方、シェララは平気な顔をしていた。自分の身に危険が及びそうだと思ったらさっさと降伏したことと言い、結構したたかなようである。

「まず、最初に確認します。
 獣人達に命じて、ここで作業をさせていたのは、あなた達、古竜だということで間違いありませんね? そしてそれは、あなた達3人の独断ではなく、あなた達一族の総意である、と」
『そうだ』
 マイルの質問に、素直に答えるベレデテス。どうやら、正直に喋ってくれるらしかった。律儀なのか、大した話ではないからか、それとも、人間如きに知られても問題ないと考えているのか。
 ……後で口を塞げば良い、とか考えてはいないことを祈るばかりである。

「その目的は、何ですか?」
 話し合いというか訊問というか、とにかく、『赤き誓い』側の代表は、マイルが務めることになっていた。他に、適切な質問ができそうな者がいなかったのである。
 必要に応じてクーレレイア博士も質問に加わるが、今はまだマイルに任せて傍観している。
 古竜側の代表は、最年長らしきベレデテスという古竜である。他の2頭は、今のところ、積極的に会話に加わるつもりはなさそうであった。

『ただの発掘調査だ』
 ベレデテスはそう答えるが、「嘘を吐かない」ということと「真実を喋らない」ということを両立させることは可能である。だからこそ、こういう場合には質問者の知識と見識、そして力量が問われるのであった。

「目的物は何ですか?」
『……遺跡だ』
 回答が少し遅れた。そして、答えになっていなかった。遺跡の発掘調査の目的が、遺跡。
 確かに嘘ではないが、それは、明らかにはぐらかした答えであった。
 しかし、そのような答えでマイルが納得するわけがない。
「何を探していたのですか? それは財宝ですか、何かの情報ですか、道具ですか、魔王ですか、邪神ですか、魔物ですか、武器ですか、魔法の品ですか、機械ですか」
『…………』
 黙り込むベレデテス。どうやら、言いたくないところを衝かれたようである。
「そこを喋って戴かないと、お話になりませんよ。人間側が、獣人達、しかも後ろに古竜が一族丸ごと付いている獣人達が、人間の領域に侵入して何やら怪しげな事をやっている、ということを、どう受け取ると思いますか? 侵略行為だと思ったら、全面戦争が始まりますよ。獣人と古竜対人間の、凄絶な殺し合いです」
『我々には、そんなつもりはない!』
「つもりがあろうと無かろうと、あなた達がやっているのは、そういうことなんですよ。
 ある日突然、人間とエルフとドワーフが徒党を組んで、古竜の縄張りに無断で侵入。そして、何やら怪しげな工事を開始。様子を見に行った古竜達が襲われて、次々と行方不明。それでも、人間達が説明もせずに『悪気はないから』と言えば、手出しせずに放置して貰えるのですか?
 もしそうなら、すぐにでもその旨を人間達に触れて回りますけど。古竜の縄張り内で何をしても構わない、との言質が取れた、と。あ、今、その旨の証文を書いて戴けますか?」
『な、何を馬鹿なことを……』
「あなた方がやっている事と全く同じですよ?」
『…………』
 黙り込む、ベレデテス。
「あなたの返事が、全面戦争の引き金を引くか、それを回避できるかを決めるんです。さぁ、よく考えて答えて下さいよ」
『………………』
 とても長く感じられ、しかし実際にはほんの数十秒に過ぎなかったであろう時間の後、ベレデテスがようやく口を開いた。
『……「失われた文明」だ』
「え?」
『この世界には、遙かなる昔、とても進んだ文明を持つ国があったと言われている。ただの伝説に過ぎないが……、いや、伝説に過ぎないと思われていたが、それが……』
「それが?」
 再び言葉を途切れさせたベレデテスを、マイルが促す。
『実在したらしき証拠が発見された』
「ええええぇ~~っ!!」
 横で、クーレレイア博士が大声で叫んだ。
「ま、ま、まさか、超古代文明、『先史文明』の実在の証を発見したと言うの!」
「し、知っているのか、クレレイ!」
「おかしな略し方をしないでよっ!」
 つい、習性でネタに走ってしまったマイルが、博士に怒られた。

「先史文明。それは、遙かな昔に栄えたと言われる、伝説の国なのよ。
 その国では、人々は家の中で座ったままで世界中のことを見聞きすることができて、海の底に潜ることも、空を飛ぶことも、あの空の星々を手に入れることさえできたと言われているわ。
 飢えも戦いもない、まさに神々の住まわれる天上界のような国であったと……。
 人間は世代交代が早いから伝承が失われているけど、寿命が長い種族、古竜やエルフ、精霊とかの間では、まだ伝承が残っているのよ……」
 クーレレイア博士の説明の、『空を飛ぶ』という部分で、顔を引き攣らせたレーナ。
 そしてマイルは。
「い、いるんですか、精霊! よ、妖精は?」
 変なところに食い付いていた。
「それ、今、関係ないでしょ!」
 そして、博士に怒られた。

「とにかく、大発見なのよ、それが本当だとすれば!
 ねぇ、どんな証拠なの! どこで発見されたの! 状況は!」
 口から泡を飛ばして言い募るクーレレイア博士に、古竜ベレデテスも困惑顔であった。
『し、知らん。我々は専門の学者ではないのだ。我々古竜があちこちで直接調査をするわけには行かぬため、代わりに各地で調査をさせておる魔族や獣人達の作業状況を確認したり、何かを発見した場合に確認に行ったりするだけの、ただの連絡員に過ぎぬのだからな。
 そして今回は、子守まで押し付けられ……、いや、何でもない!』
 ベレデテスは、シェララに睨まれて、慌てて言葉を濁した。

『とにかく、ここの発掘調査を任せている獣人達から発見の報告があり、我と見習いのウェンス、そして族長と長老に強請って同行をゴリ押ししたシェララの3竜で確認に来た。ただそれだけなのだ。そして、確認の結果、ここは「ハズレ」であると判明した』
「ハズレ?」
『そうだ。ここは、「失われた文明」よりもずっと新しい時代のものであり、ただ単に「失われた時代」を神格化して崇める者達が作ったものに過ぎなかった。発見された神殿らしき広間には、壁面にわけの分からぬ想像図が描かれていただけで、何の意味もなかった。
 もう、ここに用はない。獣人達は引き揚げさせる。それで、もう問題はないであろう!』
 ベレデテスは、それで話を纏めようとしたが、そうは問屋が卸さない。

「それって、ここでの用は済んだ、というだけですよね? じゃあ、今度は、どこか別のところで同様のことをやるんですか? また密かに侵入して、近付く者を捕らえて?」
『…………』
「そして、獣人だけでなく、魔族も暗躍している、と?」
『………………』
 マイルの突っ込みに、余計な情報を漏らしてしまったことに気付き、黙り込むベレデテス。
「そして、何のために、その『失われた文明』とやらの遺跡を探しているのですか? その目的は……」
『知らん! たとえ知っていたとしても、そう何でもかんでも喋れるわけがないであろう!』
 確かに、その通りである。捕虜にも黙秘権というものはあるし、正直に喋ってくれているのは、戦いを回避するために、『ここまでは喋っても問題ないだろう』と判断したことを喋ってくれただけなのだろう。それに、もしかすると本当に知らないのかも知れないし。下っ端が全てのことを教えられているとは限らない。
 古竜の見た目とその喋り方から、何となく偉そうに見えてしまうのであるが、先程の話からも、どうやらこの古竜は大した立場ではなく、使い走りの下っ端、まだ若造らしかった。見習いと、興味本位でついて来ただけのお嬢様竜は、言うまでもない。

 これ以上の情報収集は無理っぽいし、古竜を捕らえて領主様に引き渡す、というのは、これまたちょっと無理っぽい。それに、本当に古竜の一族を敵に回したりすれば、大惨事である。
 物事は、始めるタイミングより、引き際を見極める方が100倍重要である。マイルは前世で見聞きしたニュースや故事、戦訓等から、そのことをよく知っていた。そして今の自分達の任務は、ただの一介のCランクハンターの分際で、独断で古竜を捕らえたり、種族間戦争の引き金を引いたりすることではなかった。決して。
 そういうのは、国の偉い人が決めることであり、それなりの立場の人か、それにふさわしい報酬を貰った者がやるべきことである。少なくとも、数十枚の金貨を貰った4人の少女がやるような仕事ではない。

「……分かりました。では、その『発見した遺跡』とやらを見せて戴き、その後私達は引き揚げます。そちらは、もうここには用がないのであれば、可及的速やかにここから撤収する、ということで。できれば、王都から兵士とかがやって来る前だと、面倒なことにならずに済みます。
 領主様への報告は、問題が大きくならないように適当に端折って行いますが、多分王宮にも報告が行きますから、また同様のことが起きる可能性については言及しておきます。そうすれば、出会い頭にいきなり戦闘開始、ということが防げるかも知れませんし。それでいいですか?」
 ベレデテスは暫し思案した後、頷いた。
『それで頼む』
 マイルが左右を見ると、レーナ、メーヴィス、ポーリン、そしてクーレレイア博士も頷いた。
 博士は、どうやら『領主に雇われた調査員』としてより、研究者として、そしてエルフ一族としての立場で、そう判断したようであった。まぁ、当然と言えば当然のことであろう。

「では、シェララさん、案内をお願いします」
『え、私?』
 急に振られて驚くシェララであるが、マイルとしては当然の判断である。
 いつ翻意して攻撃されるか分からない古竜3頭の前で地下に潜るのも、戦闘力が高いベレデテスとやらと一緒に潜るのも御免である。ここは、一番弱そうで、かつ人質、いや、竜質として一番効果があるシェララを連れて行く、という選択肢、一択である。
 マイルは、念の為、無詠唱でみんなにバリアを張っておいた。
「では、行きましょうか……」
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