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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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104 そして再び森へ

「領主様は、決して悪いお方ではないのだ。まぁ、貴族としてはごく普通のプライドと選民意識をお持ちだが、領民のことはそれなりに大事にして下さる……」
(それって、ただ単に『家畜の世話をしている』というだけじゃないのかなぁ。乳の出が良くなったり、肉付きが良くなったりするように……)
 ギルドマスターの話を聞いてそう思ったマイルであるが、勿論口に出したりはしなかった。

「そして勿論、領地の運営と発展と御自分の贅沢のため、お金にはきたな……、貪欲……、収集意欲を持っておられる」
 ギルドマスター、実は領主様が嫌いなんじゃないか、と疑う4人であった。

「そこで、お前達への指名依頼、というわけだ。獣人達の居場所を知っており、そこに潜入、脱出した実績があり、もし襲われても生還できるだけの実力があるお前達へのな」
 領主から指名依頼を受けるなど、ハンターとしては光栄の至りである。それは、実力を認められたということであり、かつ、信用度の証となる。これ以上の栄誉など、国や王族からの指名依頼くらいしかない。
 普通のハンターであれば、ギルドマスターのその言葉に狂喜して、ふたつ返事で引き受けるであろう。
 そう、『普通のハンター』であれば……。

「で、依頼内容は?」
 レーナは、冷静にギルドマスターに確認した。
「うむ、獣人達の動静の確認、発掘物の確認、もし可能であればその奪取、だ」
「「「「…………」」」」
 黙り込む『赤き誓い』の4人。

「あの、ひとつ、お聞きしてもいいですか?」
「ああ、何だ?」
 マイルは、ギルドマスターに尋ねた。
「それって、略奪行為で、私達、盗賊になっちゃいませんか?」
「え……」
 マイルの指摘に、きょとんとするギルドマスター。
「い、いや、あそこは我が国の領内だから……」
「でも、管理されているわけではない、ただの森ですよね? それに、あそこで採取や狩りを行った者は、取得物を自分の物にできますよね? なら、獣人達が採取した物は、彼らの物になるのではないのですか?
 ハンター達を捕らえるのは犯罪行為ですけど、それは国からの使者が来てから、抗議するなり当事者の引き渡しを求めるなりするんでしょう? 他の獣人達が行っている採取活動に何か問題でも? そして、それを強奪するということは、犯罪行為なのではないのですか?」
「…………」

 他国の埋蔵資源を国の指示で勝手に大量採掘することは、大問題であり、外交問題となる。
 しかし、民間の者が他国で小規模な素材採取や宝探しをすることは、別に問題とはならない。それらを禁止していてはハンターが国を跨いで活動できなくなる。
 今回、獣人達はやや大規模な発掘を行っているようであるが、それは『何かを探すために掘っている』のであって、『資源を大量に採掘している』というわけではなかった。なので、その結果発掘された『ほんの少量の採取物』を強奪した場合、誰が悪人かというと……。

「そ、それはだな……」
 思わぬ指摘に、ギルドマスターの言葉は歯切れが悪い。
「ちょっと、仲間内で相談していいですか?」
 マイルはそう言うと、ギルドマスターの了承を得て、仲間達と共に隣室の会議室へと移動した。

 そして数分後、戻ってきた4人は再びギルドマスターの部屋で席に着いた。
「相談の結果、お引き受けすることにしました」
 マイルの言葉に、ほっとした様子のギルドマスター。
 当たり前である。領主からの指名依頼を断られるなど、前代未聞である。領主の機嫌を損ねるどころか、この支部が『領主からの指名依頼の仲介を新米ハンターに断られるような、無能かつ信用されない支部』として、王都を始め、近隣のギルド支部やハンター達の笑いものになってしまう。

「但し、『奪取』というのは、余程の必要性がない限り、お断りします。元々の依頼でも、もし可能であれば、とのことなので、問題はないと思いますし」
 余程の必要性、というのは、それが危険物であったり、獣人達、もしくはその仲間達の手に渡ることが非常に望ましくない『何か』であった場合のことである。
 マイルも、ファンタジィ小説はよく読んでいた。発掘の目的が『魔王の復活』だとか、『邪神の封印を解く』だとかいうパターンである可能性も考慮しているのである。そして勿論、マイルから1年近くも色々なお話を聞かされ続けている、メーヴィス、レーナ、ポーリンの3人も……。

 みんながこの指名依頼を引き受けることにしたのは、勿論、領主からの指名依頼というのはBランクへの昇格ポイント的に美味しく、パーティの信用度向上にも繋がるからでもあるが、一番の理由は、『赤き誓い』が断った場合には別のパーティが受けることとなり、そのパーティが消息不明になったり、獣人達との殺し合いになって大事になるのを心配したからであった。それに関して自分達には何の責任もないと分かってはいても、あまり寝覚めの良い話ではない。
 そして、オマケの理由として、「没収されたハンター達の武器を取り返してきてあげよう」というものがあった。
 ……お人好しなのか、仕事を舐めているのか。
 まぁ、しかし、それが『赤き誓い』なのであった。

「あ、ああ、勿論それで問題ない。元々、領主様も本気で新人ハンターの少女4人に財宝が奪取できるなどとお考えのわけではないだろう。だから、『もし可能であれば』という前置きをつけられたのだろう」
 ギルドマスターは、何とか話が纏まりそうだと安堵したが、大事なことを言い忘れていたことに気が付いた。

「あ、それとな、クーレレイア博士が同行されるので、護衛とお世話をしっかり頼むぞ」
「な、何よそれ! 聞いてないわよ!」
 吠えるレーナであったが、メーヴィス、ポーリン、そしてマイルの3人は落ち着いたままであった。それ以外のどんな理由で、博士だけが王都行きから外れ、そしてここに同席しているというのであろうか。それに気付いていなかったのは、レーナひとりだけであった。
 発掘現場や発掘物の調査や鑑定をさせるのに、学者を同行させるのは不思議でも何でもない。
 エルフであり学者である、恐らくある程度重要人物であろうクーレレイア博士を危険に晒しても良いのか、という疑問はあるが、そもそも最初の調査隊に加わっていたということは、多少の危険よりも調査や研究の方を取るタイプの学者なのであろう。

「あと、領主様が、援軍を出して下さるらしい。まだ準備が整っていないらしく、お前達が出発した後に出発するらしいが……」
 本当に援軍なのか、『赤き誓い』が財宝を持ち逃げしないように監視するためのものなのか、分かったものではない。4人の頭に浮かんだ言葉は、『督戦隊』であった。
「役に立つのかしら……。で、どれくらいの人数を出してくれるって?」
 レーナの問いに、ギルドマスターが、少しバツが悪そうに答えた。
「……ひとりだ」
「「「「はあぁ?」」」」
「……だから、ひとりだ……」
 確定した。
 ただの監視員である。邪魔になることはあっても、役に立つことはないであろう。
 それも、別行動ということは、『赤き誓い』に何かあっても助けることはなく、ただ結果を見届けて報告するだけなのであろう。いない方がずっとマシであった。

(……振り切ろう)
 4人は、同じことを考えていた。

 そしてその後、簡単な擦り合わせを行い、マイル達はすぐに出発することとなった。
 本当は、1日くらいゆっくりしたかったのであるが、今回は時間が大事であった。
 今頃は多分、あの魔術師により、完治とは言えないまでも、数人は何とか戦える状態になっているであろう。そして勿論、発掘現場への伝令もとっくに出発しているはずである。
 あの獣人達がまだ足が折れた者を抱えて動けず、発掘現場が知らせを受けて混乱し、そして救助要員として何名かが派遣されるであろう、「警備が手薄になるであろう混乱期間」。侵入するのに、そこを見逃す程、馬鹿ではない。
 博士も、それを見越して昨夜のうちに準備は済ませているようであった。
 そして、全ての物資がマイルの『収納』にはいっている『赤き誓い』も、勿論即座に出撃可能である。元々、このまま王都へと出発するつもりであったため、宿も引き払っている。

「じゃ、行くわよ!」
「「「おお!」」」
「……おぉ!」
 レーナの掛け声に、3人の返事。そしてそれにやや遅れて、クーレレイア博士の声が続いた。


「……メーヴィスさん、これ……」
 町を出た少し後、マイルがメーヴィスに、そっと手を差し出した。
「これは……」
「はい、アレの追加分です。念の為に……。使えばまた補充しますから、あまり躊躇わずに使って下さいよ。一度使ってみないと、いざという時にぶっつけ本番、というのもアレですし……」
「分かった。ありがたく使わせて貰おう……」
 そう言って、メーヴィスはカプセル型の3つの容器を受け取り、ポケットに収めた。
 これで、合計5個となった、怪しいカプセル。
 早く使ってみせないと、マイルがどんどん補充してきて、ポケットがパンパンになってしまう。そんな予感がするメーヴィスであった……。
お知らせです!(^^)/
8月5日(金)、遂に本作品『私、能力は平均値でって言ったよね!』の、コミカライズ作品が連載開始! しかも、何と、タダで読めるという!!(^^ゞ
アース・スター エンターテイメントのwebで、『コミック アース・スター』をクリックすればOKです。ねこみんと先生の、「原作よりも面白い」と評判のコミック版、よろしくお願いします。(^^)/
アース・スターノベルの公式ツイッターでは、ねこみんと先生の可愛いイラストによるカウントダウンが実施中!
毎日、新しいイラストでカウントされるのかな?
全部ダウンロードして、画集を作ろう!(^^ゞ

更に、同日、8月5日(金)1900から、ニコ生で【第3回】アーススターニコ生【コミック・ノベル】が放送されます。
編集さん、宣伝担当さん、たまに営業さんも交えて、作家さんも呼んで、声優さんの司会で色々な本音の話や裏話とかを……。
今回のゲストは、女性作家の、あの方が!
私からのメッセージも、声優さんが読んで下さる予定です。
……まさか、編集長が読んだりしないですよね!(^^;
漫画家・小説家・編集者・声優になりたい方は必見かも…!?
+注意+
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