むかしむかし今は昔……
具体的に言ってしまうと、今から580年程前……
あるところにとても疑心暗鬼で素直じゃないお姫様がいました。
お姫様は物事を深く……
そう複雑に考えてしまうくせがあり、一度考えはじめると疑心と思考の渦に飲み込まれてしまうのでした
「大切なお皿を割ってしまったわ、これじゃ執事のセバスティアンやパパに怒られてしまう」
その日も、お姫様は王様が大切にしている高価なお皿(現代の日本円にして約2900万円程)を割ってしまい一人、頭を悩ませていました。
「難しいわ、とっても難しい。いったいどうすれば、パパは許してくださるかしら、普通に誤っても許してくれないだろうし……」
困り果てました。いつもピカピカに王様自身の手によって研かれていたその皿を割ってしまったのでありますから、そうそう父は許してくれないでしょう。
「困ったわ、パパは怒って私を島流しにしちゃうかも! そんな田舎暮し嫌だわ!」
そう思ったお姫様は恐ろしくなり、お皿を隠してしまいました。
――ある日、お姫様は不思議な夢を見ました。
真っ黒な衣に大きな杖をもったお婆さんがお姫様を睨み続けるといった夢
「お前さんはどうして、そう深く悪い方向に物事を考えるんだい?」
お婆さんがそう言います
「何事もうまく考えるべきだわ、深く……思慮深く考えた末の行動が成功を生むのですよ」
お姫様は言い返しました。
「そんな可愛げのないお前さんにはこれをやる!」
お婆さんが叫びながら空中に投げた真っ黒な指輪はお姫様の薬指にスポッと音を立てながら飛び込みました
ジャストフィットだね★
「アブラァァケェタァブゥーラァァァ!」
お婆さんがネイティブな発音で何やら呪文を唱えました。
「指輪が…抜けないわ!?」
お姫様が指輪を引っ張っても抜けません。
「この指輪をつけている者は数日で死に至る、具体的に言うと7日間。168時間であの世行きじゃ」
そうです、お姫様はお婆さんに呪いをかけられてしまったのです。
「そんなのってないわ」
お姫様がそう叫ぶといつもの部屋でした。
――もちろん、薬指には呪いの指輪が……
それからたくさんの街に御布令が出されました。
“姫様の薬指にはめられた呪いの指輪を外せた者には褒美をとらす by王様”
こうして御布令によって集められた猛者がお姫様の薬指にはめられた呪いの指輪をとらんと奮闘するのです
まず、最初にやってきたのはキコリでした。
王様は言います
「キコリよキコリ、オヌシは如何にしてこの呪いの指輪を外す?」
「はい王様、この鋸で姫様の薬指を根元から落としてしまえばいいんです」
残念ながらキコリは、王様から島流しの刑にしょされました。
次にやってきたのは手品師でした。
王様が言います
「手品師よ手品師、オヌシは如何にしてこの呪いの指輪を外す?」
「はい王様、私めが10秒数えるとこの指輪は指ごと消えてなくなります」
残念ながら、手品師も王様から島流しの刑にしょされました
こうして何人ものチャレンジャーが現われましたが結局誰一人として呪いの指輪が外せませんでした
最後の日、もう王様もお姫様も諦めていました。
「呪術師よ呪術師、オヌシは如何にしてこの呪いの指輪を外す?」
しかしながら誰も外せませんでした。
「もう私は死んでしまうのだわ」
お姫様は悲しみにうちひしがられました。
そこへ小さな女の子、最後のチャレンジャーでした。
場内にいた皆がその小さな挑戦者を笑いました。
屈強な戦士、有名な呪術師や、手品師がとれなかった指輪をこんな小さな女の子がとれる筈もない。
皆がそう思い笑ったのです
王様は事務的に言います
「少女よ少女、オヌシは如何にしてこの呪いの指輪を外す?」
少女は言いました
「はい、石けんとお湯をタライにいれてもってきてください」
タライにお湯と石けんが入れられて運ばれてきました
「ジャブジャブ」
少女は愉快そうに泡をたてて遊びます
「何をしているのですか」
お姫様は問いました。
「今からあなたの呪いの指輪をとってみせます」
そう言いお姫様の指を石けん水で洗います
するとどうでしょう! 呪いの指輪は見事にとれました。
「こんな簡単に抜けるとわ! いや天晴れじゃ!」
王様は喜びました。
お姫様も喜びました。
「お姫様、熟考するのはいいことだと思います。でも時として思考は身体をがんじがらめにして正しいアクションをできなくさせます。」
少女は言いました。
「難しく考えすぎずともいいのです、お婆さんは指輪に死ぬ呪いがかかっているとは言いましたが、外れなくなる呪いがかかっているとは一言もいってないのですから」
それから数日、お姫様は考えました。
あの日私の呪いの指輪を外した少女はいったい誰だったのかを……
答えは出ません
「さっそくパパに謝らないと」
お姫様の片手には割れたお皿、それを片手にお姫様はどこかへ向かっていました
向かう場所はもちろん……
お分りですよね?
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