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ルーラァ  作者: 水遊び
近衛城兵見習い
33/50

第15話 揺れない馬車

 目が覚めたら目の前におっぱいがあって、こともあろうに掴んでいた。

 ベッドから転がり落ちるように出て、誰も見ていないだろうかとあたりを見渡す間抜けぶりを発揮し、近衛城兵の服を見つけて自分が裸だと知った。


 昔の出来事が頭をよぎる。

 目が覚めたら見知らぬ女性、しかも、ばけも、いや、見目麗しくない女性、まさに悪夢だった。

 振り返ると金髪の美少女にホッとしたが、やはり見た事のない顔だ。

 昨夜の記憶もない。

 アサリの酒蒸しで酔ったか?

 いや、それは無い。

 ただ眠っただけのはず……たぶん。

 目を覚ましそうな雰囲気に、慌ててはだけたシーツをかけてやった。


 目が覚めても見つからないように服まで這ってゆき、座りながら身に着け始めたが後ろが気になる。

 首を伸ばすように伺うが、足の方にいる為に顔が見えない。

 逆にこちらも見えないことに安堵して、タイツを履き、下シャツに腕を通すと、肌触りが違う事に気が付いた。

 夜の間に洗濯をしてくれたのだろうが、寝ている間に脱がされたのか、自分で脱いで、この子といい事をしている間に持っていかれたのか……。

 考えるのは止めよう、うん。


「おはようございます」

 いきなり後ろから声がかかって、体が跳ねるほど驚いた。

 ベッドに座っているのは、金髪に黒目ながら人形のようにかわいい女の子、胸元の両手はシーツを掴んでいる。

 そのあまりの色っぽさに、返事をする事も忘れて目をそらした。

 急いで服を身に付け、剣帯を閉め、ガントレットをはめ、たぶん落ち着いた。


「お前は誰だ?」

「リサでございます」

 落ち着いてはいなかった。

 1オクターブ高くなった声に、簡素な答えが返ってくる。

 リサって、ああ、染めていた髪を戻したのか。

 そう言えば、いや、よく覚えていない。

 人形のような顔だと思えるから本人なんだろうけど、金髪になっただけでまるで別人だ。


「昨日は、その」

「嬉しゅうございました」

「そ、そうか」

 笑顔はかわいいし、胸元が気になってしょうがないし、意味深な言い回しに返す言葉が見つからない。

 ましてや、昨日何があったのか、何が嬉しかったのかなど、とてもじゃないが聞ける雰囲気じゃない。


「その髪の方がきれいだ」

「ありがとうございます」

 話題を探し、女の子はほめるべし、の有名な格言を思い出したが、元が元だけに、照れたしぐさもむちゃくちゃかわいい。


「飯、食いに行くか?」

「もう少し、お話がしとうございます」

 そう言いながらシーツを少しずらす。

 このままお話?

 俺は服を着ていて、この子は……う、嬉しすぎる。

 顔が熱い、鼻の下も伸びているに違いない。

 しかし、そんな事はどうでもいい、このまま見るだけで、いや、その先も……。


 だが、直感が稲妻のように走り、おかしいと告げる。

 女を泣かすより、泣かされる方が圧倒的に多い男だけが持つ直感。


『こんなにモテるはずがない』

 悲しいかな、この直観は度々俺を救ってきた。

 振り向くと同時に扉に向かって突進、体当たりをかまして開けた。

 手ごたえあり。

 素早くあたりを見渡して、他に人がいない事を確認する。

 うずくまる男は、予想通りレイバンだった。


「立ち聞きとはいい趣味をしているじゃないか」

「申し訳ございません。 お食事の準備が出来ております」

 何事も無かったかのように立ち上がり、普通に声を操っている。

 おまけに、うまい言い訳だ。


「俺の許可なしに、部屋に人を入れるな」

「申し訳ございません。 あの、リサはお気に召しませんか?」

「許可しないとは言っていない」

「かしこまりました」

 よ、よし、俺偉い。

 これで今夜は……グフッ。


 ここは日本じゃない。

 当たり前だが、考え方も日本じゃない。

 レイバンは、姫を救う為なら娘を犠牲にする事もいとわない、いや、むしろ尊い事だと思っているふしがある。

 そして、俺を魔道師様とあがめているとしたら、目的は俺とのつながりを強固にすること、子種が欲しいと断定していいかもしれん。

 勿論、リサがいやいやなら問題だ、だが、本人も同じだとしたら……。

 据え膳くわぬは男の恥、いい言葉だ。

 しかし、子種が欲しいという相手にホイホイやるのもどうなんだ?

 いやいや、あの可愛さは捨てがたい。

 そう言えば、魔道師様は生涯独身とか、侍だったんだな。

 俺は侍じゃない、男の子だぜ。

 だが……。


 結論が出ないまま、いや、わざと出さないで食事を終えた。

 スイフが来ているというので屋敷を出たが、キヨモリがまだ来ていないと聞かされ、出ばなをくじかれたかっこうだ。

 しかし、そのおかげでナセルの問題があった事を思い出し、気分転換に再び脇の門に向かう事にした。

 朝の街は雲海に覆われていた、城壁すら雲の中だ。

 たしか、陸と水との温度差が霧を産むとか何とか。

 まあ、そんな事はどうでもいい、雲海の彼方に稜線、その上に青い空、浮かぶ雲、贅沢な眺めだとつくづく思う。

 ずっと左手、太陽が見える下あたりの雲が触手のように伸びている。

 ドーマ川に流れ込む支流の1つだろう。

 太陽が左後ということは、夕方もまた違った景色を期待できそうだ。


 支流?

 待てよ、待て、待て。

 そうか、この手があったか。



「スイフ、行くぞ」

「はっ」

 振り返ると、騎馬隊が20人近くに増えていた。

 昨日の事があったからだろうが、どうせ爺さんの指示だろう。


 再び馬を駆り、森を抜け、霧の街中をゆっくり進み、川べりの大きな倉庫に案内された。

 馬を下り、中に入ると馬車と2台の薪馬車、50人近い男達が最高の礼をもってかしずいていた。

 昨日の成果がちょっとはあったようだが、スイフを横に従え、後ろには騎馬隊が整列した。


「全員、顔を上げよ」

 いかつい男たちの顔、なんとなく友好的な気がするのは気のせいか。

 端にチェリーの顔も見える。


「ガノイン、今日はずいぶん殊勝だが、何かあったのか?」

「おめえが、ルーラ様が助けてくれたからな、礼儀はつくすさ」

 スイフがあわてて間に入ろうとするのを片手で止める。

 後ろを振り向き、目線で隊長を止めた。


「なんの事だ?」

「作業小屋をぶっ壊したのに、俺達に責任はないと言ってくれた事だよ」

「ああ、あれか、本当のことを言っただけだ」

「それでもだ。 俺は、仲間の為ならおめえにだって頭を下げる。 そういう事だ」

 ぶっきらぼうな物言いだが、いいねえ、男だ。


「船底1枚、下は地獄の心意気か?」

「知ってるじゃねえか」

「船は船頭に任せろ、って言葉も知ってるぜ」

「ははは、気に入った。 おめえに使われてやる、何すりゃいいんだ?」

 まあ、うまく行くときゃ、こんなもんか。


「世界で1番早い船を造る」

「ほーっ、大きく出るじゃねえか」

 しかし、腕組みしながら話すとは、不遜な態度ってやつだな。

 スイフがひやひやしているぞ。


「まあな。 丸太と風の魔石を利用したものをナセルと言う。 簡単に言えば台風を起こす装置だ」

「それで、あんなことになったのか?」

「そういう事だ。 今回は改良を加えるが、これを船に乗せ、風の反動で前に進む」

「そんなんで進むのか?」

「ああ、まずは構造を説明し小さな船で試すが、俺はここまでだ。 大きな船はお前達でやってもらう」

「1つ聞きてえ?」

「何だ?」

「昨年の戦争じゃ、俺達の船が沈められた。 敵は討てるか?」

「大きな船が見たこともねえ速さで進むんだぜ、出来た波だけで沈むだろうよ」

「いいねえ。 野郎ども聞いたな? 昨年の敵を討つぞ!」

「「「「おーーーー」」」」

 大きな声が、建物の中を満たした。

 なるほど、海の男の誇りってやつだな。


「まだるっこしい説明はいいから造るぜ」

「それもそうか、全員立て。 ガノイン」

「おう、みんな準備だ。 かかれ!」

「「「「おーーーー」」」」

 全員が一斉に外に飛び出してゆく。

 皆行かなくてもいいだろうにと思ったが、中が空洞の丸太と小型のボートまでかついで持ってきた。


「いいか、改良点は風の魔石を外に付ける事だ。 蓋付きの箱に、中の節をくりぬいたバンブーを刺す。 丸太の中央部に細い穴を開け、この竹を刺し込んで出来上がりだ。 穴を前から後ろに向かって斜めに開けるのがポイントだぞ」


 一応説明はするが、誰も聞いちゃいない。

 いや、出来てゆくから聞いてはいるんだろう。

 しかも、早くもボートに縛り付け、箱の隙間から空気が漏れるから駄目だとか、箱の外から魔石のスイッチを操作できるようするなど、改良までしている。

 後は、霧が晴れるのを待つばかりとは、こりゃ、俺の出番は終わったかもしれん。



「キヨモリが来たようです」

「ちょうどいい、ガノインを呼べ」

「はい」

 スイフに指示を出し、キヨモリを迎える。


「遅くなり、申し訳ございませんでした」

「いや、いいタイミングだ」

 キヨモリが持ってきた鉄の板ばねは、思っていたより細い気がする。

 半弓といったせいだろうが、手で曲げようとしてもビクともしないから、とりあえずこれでやってみる。


「ガノイン、揺れない馬車を作る」

「ほう、面白そうだな」

「まあな。 まず薪馬車をくっつけて4輪にする。 その上にこの鉄の板ばねを乗せ、がたつく程度に止める。 更に車輪を取った馬車の箱を乗せ、飛び出さない様に手すりを付けて完成だ」

「分かった。 おい、バタ角4本、いや、6本持って来い。 そっちの馬車の車輪を取っ払え。 2台の薪馬車を1台にする、ケツ同士をくっつけろ」

 角材が運ばれ馬車の土台が出来、板バネを挟んで箱を乗せる。

 ずり落ちない様に手すりがはまり、瞬く間に馬車が出来上がった。

 あんまり簡単に分かったというので少し心配したが、なかなかどうして大したもんだ。


「よし、キヨモリ、乗るぞ」

「はい」

 馬車は4人乗りで、両側から乗れるが扉は無い。

 キヨモリと向かい合って座るが、板バネが気になるのか、しきりと足元を見ている。

 床があって見えないんだが、そこは気分の問題だろう。


「よし、引いてくれ。 ただし、歩くよりもゆっくりだ」

「おう」

 威勢のいい掛け声と共に馬車が動き出す。

 ガタリときて、ゴロリ、ゴロリといったところだが、当然、揺れは無い。


「こ、これは……」

「揺れないだろう?」

「は、はい。 しかし、これは、まさか」

「驚く事はない。 お前の作った板ばねが地面の衝撃を吸収しているんだ」

「なるほど、しかし、信じられません」

 予想通りというか、いい反応だ。


「少し早くしてくれ、歩くくらいだ」

「倉庫から出るぞ」

「ああ」

 まあ、入り口までもたないとは思うが。


 車輪の音がガラガラと変わり、案外大丈夫かと思ったが、入り口近くの段差でガタン、バキンと割れた。

 急に揺れた為、壁に頭をぶつけたキヨモリだったが、それすら気にならないのか馬車から飛び降りた。


「箱をどけてくれ、早く!」

 我を忘れて指示を出している。

 馬車を下り、ガノインにうなずいてやる。


「よし、箱を取るぞ、持ち上げろ」

「おう」

 4人で軽々と持ち上げられ、どかされると同時にキヨモリが覗き込んだ。

 折れた板バネをしげしげと眺め、ぶつぶつと何かを言っている。

 しばらくそっとしといてやろう。


「チェリー」

「はい」

「揺れない馬車の権利などいらん。 作るまでには数多くの実験が必要だから、馬車職人を集めて協力させろ。 そして、国中の馬車をゆれない馬車にしてやれ」

「はい」

 やっぱり頭のいい女性は違う。

 かなり無茶な話をしているはずなのに、聞く態度を見ているだけで理解しているのが分かる。

 チェリーならやりとげてしまう、そんな予感さえする。


「4つの城門街に支店を作り、本店と支店をこの揺れない馬車でつなぎ、人や物を運ぶんだ。 毎日、決まった時間に走らせることで、乗合馬車、乗り合い貨物とせよ」

「はい」

「おっと、その前に侯爵専用の1人乗り馬車を作れ。 御者は後ろにでも立たせておけばいいし、軽くなる分早目に出来るだろう」

「かしこまりました」


「マロンはどうしている?」

「集まった人は予定していた人数の10倍にもなりましたが、牛の方もかなりの数になり、子供達に1日1杯のミルクは出せております。 羽なし鳥の方はなかなか集まらず、卵はまだ孵化を目的としております」

 羽なし鳥は鶏の事だったな。

 言ったのは宴会の時だろうから覚えちゃいないが、栄養状態の改善とは我ながら感心な話だ。

 それにしても、まだ数日しかたっていないはずだが、さすがだな。

 あれ? 牛ってのは出産しなくてもミルクが出るのかな?

 まあいい、マロンに任せておけば間違いはないだろう。


「さすが、お前の夫は桁が違うな。 あとな、多くの人が集まると腕自慢もいる筈だから、そいつらを集めて護衛ギルドを作り、馬車の警護に当たらせろ」

「分かりました」

「ついでに、商社として取引のある店だが、商業ギルドを作り加盟店としろ。 資金、人員の援助などをしてやれ。 人員はマロン、資金は足らなければレイダーに言え」

「はい」

 さてと、こんなもんかな。


「キヨモリ」

「は、はい」

 ほっておくと、いつまでたってもそのままでいる気がして声をかけた。

 慌てて振り向いたキヨモリの両手には、折れた板バネがしっかりと握られている。


「1つ確認をしておく。 この依頼を受けると他の依頼を断る事になるが、どうする? 受けるか?」

「はい、お受けいたします」

「いいだろう、受け取れ」

 爺さんからもらった金貨を渡してやる。


「これは?」

「報酬の前渡しだ。 この馬車は子供や年寄りまで安全に運ぶことが出来る。 それは分かるな」

「はい」

「1000年続くキヨモリの名はすごいと思うが、どうせなら、これから1000年の礎を作ってみせろ」

「あ、ありがとうございます」

「俺の金じゃねえ、礼なら、じい、侯爵様にいいな」

「はい、必ずや、ご期待に応えて見せます」

 板バネともども袋をささげ持っていたが、中身はまだ見ていない。

 その時の顔も見たいところだが、まあ、この場で確かめるような不作法はしないだろう。


「ルーラァ?」

「あん?」

「揺れない馬車、俺っちも1枚かませろや」

 後ろからガノインが聞いてくる。


「馬鹿言え、海の民が陸走ってどうするよ。 心配しなくても、もっと役立つもんを教えてやるよ」

「ほんとに役立つのか?」

「ああ、ばっちりよ。 いいか?」


「あの、私はこれで」

 始めようとしたところで、今度はキヨモリが割り込んできた。


「待て、お前も聞いておけ。 役に立つはずだ」

「しかし、知識は大事な権利です」

「あのな、確かに俺は知識を持っている。 だが、俺はナセルの船も、揺れない馬車も作れないんだぞ。 お前が聞いてくれなければ、宝の持ち腐れだろうが」

「そういう問題では無い様な気がしますが」

「気のせいだ、ちゃんと聞け」

「は、はい」

 堅物なのはいいが、ちょっと度が過ぎる。

 ガノインと足して2で割るとちょうどいいかもしれん。


「薪馬車を浮かせて車輪を回るようにしろ」

「おうさ」

 すぐに薪馬車が持ち上がった。

 4人で持ったままだが、まあいいか。


「車輪をこう回してだな、木端を当てると、シャー、となって削れるな」

「当たり前だろうが」

「それだ、その当たり前が大事だ。 いいか、削れるという事は切れるという事だ。 木と木でも切れる。 なら車輪を鉄にしたらどうなる?」

「どうなる?」

「もっと切れる」

「なんじゃそりゃ、それのどこが便利なんだ?」

 はは、こりゃしまった。

 この言い方だとそうなるな。


「刀を素早く振り回せば、木が切れる。 車輪は素早く回っているから、これに歯を付ければ、木が切れる」

「なるほど、そいつぁ便利かもしれん」

「とりあえず、薄くて大きくて丸い鉄板に、ギザギザの歯を付けてみろ」

「分かった、おい、炉に行って火を入れてこい」

「へい」

 何とも行動力があるな。

 次はキヨモリだな。


「お前はもっと小さいやつがいい」

「はい」

 呆けた顔で聞いていたキヨモリに話を振った。


「硬くて薄い鉄なら鉄が切れるし、木を削る様に研磨することも可能だ」

「なるほど」

「チェリー」

「はい」

「宝石のダイヤモンドがあるだろう」

「はい」

「原石を削って宝石が出来るが、その時に砂のようなクズが出来るからもらってこい」

「はい」

「そのダイヤを鉄の刃に付けると、お前の作った固い鉄も簡単に切れる」

「まさか、いや、失礼しました」

「いいさ、試してみろ。 ただし、このダイヤ、石のくせに燃えるからな。 水をかけながら切れよ」

「分かりました」

 よし、今度の説明は完ぺきだ。


「そうだ、歯車は知っているか?」

「水車で使うやつですか?」

「それだ、工夫は必要だが、勝手に回る砥石や丸のこが出来るぞ」

「なるほど、それは思いつきませんでした」

「ついでに、粉ひきで使う杵を鉄に変えれば、相槌が出来る。 お前は必要ないだろうが、弟子たちが独立する時の餞別くらいにはなるだろう」

「なるほど、有り難う御座いました」

 よーし、これでひと段落とするか。

 後は丸のこで丸太を縦に切り、何枚も板が出来る所を見せれば終わりだ。


「休憩にするぞ」

 ガノインの大きな声が響く。

 仕事も早いが、休憩も早い。

 まあ、やる事をやりゃ、どうでもいいか。


 休憩で出てきたのが海鮮スープだ。

 魚や貝などが入った木の椀が出てきた。

 なるほど、仕事の進み具合ではなく、これが出来た時が休憩というわけか。

 所変われば品変わるというが、色々あるもんだな。

 ふと後ろを振り返ると、ずっと立ちっぱなしだった騎馬隊も座って御相伴に預かっているようだ。

 スゲーとか、伯爵さまは違うとか、そんな話が漏れ聞こえてくる。

 褒め言葉を聞きながらの食事は最高の気分だ。

 しかし、それを邪魔する奴が居る。


「ルーラァ様、お助け下さい」

 飛び込んできたのはレイバンだ。

 執事が自ら来るとは何事かと思うが、ドタドタ走るから砂埃が立つ。


「どうした? 騒々しい」

 まったく埃が入るだろうが。


「侯爵様が城に行くとおしゃって」

「は?」

「ですから、馬車に乗って城に向かうとおっしゃって、止められません」

「何があった?」

「分かりません。 先ほど本家の者が来て、急に」

「ったく」

 何でジジイは食事の邪魔ばかりするんだ?

 俺に恨みでもあるんじゃねえのか?


 後ろを振り向くと、騎馬隊のメンバーが急いで食べている。

 その気持ちは、とってもよくわかる。

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