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七十二歳のハーレム

若いころはよかった。七歳上のお姉さんは、私に優しくしてくれ、私はその人を好きになったのだった。それが初恋の相手である。
 その人と付き合ったのは、高校生の頃だ。お姉さんは従姉である。昔から、私に優しくしてくれた。
十三歳の時の私は、当時、二十歳のお姉さんの、容姿というものに、何か感じるものがあった。それが思春期という奴なのかもしれない。私の頭の中は、お姉さんのことだけで埋め尽くされていた。それが、何年も続き、私は我慢できずに、お姉さんに告白したのであった。お姉さんは独身だった。だから、快く、そのことを受け取ってくれたみたいだ。最初、お姉さんは驚いてはいたが、嬉しそうだった。それは、告白した後の話で、お姉さんは、幼い時から私を溺愛しており、私が成長するにつれて、私のことが好きになっていったと言ったので、ずっと私のことを考えてくれていたから、告白を待ち望んでいたから、嬉しそうだったのだろう。お姉さんは美人であったのに、独身であった理由も、私のことを考えてくれていたからだと思う。
お姉さんは綺麗だったが、悲しいことに、今現在、お姉さんは七十九歳になる。そして、八十歳の誕生日も、もう少しだ。私としては信じることができないが、私自身も、七十二になったのだ。それは仕方ないことだろう。だが、お姉さんは病気になってしまっている。病気は、癌だ。もう長くない。

 彼女と出会ったのは、高校生の時だった。
お姉さんと付き合い始めて、少し月日が経ったところだった。彼女は、教室の隅で窓を眺めている私に話しかけてきた。大抵、窓を見ている男子に話しかけるというのは、タブーである。何故なら、それは窓を見ている奴は、友達ができなく、いじめにあって心を痛めているのを、どうにか窓を見て誤魔化そうとしているのに、それに話しかけるというのは、それの邪魔をすることになるので、してはいけないという暗黙の了解があるからだ。それを破ってまで、私に話しかけてきたのだ。何の用で話しかけてきたのか私は忘れてしまったが、確か、どうでもいいことだった。だが、彼女は私にいつも話しかけてきた。とうとう、私は彼女を好きになってしまったのだった。私は屑であると思う。その自覚はある。お姉さんが私の愛するべき人なのに、私は彼女に告白してしまった。「好きだ」、と言った。嘘はなかったが、それは駄目だった。彼女は、「私も、貴方のことが好き」、そう言った。私と彼女は付き合うことになってしまった。私は二股をしてしまう。
 その彼女も、今や七十二歳。信じられない現実がそこにはあったが、私も七十二歳なので、それは仕方ないことである。

 少女と出会ったのは、私が二十歳のことである。私は成人したので、当時、高校生であった彼女を、少女と呼ぶことにする。少女は夜道を歩いていた。塾帰りで遅くなったのだ。そして、それを諮ったかのように、少女はチンピラ集団に襲われた。それを私は助けたのだった。チンピラ集団に、ボコボコに殴られながらも、私は少女を助けるのに必死だった。
少女は、チンピラが去った後に私に「ありがとう」と言った。それから私と少女との、恋が始まるのだった。少女は私について、深く知ろうとした。それならば、私が二股をしているという真実をはやく伝えるべきだったかもしれない。
 そして、ある日少女は私に告白をした。私は断ることができなかった。それに対して、喜ぶ資格も、断る資格もないのだが。
 そんな少女も、もう六八歳。十分に婆だ。そんな私は、昔はハーレムと言えるものをつくりあげていたのだと思う。私が三股人間になってしまったことは、チンピラから助けた少女と付き合って、その、一年後ぐらいに全員にばれてしまう。だが、それを知っても、三人は、私を愛してくれた。そして、三人の中もよくなっているように思えた。私のせいで三人が恋敵になってしまっているのに対しては、罪悪感を覚えるが、それでも仲良くやってくれるのだから、優しさのある人に私は囲まれている。それは幸せなことだ。

 それは、あまりにも突然で、信じられないことだった。七九歳のお姉さんが死んだ。八十歳までは生きると思っていたが、死んでしまった。もしかしたら、とうとう死んだという表現が正しかったかもしれないが、私には信じられないことだった。長くないとは思っていたのに驚いている私がいた。問題になったのは遺産相続だった。私は四人暮らしをしていた。子供はいない。全てが私の恋人だった。その恋人達にお姉さんの遺産というものを渡すわけにはいかないという、そんなことを言っていいほど私は正しい生き方をしていなかった。だから、私はお姉さんの遺産を二人に分けてあげることにした。

 それは、偶然ではない。彼女が死んだ。死因はわからない。変死だ。何故死んだのだ。彼女は病気一つしていなかった。しかし、ここで、こうして彼女は死んでいるのだ。残されたのは、六八歳の少女。否、元少女と言うべきか、その元少女と私だけが、残された。

 六八歳の元少女は、私を呼んだ。刃物を持っていた。元少女は言う。
「私は、最初から、あの人が嫌いだったの」
「あの人・・・」
それは、変死した彼女のことだった。
「お前が殺したのか?」
「ええ、そうよ」
何故だか私にはわからなかった。何故、彼女を殺す必要があったのかを、私は死んでも理解することはできないと思う。
「最初から決めていたの」
「何を?」
「最後は貴方と二人になるってこと」
「そうか。でも、何故、今」
「お姉さんは優しかった。でも、あの人は嫌いだった、でもお姉さんは死んだ。だから」
「最初からそう思っていたのか?」
「そう、これから、私と二人きり」
「でも、今は爺と婆じゃないか」
そうすると、少女、元少女は、目の色を変え、私に刃物を突き付けた。否、突き付けたと言うよりは、突き刺したと言うべきか。

「生まれ変わったら、二人だけの甘い恋をしようね」
 惚れた腫れたで、老いて死んで、悲惨な結果を招いてしまった。だけど、それでよかったのかもしれない。
恋は永遠じゃない。

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