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宝箱に入れて贈りもの(ブタのポルキーニョ①)

作者:れむあないむ
フィロの指には、魔法の指輪がはまっています。うらやましいからといって、ポルキーニョが借りたとしても、魔法が使えるわけではありません。ポルキーニョは、ただのブタです。
「庭の花壇きれいだね。いろいろな花が咲いてる」
「ようこそ、ポル。花壇をほめてくれて、ありがとう」
 フリルの付いたスカートを両手で少し持ち上げながら挨拶をします。少女らしい快活な声と愛らしい笑顔で、ポルキーニョを出迎えます。
 花壇は、フィロがこだわって手入れをしていました。季節ごとにいろいろな花が咲いていて、いつもポルキーニョを楽しませてくれます。
「さあ、中へどうぞ。紅茶とクッキーをごちそうするわ」
 フィロの家に遊びに来たポルキーニョは、フィロが入れてくれた紅茶とクッキーをおいしくいただきながら、しばらくおしゃべりをして楽しく過ごしました。
 それから、ふとたずねました。
「その指輪は、フィロの宝物なの?」
 紅茶を注いでくれたフィロの指には、いつも指輪がはまっていました。小さな赤い宝石が付いた魔法の指輪です。
「そうよ、私の魔法の先生からもらったの。だから宝物ね」
「いいなあ」
 ポルキーニョはテーブルに置かれたクッキーをかじりながら、うらやましそうに鼻を鳴らしました。
挿絵(By みてみん)
「ポルも、魔法使いになりたいの?」
 フィロは、手を伸ばしてポルキーニョの鼻をなでました。魔法使いになるには、たくさんの勉強が必要です。
「ちがうよ。おいらも宝物が欲しいと思ったんだ」
「ポルキーニョには、宝物はないの」
「ない」残念そうに鼻を鳴らします。
「どんな、宝物が欲しいの?」
「すごい宝物」
 ポルキーニョが大げさに「すごい」と言ったので、フィロは声を出して笑いました。それから、紅茶を一口飲んで落ち着くと、ポルキーニョにたずねました。
「すごいだけでは、わからないわ。もう少し、詳しく言ってみてちょうだい」
「うーん」
 詳しくと言われても、ポルキーニョにだってわかりません。困り果てて、鼻からため息がもれます。
「宝物、見つかったら教えてちょうだいね。きっと、見つかるわよ」
 フィロが、優しい声でなぐさめます。
「うん、そうする」
 でも、宝物なんてどこにあるのでしょう。誰かから、貰うもの? 見つけるもの? 作るもの?
 ポルキーニョはフィロに「ごちそうさまでした」と言うと、困った顔をしながら、とりあえず外で宝物を探してみることにしました。

 道沿いの木々の葉が、そよ風に揺れています。外は晴れていて、とても気持ちの良い日でした。心の中まで浮き立ちます。ポルキーニョは、スキップしながら周りを見回しました。
「宝物落ちてないかな?」
 残念ながら宝物は落ちていませんでしたが、道の向こうに動く宝箱を見つけました。
 フワンです。いつものように車輪の付いた大きな宝箱を引っ張りながら、ふわふわとポルキーニョの方へやってきます。この道は、フワンが毎日散歩をしている道でした。
挿絵(By みてみん)
「やあ、ポル」
 フワンは風に揺られながら、ふわふわと言いました。
「ねえ、フワン。宝物のことで聞きたいことがあるんだけど」
 挨拶もしないまま、ポルキーニョはいきなりたずねました。
「いいとも、いいとも。ぼくの宝箱は空っぽだけど、今までに見てきた宝物の思い出話ならたくさんあるからね」
「違う、違う。おいらが言ってるのは、自分の宝物が欲しいってこと」
 ポルキーニョは、フィロの指輪のことを話しました。
「どんな、宝物が欲しいんだい。本当にすごい宝物は、簡単には見つからないと思うよ」
 またです。フワンも、フィロと同じような事を言ってきます。今回もポルキーニョは答えられず、困った顔をしながら宝箱のフタを開けたり閉めたりしていじけます。
「まあ、ぼくと一緒にのんびりと散歩をしながら考えればいいさ。そのうち、思いつくさ」
 フワンは、ポルキーニョを宝箱の上に乗せてあげました。ポルキーニョは、宝箱の上で寝っ転がって空を眺めました。白い雲が、いくつも空に漂っています。雲になって、空を旅しながら地上の宝物を探せたら、なんて素敵ことでしょう。
「このヒモをはずすと、フワンは空まで飛んでいくって本当?」
 ポルキーニョは、宝箱とフワンをつないでいるヒモを触りながらたずねました。ヒモは、しっかりと結んであります。
「あぁ、本当だよ。ぼくの中身は雲だからね。昔は、空を旅しながらいろいろな宝物をたくさん見てきたんだ。この宝箱にはね、その時の思い出がたくさん入っているから、空っぽでいいんだ」
 地面から少し浮いているのは事実ですが、フワンの中身が本当に雲なのかどうかはわかりません。でも、いつもフワンがしてくれる宝物の話を聞くことは、ポルキーニョの楽しみになっていました。
 今回、ポルキーニョが宝物が欲しくなったのもフワンの影響でした。
 しばらくポルキーニョはフワンとおしゃべりをしていましたが、いつのまにか居眠りをしてしまい、気が付いたときには、夕方になっていました。車輪で動く宝箱の上は、心地よい揺れで気持ち良いのです。
 目を覚ましたポルキーニョの目に、ぼんやりと夕日が映ります。「きれいだな」と、ポルキーニョはつぶやきました。
 フワンが宝箱を引っ張るのをやめて、振り返りました。
「あの夕日みたいに、ポルがきれいだなと感じる物を探してごらん」
「うん、そうする」
 起きたばかりでぼんやりするし、お腹も空きました。ポルキーニョは、素直に返事をすると、家にかえることにしました。もしかしたら、家の中に宝物があるかもしれません。
「さよなら、フワン」
「さようなら。ポル」
 フワンは、近くの草むらに宝箱を移動させると、宝箱のふたを開けて、中に入ってしまいました。フワンは日が暮れると、すぐに寝てしまうのです。
 それを見たポルキーニョは、これではフワンが宝物だな、とクスリと笑いました。

 夜空の月がきれいです。さすがにあれは宝物にするのは無理だな。夜空に向かって、ポルキーニョがつぶやきます。家に着いたポルキーニョは、さっそく家の中で(きれいな物)を探してみました。
 きれいな物といえば、ガラスのコップや金属のスプーンなどを思いつきましたが、何だか宝物とは違う気がします。
 ポルキーニョは、戸棚など家中の引き出しの中を調べてみることにしました。すると、一個のビー玉を見つけました。少し大きめなビー玉で、中には赤と緑の模様が入っています。とても、きれいなビー玉です。
 ポルキーニョが見たことのないビー玉でしたので、おそらく一緒に住んでいるペンウッドの物でしょう。
「ペンウッドさん。このきれいなビー玉もらってもいい?」
 ポルキーニョは、少し緊張しながら声をかけました。作業室で木を削っていたペンウッドは、ポルキーニョに気がついて手を休めました。のこぎりを使っていたので、足もとにはたくさんのおがくずが落ちています。
「ビー玉?」
 普通のビー玉です。
「ああ、いいよ」
 特に興味がないので、ペンウッドは作業に戻りました。そっけない態度は、いつものことなのですが、無愛想な表情が、ポルキーニョを緊張させます。作業をしていないときのペンウッドは、とても朗らかで優しい人なのですが。
 ペンウッドは自分のことを技術屋と名乗っていました。何でも作るし、何でも直す。ただ、作業中は邪魔されたくないので、そっけない態度になります。
 ポルキーニョは木を削り始めたペンウッドに、もう一つだけたずねました。
「ペンウッドさんの宝物ってなあに?」
「大事にしている、この使い慣れた工具かな。さあ、向こうへ行きなさい」
「ふーん」
 ポルキーニョの返事も、そっけなくそれだけでした。ポルキーニョには、のこぎりなどの工具が宝物には思えませんでした。

 翌日、ポルキーニョはビー玉をウエストポーチに入れて、外に出かけました。きれいなビー玉を、誰かに見せたかったのです。
 まず出会ったのは、リスのバミットでした。道沿いの高い木の枝で、スケッチブックに絵を描いていました。
「よお、ポル。おまえも、この木に登って来いよ」
「おいら、登れないよ。そんな高いところ」
「弱虫ブタ」
 二人の挨拶は、いつもこんな感じです。
「ねぇ、バミット。おいらの宝物、見せてあげようか?」
「知ってる。この前、俺が描いてやったリンゴの絵だろ?」
「確かにもらったけど、おいらが見せたいのは別の物だよ」
 ポルキーニョは、ビー玉をウエストポーチから取り出すと、バミットに見せました。バミットは低い枝に降りてくると、ビー玉を両手で掴みました。
「ただのビー玉だ」なめてみましたが、何も味はしません。
「でも、きれいでしょ。おいらの宝物なんだ」
「ふーん」バミットはビー玉をポルキーニョに返しました。
 何だかポルキーニョの思っていた反応ではありません。すごいとか、うらやましいとか、バミットは思っていないようです。
「ビー玉より、俺はおいしい物の方がうれしいな。どんぐりとか」バミットは、それだけ言うと、鉛筆を尻尾に挟んで、木の高いところへ行ってしまいました。
挿絵(By みてみん)
 もやもやした気持ちのまま、次にポルキーニョは月ウサギのジータの家にやって来ました。ジータは、家のウラの畑で作業中でした。
「やあ、ジータ。ポルキーニョだよ」
「やあ、食いしん坊のブタ君」
 以前に、ジータが作ってくれた料理をたくさん食べ過ぎてから、この呼び方です。
「このビー玉、きれいでしょう。宝物なんだ。すごいでしょ?」
「ほぉ、それはポルキーニョの自慢ビー玉ってことかい?」
「自慢?」
「そうさ。ちなみに、私の自慢はこの野菜たち。毎日世話をして、おいしい野菜に育てたんだ。自慢の野菜たちが、私の宝物」
 ジータも、ポルキーニョのビー玉をすごいとか思っていないようでした。
「なんか、おかしいな」
挿絵(By みてみん)
 ジータがにんじんを一本くれたので、ポルキーニョはそれをかじりながら、フワンの所に向かいました。もういちど、フワンに相談です。
 フワンを見つけるのは、待ち伏せるのが一番です。毎日、同じ道を散歩しているフワンは、同じくらいの時刻に同じ場所を通ります。
 ポルキーニョは小川にかかる橋の上で待つことにしました。今はお昼前なので、ここを通るはずです。しばらく小川を眺めていると、フワンがゆっくりとやって来ました。
「やあ、宝物探しのブタ君。きれいな物は見つかったかい?」
「うん、ビー玉を見つけたよ。でもね、誰もすごいとか言ってくれないんだ」
 フワンにビー玉を見せながら、バミットとジータに会ったことをフワンに伝えました。
「そうかい、とてもきれいだけどね。そうだ、ビー玉ブタ君。私にも、そのビー玉を自慢してくれないかい?」
「えっ?」
 フワンの言っている意味がわからなかったので、ポルキーニョは聞き直しました。
「だって、君の宝物なんだから、そのビー玉のすばらしいところも知っているでしょ」
「うーん」
 ポルキーニョは悩みました。口では宝物と言ってみましたが、ただのビー玉です。中にはきれいな模様が入っていて、太陽に透かしてみればさらにきれいですが、やはり普通のビー玉です。実は、ポルキーニョ自身もそんなに(すごい)と思っていませんでした。
「自慢の仕方が、おいらわからないよ」
「では、こうしたら、どうだろう?」
 見かねたフワンは、ポルキーニョからビー玉を受け取ると、自分の宝箱に入れてふたをしました。
 ポルキーニョが、不思議そうに首を傾げます。
「では、ブタ君。ふつう、宝箱とは、何を入れる箱ですか?」
 フワンがたずねます。
「うーん、宝物かな」
「そうだね。では、今は何が入っていますか?」
「ビー玉」ぼそりと答えたポルキーニョが、がっくりと肩を落としてため息をつきます。
 フワンもため息をつきました。
「ちがう、ちがう。こう言うんだよ。きらきらしていて、とてもきれいなガラスの玉。偶然見つけた宝物。大切なものだからいつも持ち歩いているんだ」
「ぶふぅう」
 ポルキーニョは、鼻の穴を大きく広げて驚きました。フワンの宝箱の中にあるビー玉が、なんだか本当にすごい宝物に感じたのです。
「わかってくれたかい? 大切なのは、ポル自身が、ビー玉を誰よりも宝物だと思うことなんだ。誰よりも好きになれるか、大切にできるかということ。そうすれば、自慢の宝物になる」
 フワンは宝箱からビー玉を取り出して、ポルキーニョに返しました。また、フワンの宝箱は空っぽになってしまいました。でも、そこにはフワンが今までに見てきた宝物の思い出がたくさん詰まっていることを、ポルキーニョは知っています。
「ペンウッドさんのところに行ってくる!」
 ポルキーニョはそれだけ言うと、あっという間にフワンの前からいなくなってしまいました。
 フワンは、何だか心配になってきました。ポルキーニョは、フワンの話をきちんと理解してくれたのでしょうか。

 家に戻ったポルキーニョは、作業室にいたペンウッドに話しかけました。
「ペンウッドさん。お願いがあるんだけど。おいらにも、フワンみたいな宝箱を作って欲しいんだ」
 作業を邪魔しないように、遠慮がちに話しかけたつもりですが、鼻息が荒くなっています。フワンは、良いことを教えてくれたものです。
挿絵(By みてみん)
 ペンウッドは作業を中断されても、不機嫌な顔にはなりませんでした。それどころか、にっこりと笑いました。技術屋のペンウッドは、物作りの依頼は大歓迎なのです。物を作ることが、なにより大好きなのですから。
「よし、わかった。任せておけ。どんな宝箱がいいんだ?」
「このビー玉が入るような宝箱」
「明日の朝までに作ってやる」
 ポルキーニョは、ペンウッドにビー玉を預けました。これで、バミットたちにも「すごいね」と言ってもらえそうです。
 翌朝、ポルキーニョはペンウッドから小さな箱を受け取りました。ていねいに加工されていて、フワンの宝箱がそのまま小さくなったような見た目です。ちなみに、車輪は付いていません。
「なんか、小さい」
 思わず、ポルキーニョが呟きました。
「なんだ、ポル。お前、大きい宝箱が良かったのか? でも、ビー玉はちゃんと入るぞ」
 小さな宝箱のふたを開けると、確かにビー玉が入ってます。
 ポルキーニョは、ペンウッドにお礼を言うと、宝箱ごとウエストポーチにいれて、自信なさげに外に出かけました。

 道ばたの草むらからバミットが飛び出してきました。驚いたポルキーニョを見て笑っています。
「よお、ポル。今日は、スキップしないのか」
「やあ、バミット。実は見て欲しい物があるんだけど」
 自信がないので、声が小さくなります。果たして、バミットはビー玉を褒めてくれるでしょうか。
「なんだよ、見せてみろよ」
 バミットにうながされるまま、ポルキーニョは小さな宝箱を取り出しました。
「この宝箱に入っているのは、とてもきれいなガラスの玉」
 フワンに教わったように言ってみました。それから、宝箱のふたを開けて中のビー玉を見せました。
 少しの間、バミットはじっとそれを見つめていました。それから、宝箱にも手を触れて観察します。最後に、ふたを何回か開けたり閉めたりすると、言いました。
「すごいなこれ」
「やった!」
 思わずポルキーニョは、大きな声を出しました。やっと、「すごい」と言われました! うれしくて、バミットのまわりをスキップします。
 それなのに、突然バミットがビー玉を投げ捨てました。
「ぶひゃ!」
 ポルキーニョが、変な声をあげながら慌ててビー玉を拾います。
「何するだよ、バミット! このビー玉は、おいらの宝物なんだぞ」
「うるさいブタだな。ちょっと、待ってろ」
 興奮するポルキーニョをよそに、バミットは宝箱になにやら入れてふたをしました。
「おい、ポルキーニョ。この箱の中には、すごい宝物が入っているんだぜ」
「なにさ。おいらのビー玉が入れてあったのに」
 興奮して鼻の穴を広げながら、文句を言います。
 バミットが続けます。
「この中には、とても珍しくておいしい野いちごが入っているんだ」
「へえ、そうなの?」
 何だか、変な気分です。ポルキーニョは、宝箱の中身が気になり始めました。
 バミットは、宝箱のふたを開けてポルキーニョに野いちごを見せました。何だか、とてもおいしそうな野いちごだと、ポルキーニョは思いました。
「食べてもいいぞ、ポル」
「いいの? やったぁ」
 口に入れてみると、すごくおいしい野いちごでした。ビー玉のことなんて、忘れてしまうくらいです。
挿絵(By みてみん)
「すごい、箱だよな。これ」バミットが、しみじみ関心しています。「ただのビー玉なのに、この箱に入っているだけで、なんか、すごい宝物だと思えたんだ。お前も、そう思うだろ、ポル。さっきの野いちごも、普通の野いちごだからな」
「そうなの!」
 驚いたポルキーニョでしたが、同時に宝箱の意味がわからなくなっていました。ビー玉を宝箱に入れると、すごいビー玉になる。普通の野いちごを宝箱に入れると、すごくおいしい野いちごに感じる。つまり、どういうこと?
 ポルキーニョはバミットから宝箱を返してもらうと、ビー玉と一緒にポーチにしまいました。黙り込むポルキーニョの顔をバミットが覗き込んでみると、口をぽかんと開けて鼻の穴をピクピク動かしている変なブタがいるだけでした。

「やあ、フワン」
「こんにちは、ポル。ビー玉は大事にしてる?」
「あぁ、あのビー玉は家の引き出しにしまってある」
 フワンが首を傾げます。
「他の宝物を見つけたってこと?」
「ううん。違う」落ち着きなく、ポルキーニョは答えました。「おいら、これからフィロに会いに行くんだ。それじゃ」
 特に、フィロからお茶に誘われていたわけではありませんが、すごいものを教えてあげるのですからフィロも困らないでしょう。ポルキーニョはそう信じてフィロの家のドアを叩きました。
「あら、ポル。どうしたの?」
「ちょっと、家に入ってもいい? 見せたいものがあるんだ」
「いいわよ、どうぞ。紅茶を入れるわね」
 ポルキーニョはテーブルの椅子に腰掛け、紅茶が出てきたところで、小さな宝箱を取り出しました。
「フィロ、紅茶に砂糖を入れるのを待ってくれるかな」
 宝箱のフタを開けると、角砂糖が一つ入っていました。ポルキーニョが、家で入れてきた角砂糖です。
「この砂糖はとてもおいしい砂糖なんだ。フィロに、特別にあげる」
「まあ、贈り物ね。ありがとう」
 喜びながら、砂糖を紅茶に入れるフィロを見て、ポルキーニョは戸惑っていました。結局、この角砂糖は普通の角砂糖だし、あのビー玉だって普通のビー玉です。
 おいしそうに紅茶を飲むフィロにも何だか嘘をついているようで、ポルキーニョはフィロには正直に話すことにしました。
「フィロ、ごめんね。それ、普通の砂糖なんだ。」
 ポルキーニョがバミットとの出来事を伝えると、フィロは優しくポルキーニョの鼻を撫でました。
「まるで、魔法のようね。でも、今みたいにしてしまうと、相手をだましているみたいに感じるわね。どうかしら、ポル。その宝箱が、ポルのすごい宝物ってことにしたら。そして、中に入れるのは相手への贈り物。宝箱に入っているものを贈られたら、それが何であれ、みんなうれしい気持ちになるわ」
 急にポルキーニョの目が輝きました。鼻の穴が広がって、笑顔になります。なんて、すばらい提案でしょう。しかも、魔法みたいだなんて!
「おいらの宝物は宝箱ってことだね」
 その後、ポルキーニョはフワンにも自分がようやく見つけた宝物を伝えました。フワンは、自分の宝箱を見て思いました。空っぽの宝箱にもいろいろな意味があるのだと。

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