はれんちマンション(承一)
叶愛夢さん(起)→阿厨季夜(承一)→御谷朋さん(承二)→というふうに続きます。
母さんが消えてから現在に至るまで、風呂・洗濯・夕飯等々、やはり困ることは何もない。
唯一の違和感とすれば、何もかもこれからは一人分のことしかしなくていいということだけど、時間が経つにつれて、きっとそれも薄れていくだろう。
妙に静かな空間で夕飯を口に放り込みながら、テレビのリモコンに手を伸ばした、その時だった。
突然、うちのチャイムが鳴り響いたのだ。 少し間をおいてから、僕は茶わんの上に箸を荒っぽく置き揃える。
静まっていた水面が、一瞬にして泡立ち始めた。
…なんともまあ、早いお帰りだな。
理由はなんだろう。金欠? 忘れ物? それとも、昼間の一件はいつも以上に悪質な冗談か!?
ズンズンと足音をたてながら玄関に向かい、鍵を回し切ると同時、いきりたって腕でドアを突いた。――相手がどの位置に立っているのか、考えもしないで。 直後硬い衝撃、そしてうめき声と衝突音が返ってきた。
茫然としてしばらく立ち尽くしたが、急にはっとなってドアノブを引き、鍵を掛けなおす。
慌てて台所のインターフォンまで走る僕の背中に、冷や汗がつたった。
まずい! 本当にまずい!
向こうにいるのは母さんだと思い込んでいた。
でも、あれは母さんの声じゃなかった。
いつもはこんな時間に来客なんてないから、アパートの管理サボって悠悠自適に暮らしているあのおばさんしか帰ってこないから、まさかドアの真ん前に立ってるとは思いもしなかったから!
二三度咳をし、僕は相手の無事を確かめるため、そろそろと受話器を取った。
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