ユウキはお腹が空いていた。
主人と違い、真面目で休むことを知らない胃が必死で胃液を分泌するも溶かすものはなく、結果自分を痛めつけている。胃に入りかけた胆汁が逆流して、キリキリと捻るような痛みを生んだ。
「お腹と背中がくっつくゾ」
子供のころに歌った歌のワンフレーズが自然と頭の中で思い出された。
また一つ、お腹が力無く鳴いた。
公園のベンチにどかっ、と座る。
夕焼けの公園に人影は無く、ユウキの吐いたため息が小さく響いた。右手にはコンビニの袋、中にはウーロン茶とおにぎりが一つずつ入っている。
ユウキはべつにお金には困っていない。裕福というわけではないけれど、一週間分の食事のメニューを考えられるくらいのお金はあった。
ただお腹が空いていた。
がさがさと派手な音を立ててコンビニ袋からおにぎりを取り出す。ちなみに王道「梅おにぎり」。ユウキは、夕日にかざす様にしてそれを眺めた。
しばらくそうした後で、ユウキは包装されたままのおにぎりと自分の右手を、ペタンと力なく額に置いた。次にため息をまた一つ。
「やっぱり……、だめだ……」
そう、呻くように小さく言った。
ベンチの背もたれに首を置いて夕焼けの空を見上げる。
透けてしまいそうなほどに淡い月が、紅く染まって浮いているのが見えた。
帰り際、見つけた野良猫におにぎりをあげた。猫は梅の部分をきれいに残し、ほかの部分を全部食べて去っていった。
ユウキはウーロン茶を二口飲んで残りをゴミ箱に捨てた。
さすがに水分補給をしないと死んでしまう。死ぬ気はない。もう少し。
ユウキのお腹がまた一つ鳴った。
その日、高校でユウキは先生に呼び出された。
ここ最近、どうやらほとんど食事をしていないユウキを心配してのことだった。
先生が理由を聞くと、ユウキは意外にも素直に理由を言った。むしろ周りが心配していることに驚いたようだった。
これはユウキと先生の会話の最後の部分。
「なあ、ユウキ。一応言っておくぞ。物食べなくなったところで虫歯は治らんぞ」
「……へ?……まじですか?」 |