ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  魔王就任 作者:市太郎
魔王様と魔石 ■ 05
「竜族の王様から親書?」
 本日も頑張ってお仕事しましょうと執務室へ入ると、出迎えてくれたイシュから珍しい知らせを聞く。
「はい。今朝早く、竜族の使役竜が届けて参りました。こちらとなります」
 筒から取り出した書状を受け取りながら、私は小首を傾げる。
「竜族との交流なんて、前々からあったの? あ、コーヒーが欲しいかな」
 執務を始める前の一杯を貰おうと、イシュへ頼むついでに問い掛けながら書面に目を向ける。
「ワタクシが知る限りでは、竜族との交流は一度もございませんでした」
 こちらに来た時、一応の読み書きと会話は出来ていた。
 なぜと思った所で仕方ないから、全て魔力の賜物として済ましている。
 種族によって使用される文字は異なっており、魔族の使用する文字は英語のようなアルファベット、筆記体に近い文字だ。
 人間族は、ロシア語みたいな記号文字っぽい感じで、妖精族はアラビア語みたいにくねくねしている。
 で、今手にしている竜族の文字は象形文字に近い。
 他種族の文字も不思議と読めてしまう事も、魔王になったからとして無理矢理納得させている。
 私は根っからの一般人なので、不思議を追求する気概も努力も持ってはいない。
 それはさて置き。
 まずは拝啓みたいな挨拶から始まり、突然のお手紙申し訳ありません的な事がつらつらと、用件の後には色良い返事をお待ちしてます、かしこってな感じで文末が締め括られていた。
「ん~? 魔石が欲しいけど魔界にあるかだって。どう思う?」
 差し出されたコーヒーを受け取る代わりに、親書をイシュへと手渡す。
 ざっと目を通したイシュも、些か困惑した表情で眉を寄せている。
「確か、竜族って魔力が多い種族だったよね?」
「ええ、若干魔族より上といった所でしょうか」
「何で魔石なんて必要なんだろ?」
「なぜでございましょう」
 一緒に小首を傾げて考えてはみたが、イシュが分からないのに世間知らずの私が分かるはずもない。
「まぁ、ケチるような物でも無いから、欲しいと言うなら譲っても良いけど……取り合えず用途が知りたいかなぁ」
「と、申されますのは?」
「うん。魔力目当てで魔石が欲しいって訳でもなさそうだし、それなら宝飾かなぁとも思うんだけど、宝飾で使うならやっぱりそれなりに良い鉱石とかじゃないと駄目じゃない? 鉱石だって、一応限りある資源だから、ほいほい掘ってる訳にもいかないしねぇ。単純に魔石が欲しいって言うなら、倉庫に真珠が一杯あるから、それじゃ駄目かしらとかね。傷有真珠でも良いなら幾らでも融通が利くし、引き取って貰うとこっちも助かるし、恩も売れるし?」
 にへ、と笑う私に、イシュが成る程と頷く。
「そうだな……お分けする用意はありますが、用途によっては数に偏りが生じますので、用途と数を教えて下さい。てな感じでまとめお返事しておいてよ」
「畏まりました」
 他種族の字も書けるが、私の書く字ははっきり言って汚いのだ。
 見よう見真似で初めて書きました感が拭えない。
 王の親書の文字が汚いなんて、恥晒しも良い所だからね。
 その辺りはイシュも反論無く了承してくれた。
「あ、そうだ。鉱石で思い出したけど、最近山脈に人間達がちょこまかしているんだって?」
 先日、サナリの所へ行った時に行っていた会議は、山脈の頂を越えた魔界領土でこそこそしている人間達の対処を決めてたみたいなのね。
「ええ、山脈に棲むガーゴイル種達から、サナリ大公の所へ苦情が上がったそうですね。まだ、ワタクシも詳細は確認しておりませんが、侵略目的ではないようで、山の一部に穴を掘っては移動し、再び穴を掘ると繰り返しているようです」
「穴ねぇ……」
 竜族からの親書と言い、何だかここの所、鉱石関連の話しが多いなぁと思案する。
 先日、離宮の人達から聞いた話もあるから、山脈を超えてくる人間達は鉱石を掘ってるのかなと思うのが妥当だけど、まさか温泉掘り当てに来るはずもないしなぁ。
「この件はサナリに任せるけど、一応人間達が何しているのかだけは確認してもらっておいて? で、適当に魔獣と魔鳥をその近辺で遊ばせておいてあげて。あー。極力食べないようにね? まぁ、私有地に勝手に入り込んできているんだから、事故にあっても文句言えないだろうけど」
「畏まりました。サナリ大公には、そのように伝えておきましょう」
 ライオンだらけのサファリパークの中で、走り回っている人を身を挺して助けてあげたいと思う程、私はお人好しではありませんから。
 こういう部分は、私の中では『殺人』でなくて『事故』に分類されるんだよね。
 とは言っても、空に魔鳥がギャーギャー飛んでたら、そう簡単には近寄ってこないとは思うけど。
 それから他の連絡事項を聞いた後、私は本日の執務に取り掛かったのである。
 
 竜族の王へ親書のお返事を送ってから三日後、更にお返事を頂いた。
 用途に付いては相変わらず教えてはくれなかったんだけど、かわりに使者を送るといった内容だった。
 細かい事は使者と話し合ってくれって事らしい。
 何だかなぁとも思ったんだけど、拒む理由も無いから都合の良い時にどうぞと返事を出したら、五日後に伺いますと更にお返事が来た。
 この世界には魔術文明が発達しているけど、電話とかFAXといった科学文明が無い。
 通信には幾つかの方法があるんだけど、テレパシーみたいに個々で行う方法がまず一つ。
 便宜上通信術と勝手に言ってるんだけど、これには魔術が必須であって、相手に話し掛けて良いですかー? と電話の呼び鈴みたいに合図を送る術なのね。
 話し掛けられた方の都合が良ければ、術を完成させて始めて相互間で通話が始まる。
 諜報活動とか、外交の席なんかで重宝されているみたい。
 次に、魔具を使用しての通信。
 比較的電話に似てる機能なんだけど、一対一にしか使用が出来ない不便さがある。
 対となるアイテムに、通信術を掛けるので携帯に便利だったりするけどね。
 例えば、出稼ぎで遠くに行ってる人が家族で持ち合うとか、親会社子会社で設置するとかね。
 子会社が多いと、親会社にはそれだけ通信用の魔具が置かれてたりする。
 魔具を使用して通信するのは、人間界のみ。
 他の種族は、テレパシーみたいな通信術を使用しているのが殆どかなぁ。
 一応、私もこの術は使えるけど下手なので滅多に使用しない。
 通信性能が良過ぎて、余計な事までだだ漏れになるのよ。
 以前、ラズアルさん達に渡したのも、この通話が可能な魔具で、この術を応用した物が送魔石と受魔石なのだ。
 そして国同士の場合は、伝書鳩みたいな鳥が使われてるのが主。
 急ぎの場合は瞬間移動する術を使ったりもするけど、いきなり他国の人が城の中に現れたら驚くじゃない?
 そんな訳で伝書鳥が使われるんだけど、目立つ色が基本とされていて、人間界だと国によって伝書鳥もカラフルらしい。
 実際見た事無いから、らしいとしか言えないけど。
 ちなみに、密書を送る時は目立たないように夜飛ばす為に暗い色だったり、普通の鳥に見えるようカモフラージュしているのだそうだ。
 で、種族に寄っても異なりまして、竜族と今遣り取りしてる親書を運んでくれてるのが、全長一〇センチ程度の手乗りドラゴンで非常に可愛い。
 物珍しさとミニマムな可愛さが堪らなくて、お返事を待ってもらってる間に餌を上げてたら、二回目から態々私の所まで探して飛んで来てくれるようになった。
 何て愛いヤツなのっ!!
 目立つ事が基本なのは世界共通で、この手乗りドラゴンは体の中から光っていて良く目立つ。
 初めて見た時は、白熱灯かと思った。
 限りなく透明に近い硝子で出来ているような体で、中心部分からフィラメントが発光しているみたいに光が溢れてるのね。
 内臓とか見えない程光が強い割には、目も痛くならないし、触っても熱く無いし寧ろ温かい。
 体は炉で溶かして液状になった硝子みたいに、トロリとした光沢感があって瞳孔の無いツルリとした目をしている。
 イシュなんかは渋い顔して、余り構わないようにと言ってくるけど、お返事待ってる時は撫でて撫でてと擦り付いてくるし、お返事持たせて見送る時もなかなか飛んで行かない上に、飛んでもぐるぐる頭上を回って漸く帰って行くのよ。
 構わずにはいられない、全く持って怪しからん可愛さなのである。
 正直、一匹欲しくて仕方が無い。
 未だペットを飼う野望を捨て切れないでいる私なのだ。
 ちなみに、我が魔族の伝書鳩は、エロ美乳なハーピーちゃんです。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。