第六話
「あたし、龍也だけじゃなくて・・・」
舞は恥ずかしそうに照れて言った。
「龍也の持った持ち物でもさわれるの」
「さわれる?おかしいな。ん・・・」
龍也はいきなり叫んだ。
「俺がおかしいんだ。今までの霊もそういえば俺にはさわれてた」
だからといって特別不便な事は何もない。というか便利だ。
ところで、藍はといえば、少し後悔していた。
ばれてないとはいえ、この前も舞の声を聞いたような気がしたし
やっぱりおかしいんだ。
―自分は人殺しだ。
と何回も頭の中で響く。
舞がうざい。そう思ったことは何度もあった。
嫌いだった。
舞の人気に嫉妬していたのかもしれない。だけど認められない。
あたしがあの人に告白して、振られるなんて、しかも
あの人が舞を好きだなんて、信じられなかった。
掃除の時、あの子が窓から身を乗り出して、とっさに背中を押していた。
あの人があたしの全てだったの。失った今、
人を殺してもいいと思った・・・。
舞がうっとおしかったの。
あたしからあの人を奪っていることにきづかず
笑いかけてくるなんて、無神経すぎるのよ。
でも殺すまでもなかった。
それをまた繰り返す。
殺すまでもなかった。
「舞、あそこ藍じゃないか。いくぞ」
龍也と舞はちょうど藍を探していた。
「ホント。あたし成仏出来るかな?」
龍也は藍から魂を取り戻したい一方、舞を成仏させてしまいたくなかった。
どうしたんだ、俺は。
龍也はその思いを振り切った。
「できるよ、きっとな」
「あーいちゃん」
舞はいきなりそんな風に藍を呼び止めた。
龍也が前もって話しておいたこと。
それは
「殺人者も霊が見える」ということだった。
藍はびくっとして声の主を捜す。
前、右、左、そして後ろ。
後ろには地味そうな男子が一人いるだけだ。
なんだ、気のせい?
そう藍が思った瞬間上から声がした。
「あーいーちゃーん!」
藍は驚いて上を見上げる。
そこには舞が、
自分が殺したはずの・・・舞がここに?
そんなはずはない。
あたしどうかしてるんだ。
しかし藍がいくら目をこすっても舞が見える、
そのことは変わらなかった。
幻覚・・・?あたしとうとうこんなにまで後悔していたのね。
「謝れ。」
いきなり後ろから声がした。さっきの男子、龍也だ。
「おまえ、人を殺しておいて、
自分は幸せにいきるなんてことできねぇぞ。
俺がおまえの盗った舞の魂取り返すまで舞は成仏できねぇんだ」
藍は開き直った。
「・・・だ、だからなんなのよ。あたしはもう何も出来ないでしょ」
「魂返せ」
と龍也はすごんで・・・
手を伸ばした。
きれいなきらきらした白い丸い・・・そう、小さな太陽のような物が
藍の胸の辺りから抜け出してくる。
龍也の手からは遠すぎるのに、まるで呼び出されているように。
ただ紫のオーラにつきまとわれるように、のがれるように・・・
そして
「謝る気がないなら帰れ」
龍也は魂をしっかりと綿の袋に入れた。
そして藍をじっと見ていた。
藍はしょんぼりとしたように見えた。
しかし謝ろうとはしなかった。
プライドの高いこいつのことだ、と藍をあまり知らない龍也でも予想はついていた。
舞は空でずっと見ていた。
「龍也、かっこいい」
龍也は気づかないうちにほおの辺りがあつくなっていた。
「そりゃあ、どうも」
舞はにこにこしている。
「おまえさぁ、この世に未練ないよな?ほんとに?」
「えー、あたし、未練って言う意味があんまりよくわからないんだぁ」
龍也はため息をついた。
「思い残しとか、ある?」
「思い残し・・・あるかもしれない。」
「何?未練になるほどのものか?」
「好きな人がいるの、この世界に―――
生きている間に見つけられなかったけれど、
今は好きな人がいるの」
龍也はため息をついた。
「舞、おまえ死んでるってことわかってるか?」
「わかってるよ」
「・・・相手にはおまえが見えないんだってことも?」
「見えるよ」
はあ、と龍也が盛大なため息をつく。 |