第一話
いきなり目の前が暗くなった。
私は死んだ。
私は中学二年だった。
そう、私は、
私は白川舞。
私は学校で、掃除の時間に死んだのだ。4階の窓を開けた瞬間誰かに押されたのだ。
誰か。それは一人しか思い当たらない。
同級生で同じクラスの・・・城山藍だ。
そこまで思い出したとき、私の目の前が暗くなくなってきたことに気がついた。
だんだん音も聞こえるようになってきた。
―体が軽い。違う世界にいるみたい。
―見える。世界が見える。
ただ、誰も舞には気づかなかった。どうしてだろうか。
いつの間にか、はっきりみえるようになっていた。
私にとっては一瞬だったけれど、ここではもう何時間もたったみたいだった。
掃除の音楽は止まっているし、学校の外にある、大きな時計の針も進んでいる。
人だかりができていて、その真ん中で誰かが・・・泣いている。
舞の母だった。
「お母さん」
呼んでも気づかない。まるで見えないみたいに・・・
「お母さん」
母はなにかに、すがっている。舞はそっとちかづいた。
それは舞だった。舞の身体が、横たわっているのだ。
力なく変な風に折れ曲がった腕。おれた足。目は閉じているが血が付いている。
血は大きく広がって、黒く固まっている。誰かが青いシートをかぶせる。
舞は座り込んだ。不思議と地面は通り抜けなかった。
―あれは私。じゃあ、今ここにいる私は・・・誰?
ひとだかりは大きくなっていく。学校中が気づいているようだ。
城山藍がいて、横には藍の仲良しの島川聡子がいる。
「白川さんが落ちたって聞いたけど・・・」
「息はあるの?」
人だかりの中でいろいろな声がする。
舞は藍の顔を見たくなって人だかりに入ろうとした。が、妙な気分だった。
舞は人には当たらなかった。触れもしなかったのだ。
「白川さん、死んだの?」
藍はそっと死んだ舞の身体に触れた。泣いているみたいにも見える。
悲しんでいるのだろうか?私を突き落とした犯人が?落としたのは藍じゃないの?
しかし・・・
舞には見えた。藍の周りに、ざわめく紫色のオーラが。
いまにも舞を飲み込んでしまいそうに、紫のオーラがめらめらと舞に迫ってくる。
舞は怖くなった。
―あの、あのもやもやしたものはいったい何?
ふと横に、同じように藍をみてびくりとした人がいた。舞はそっと近づいていった。
舞が近づくと、その男の子は驚いて、しかしまた気を取り直してじっと舞をみた。
舞は、驚きで動けなかった。
「・・・見える?私がわかるの?」
その男の子はうなずいて、周りを見渡して小声で言った。
「見えるんだよ、俺には」
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