4.無意識の嫉妬
バレンタインまで、あと3日。
和葉はまだ知らない。
平次がこれからバレンタインが終わるまで、毎日和葉の家に入り浸ってやろうと企んでいることを。
和葉の父は事件で忙しく、しばらくは中々帰宅できないことを知っている。
そして和葉の母は家にいるが、ここは幼馴染ということで和葉の家に長居しても遠慮することはない。
それをいいことに、平次は宿題を終えてもまだ和葉の部屋にいた。
予習も見てやると日頃の平次の台詞とは思えない言葉を言い、和葉を不審がらせたようだがそこは押し切る。
夕食もちゃっかり頂き、作戦成功と内心ほくそ笑んでいた。
「予習も終わったし、もうこんな時間やね。」
どこかソワソワとし、時計を気にしているのは決して自分の見間違いではない。
そんなに誰か他の男にチョコを早く作りたいのかと、ムッとしたが平静を装って目についた本当は興味のない和葉の雑誌を取る。
「そうやな。暇になってしもたなぁ・・・お、これ読ませてもらうで。」
「・・・・・あ」
「なんやねん。」
「あ・・・うん、何でもないよ。平次それ女もんの雑誌やのに、興味あるん?」
「あ?社会勉強やな。」
「ふ〜ん。」
そこで会話が途切れ、和葉は諦めたのか自分も平次を真似て雑誌を読み始めた。
しばらく二人の間に静寂が訪れる。
平次はそっと視線だけ気づかれないよう和葉に向けると、思惑通り和葉は夢の世界へと入り始めていた。
(ま、今日はこんなところやな。)
もう堂々と見ても気づかないほど眠りに落ちた和葉を見て、平次は立ち上がる。
和葉を起こさないよう、遠山家を出て自宅へと帰って行った。
次の日、朝も思ったが和葉は寝不足のようだった。
登校中もあくびを殺そうとしているが、バレバレだったのでそんなに眠たいのかと聞いてみた。
『オマエ、いつもどんだけ寝てるんや。』
『へ?』
『えろう、眠たそうやないか。』
『え・・・そんなことないよ。そうや、平次昨日いつのまに帰ったん?起こしてくれたらよかったんに・・・』
『別にそのまま寝ても構わへんやないか。』
『そやけど・・・・』
『なんや、何かすることでもあったんか?』
『えっ・・・あ・・・そうやなくて、寝る前にお風呂入りたかったし・・・』
(コイツ・・・・あれから起きて、チョコ作ってたんやないやろな。)
自分のせいで寝不足にさせたのは悪かったと思う。
それでもそこまでして作ろうとするまだ見えない相手のことを考えると、また胸の当たりがずズキズキした感覚がする。
もう、チョコを完成させたのだろうか。
今夜も行こうと考えている。
でも、もう作ってしまったのなら無駄なことかもしれない。
『今日は何時に部活終わるんや?』
『え?・・・・えっと・・・・今日はどないしようかな・・・・平次は?』
『・・・・オレか?・・・・・オマエはどないするんや。』
『別にあたしのこと待ってくれんでもええよ?いつ帰るかまだ決めてへんし・・・』
『・・・・・・・。』
また明らかに動揺していた。
嘘をつけない和葉だし、ずっと一緒に過ごしてきた平次がそんな和葉に気づかないわけがない。
もうチョコは作ったのかと思っていたが、まだ完成品ではないのか。
(そやったら、昨日のは何やったんや・・・)
何個作る気なのかと最初は思ったが、違うのではないか。
本命なのだ、うまくできたものをあげたいはず。
と、推理していくうちに辿り着いた答えは。
(そこまでして、あげたいと思うヤツなんか・・・)
ほら、またムカムカしてイライラしてしょうがない。
それがなぜなのかまだわからないが、でも和葉の行動が気に食わない。
いつまで経ってもこの気持ちが抜けない。
(誰なんや、ほんまに。)
「あー!!もうイライラすんなぁ!!」
そして、今日も校内隅々と周っていた。
「あかん。誰かやなんて全然わからへんやないか。こうなったらいっそ・・・和葉に聞いてみたらええんやないか?」
どんなに邪魔しようとしても、結局和葉は平次が帰れば作ってしまう。
完全に阻止など無理なのに、それでも何とかそうさせたくないと思う不思議。
(尋問は事件解決への一つの手なんやし。)
和葉が先に帰ってしまっていても、また行けばいるのだから今夜も行こうと決めた。
「そうと決めたら、まず部活行こか。」
武道場へと意気揚々と向かっていたが、ある疑問が浮かんで足が止まった。
「犯人がわかったとして、それからどないするんや?」
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