10.突撃!じいちゃん魂
スマートブレイン社長室
2人の男…村上とナイトメアが机上で話し合っていた。
「とうとう、ラッキークローバーまで出したそうじゃないか。どうも普通のオルフェノクでは相手にできなくなってきたみたいだね。」
村上の額にシワが寄る。
だがすぐに元に戻すと
「フン、今までの奴らが下の下だっただけだ。ラッキークローバーは違う。」
と返す。
「まっ、期待しないで待っておくさ。」
そう言うとナイトメアは社長室を出ていった。
直後に村上はレディを呼び出す。
「すぐ香港支社に連絡を取れ。内海を呼び戻す。」
「はい、わかりました!」
私の休日はお父さんの叫び声から始まった。
「ど、どうしたの?」
健人君に聞くとお父さんが手に持っている手紙を指差す。
「美咲ちゃんは初めてだったよね…。実は…おとうさんが来るんだ…。」
えっと、健人君のお父さんの親だから…健人君のおじいちゃん?
私と健人君が受け取った手紙には筆で書いた達筆な文字でこう書いてあった。
『美佳、充君、健人、元気か?わしは元気にやっとるぞ!今度用事でそちらに向かうのでお前達の家に行こうと思う。お前達の元気な姿を見ることを楽しみにしているぞ!じいちゃんより。』
でもこの手紙ひとつにお父さんがガタガタ震えてるけどどうしたのかしら?
部屋に戻ると健人君がおじいちゃんのことについて話してくれた。
「うちのじいちゃん、寺の坊さんなんだけど拳法の達人でめちゃくちゃ厳しいんだよ。」
それが怯えてる理由?
でもそれだけにしては随分怖がってたなぁ…。
学校
「ああ、ケンちゃんのおじいちゃんか。あの人めちゃくちゃおっかない人なんだよな。」
「憲太郎君も知ってるの?」
憲太郎君も色々教えてくれた。
私が健人君と憲太郎君と家に帰るとオートバジンの側に二台のバイクが停まっていた。
それを見た健人君と憲太郎が後ろに飛び退く。
じゃあ、もしかしてこれって…。
「おじいちゃんのバイク?」
あの健人君も震え気味にうなずいている。
どれだけ怖いのかしら?
私達が家に入ると待っていたのは…。
とある喫茶店
潤一郎はドーナツ片手に雑誌を読みふけっていた。
あれがファイズか…。
もうあれをあそこまで扱えるとはかなりベルトを長く所持しているということだな。
潤一郎の脳裏に浮かぶ前回の戦い。
ファイズショットを胸に受けてのけぞる姿…。
「ああっ、思い出すと腹が立つ!」
テーブルを叩き、頭を抑え苦悶する潤一郎。
そんな彼を周りの客は引いた目で見つめていた。
「あら、お帰り。」
お母さんのいつもの挨拶に今日はもう2つ声が加わっていた。
「おう、今帰ったか!」
「久しぶりだな、健人!」
そこに2人の人…健人君のおじいちゃんとおじさんがどっかりと腰を下ろしていた。
夕ごはんの席
「そうかそうか、最近の学校はそんな感じか。」
健人君と話しながら声をかけているおじさんは黒い単髪に黒い口髭、それからお坊さんが着るような黒い着物…法衣って言うのかな?…って格好。
そしておじいちゃんは…服装はおじさんと同じ格好なんだけど、顔の見かけはもっと凄い。
禿げた頭の両側に鋭く尖った白髪があって口にも尖った髭、そして目付きも鋭い。
今日、一緒にご飯を食べている憲太郎君も箸が震えていて血の気が無い。
いつも強気な健人君も妙な愛想笑いをしている。
ちゃんと応対してるのはお母さんだけみたい…。
と、おじいちゃんが酒の手を止めて私の方を見る。
「とうとう、健人にも嫁ができたか…。」
え?嫁?
それってどういうこと?
「ちょっ、ちげえよ、じいちゃん!」
健人君が慌てた手振りでその言葉を否定している。
「もう、お父さんったら。違いますよ。」
「なんだ、違うのか…。」
ちょっと残念そうなおじいちゃんとおじさん。
スマートブレイン玄関口
マウンテンバイクが軽快な動きでそこに近づいていく。
乗っていた男は玄関口にマウンテンバイクを停めるとそれを畳んで中に入っていった。
スーツ姿に着替えた男をレディが出迎える。
「お待ちしておりました、内海さん♪」
翌日
商店街を歩く1つのグループにたくさんの人々の視線が来る。
もちろん、健人、美咲、そしてじいちゃん、おじさんだ。
おじいちゃんは物珍しそうな様子で商店街のいろんな店を眺めている。
その横で健人君はハラハラ顔。
「父ちゃん、バイクに乗れるし、TVも見るんだが、それ以外からっきしでな。こないだなんか俺の携帯であちこちに空メールを送りやがった。」
そっか、こないだ健人君やお母さんが携帯持って首傾げてたのはこういうことだったのね。
「おかげで苦労したぜ。」
と、健人君。
「じいちゃんって機械オンチだからよくこんな風に…。」
「健人…。」
とおじさんが冷たい声。
「へっ?」
「歯を食いしばっとけよ…。」
健人君が振り向くとめらめら燃えたぎるおじいちゃんの顔…。
「あっ、ちょっ、待ってじいちゃん…、ぎゃあああ!」
携帯で連絡をしている潤一郎。
「あっ、和香さん。ああ、もうすぐ戻りますよ…ってあぁーっ!」
あいつらは、ファイズの持ち主…。
ふん、ならばとっとと捕まえて奪うまでだ。
潤一郎はこの時の行動を後に深く後悔することになった。
ゲームセンター
相変わらず私達を興味津々で見る周りの人達。
今はおじさんがクレーンゲーム相手に悪戦苦闘中。
「くぅ〜、じいちゃんありゃ痛すぎだろ…。」
健人君はおじいちゃんに叩かれたお尻をまだ抑えている。
と、
「あっ、やった、やったぞ!」
とおじさんが喜ぶ。
見てみるとおじさんの手にはハ○ーキ○ィの人形。
周りの人ははしゃぐおじさんと喜ぶおじいちゃんにドン引きしていた。
「ねぇ、健人君…ってアレ?」
いつのまにか健人君が姿を消していた。
「全く…。やってられっかよ、恥ずかしい!」
次はおじいちゃんがレーシングゲーム『ジェットスライガー』をやる。
けどおじいちゃんは障害物にぶつかりまくって早くも車がボロボロ…。
「何!?これはまっすぐ進めるだけ走るゲームと違うのか?」
しかもルールを勘違いしてる…。
「ハハハ、ダメだな、おじいちゃんは。」
声に振り向くとそこには黒縁メガネをかけたスーツ姿の男の人が立っていた。
「どれ、僕もひとつやってみるかな?」
そう言うと男の人はもう一台のレーシングゲームのマシンに乗り込むとゲームを始める。
す、凄い…。
気が付くと男の人の周りにたくさんの人だかりが出来ていた。
障害物にぶつかりそうになってもするっとかわし、目の前に転がる岩はミサイルで吹き飛ばす。
気が付くと全ステージをクリアしていた。
「まっ、こんなもんかな?」
男の人はそう言って私のところに寄ってきた。
「あの、あなたは?」
「ふふ、ここのゲームセンターのゲームの開発者だよ。視察がてらよく遊んでいてね。」
そうだったんだ…。
私が感心する横でおじいちゃんは何故か怖い顔をしていた。
帰り道
おじいちゃんが私に声をかける。
「美咲さん、さっきの男には気を付けておれよ。」
さっきのって、あのメガネの人?
でもあの人懐っこそうに笑うあの人には別に嫌な感じはしなかったけど…。
「奴はその内またお前さんのところに来るな…。」
「どういうことですか?」
私が聞こうとした矢先、
「見つけたぞ!今日こそファイズを…。」
「あんた、あの時の…。」
前にボウリング場であったあのオルフェノクが出てきた。
どうしよう、今ファイズは健人君が持ってるのに…。
「おじいちゃん達、逃げ…って、えっ?」
いきなりおじいちゃんが私の前に立つ。
「ほう、人間がこの俺に挑む気か?」
勝ち誇った口調のオルフェノク。
だがそう簡単にはいかなかった。
センチピードが振り下ろした鞭をじいちゃんは杖に絡めとる。
「何?」
そのまま、杖を動かし、センチピードを鞭ごと放り上げた。
更に地面に叩きつけられたセンチピードにもう一発杖をぶつけて近くの川に放り込んだ。
「そ、そんな、バカな…。」
オルフェノクはそう呟きながら川に流されていった。
「ふん、口ほどにも無い。」
やっぱり、おじいちゃんって凄い…。
スマートブレイン社長室
村上が目の前に立つ人物と対話していた。
「久しぶりの日本はどうだ?色々変化があっただろ?」
「いやあ、まったくですよ…。ゲームのクオリティまで上がってるんですから。」
そう言って頭を掻く男。
「まあいい、早速仕事に入ってもらうぞ、内海。」
村上の言葉に黒縁メガネの男…内海が笑顔を向ける。
「それじゃ、始めましょうかね…。」
夜
「あれ、おっちゃんとじいちゃんは?」
「うん、さっき帰ってったわ。」
おじいちゃん達は家に着くと玄関に入る前に帰っていった。
「にしても怖いじいちゃんだっただろ、それに色々大変だったしな。」
「そうかしら?」
「へ?」
不思議顔の健人君。
「私にはちょっと照れ屋だけど頼りになるおじいちゃんに見えたけどな…。」
そう、それでいてすっごく暖かいおじいちゃん…。
「そうか?俺はあんなじいちゃんが母ちゃんの親とはとても思えねえけどな…。」
えっ!?
「なんだ知らねえのか、あのじいちゃんは母方のじいちゃんなんだぜ。」
「えぇぇー!?」
その日、家いっぱいに響くほどの叫び声をあげた美咲だった。
そんな彼女の手元にあった写真…じいちゃんと撮った写真だけが笑っていた。
ちなみにじいちゃんは昭和ライダーの登場人物をモデルにしています。
誰だかわかりますか?
次回は新たな敵との初対決です。
お楽しみに。