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全ての『愛』が報われませんように
作:ゆうじん



第4話―緋色


 正午を少し過ぎた頃、僕らは近場のファミレスにいた。
僕らとは、午前の段階でこれだけの金と労力を支払った上、午後は更に酷い事になるだろうと憂鬱になっている僕、そんなネガティブ人間と向かい合った席に並んで座る美少女2人。
 右に座るはご存知、山田華。メニューを広げてパフェの写真を眺めている。その様はさながら念写をしている超能力者だ。……残念ながら写真には何の変化もないけど。 左に座るは華に負けず劣らずの美少女。その名を群青緋色ぐんじょう・ひいろ、僕らのクラスメートだ。彼女はそのユニークな名前に違わず、中々ぶっ飛んだ考えの持ち主だったりする。彼女も華のようにメニューを眺めていた。まあ一般論を言えばファミレスでメニューを見る2人は、財布を見ながら悲観する僕より正しい行動だと思う。
 しかしながらこの2人は微妙にズレたことをしている。華は相変わらずパフェを穴が開くほど見つめているし、群青さんはにやにやと妖しく微笑みながらページを捲り、時折小さく笑い声を洩らす。その瞳には妖しい光が宿っていた。
 2人の異様な雰囲気に呑まれないように僕もメニューに目を遣った。腹に残る物にしよう。とかおっさんみたいな理由で品を選んだ。 少ししてそれぞれ頼んだものが運ばれてくる。
 ウエイトレスのお姉さんに少し癒され、華にナイフで刺され、群青さんにハンバーグセットのハンバーグを取られ、半泣きで昼を終えた。
 華は三種類もパフェを堪能しやがった。

 お腹一杯。と口を揃える2人を見ると何だかここの代金くらいは払ってもいいかと思った。華はともかく、群青さんの笑顔にはそれ程の価値がある。
 ファミレスを出た僕たちはそのまま3人で行動することになった。更に出費が増えるのでは? と不安になったけど群青さんはあまり買い物をしなかった。
「今日はありがとう」
帰り道。僕らと違って電車で帰る群青さんとは駅でお別れだった。
「こちらこそ楽しかったよ! また遊ぼうね、群青さん」
華がぎゅっと群青さんに抱き付いた。頭の弱い奴はやたらとスキンシップを取りたがる。端から見れば美少女2人で抱き合っているのだから、視線が集めてしかたない。群青さんは抱きつかれながらも妖しく微笑んでいるから更に危ない。
「群青、ではなく下の名で呼んでくれ。群青はどうも人の名前っぽくないからな」
じゃあ、緋色は人の名前か? とは訊けなかった。
「うん! ばいばい緋色ちゃん!」
なかなか離れない馬鹿をひっぺがして帰路に着いた。群……緋色さんは見えなくなるまで妖しく微笑んでいた。

 2人っきりで歩く帰り道はただ疲れたとしか言いようがない。華はケラケラと笑いながら僕の隣を歩いていた。
 結局1つも荷物を持ってくれなかった。



―追伸―
華が買ったものを家で広げてみた。
 もう二度と華とは買い物に行かないと心に決めた。














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