プロローグ―始まりに至るその早朝
世の中とは実に理不尽である。常に人は不条理な出来事を受けて入れて生きていかなければならない。これは人が人の中にいる上で避けられない事実である。
が、僕はそんなもんは絶対に嫌だ。
故に僕はこの状況をどうにかするつもりはない。不条理なんか飲み込んでしまえ。
何故、僕がこんな哲学もどきなことを考えているかというと、それは時間を少し前に遡ることになる。
時は本日未明。窓の外からは白みだした空が見え、早朝、それも早い時間だろうと思う。
はて? 僕は何故こんな早くに起きてしまったのだろう。
僕は枕元に目覚まし時計を1つ置いているのだけど、その設定時間はこんなに早くない。
僕は枕元に手を伸ばして、全てを悟った。
「あーーなるほどね」
僕の枕元には時計が3つ。その内、2つがけたたましいベルを響かせている。
設定時刻は――4:44
もうなんか……アホかと。何で気づかないんだよ。僕は。
こんなくだらないことをするのはあの2人しかいない。ていうかこの時計はあの2人のだしさ。
僕は呆れながら考えた。報復すべきか寝るべきか。
現在僕は非常に眠い。睡眠が絶対的に足りていない。ここは寝るべきか……否!
あの馬鹿2人のことだ。調子に乗るに違いない。ここは1つ格の違いというやつを見せておくべきではないか。
僕よ。剣を持て!
僕は隣の部屋にいる。
この部屋に眠る馬鹿に報復するためだ。
この馬鹿ともう1人の馬鹿、そして僕の3人は1つ屋根の下で暮らす家族もどきである。
この部屋の主は山田華。
以上。
細かい話はまた今度。今重要なのは僕の報復だ。僕はマジックを片手に忍び寄る。マジックっていってもアレだ。書くやつ。
諸君にもこの時点で今回の任務が理解できたかもしれない。
そう落書きだ。
幼稚と言われようが知ったこっちゃない。これは意外にプライドを傷つけるのだ。
僕は顔を覗き込む形になる。
華はすやすやと気持ちよさそうに寝てる。
クラスの殿方に評判があるわけだ。
少し可愛い。
だが、僕は手を止めはしない。
鬼畜と呼ばれようが。
「南無……」
僕は心を無にして作業を開始する。
はずだったのに。
僕は次の瞬間には床に叩きつけられていた。両腕はガッチリ関節をきめられてしまい動かない。
「な……なぜ?」
僕は自由の利かない首を向ける。そこに不敵に微笑む華。
「甘いわね」
「狸寝入りかよ」
「違う。私は寝ているときでも周囲への警戒は怠らないだけよ」
どこの達人だろうか。僕は思ったが口に出さない。それは終わりが近いからなのかもしれない。
「乙女の部屋に夜這いだなんて……死ぬ覚悟はしてるでしょ?」
どごーん!!!
早朝、謎の怪音が街に木霊する。
住民たちはみな少し早い朝を迎えるのであった。
追記
某日。右目を青く腫らし、左目を黒く縁取られた奇妙なパンダが街のコンビニで目撃される。
周囲の人々は何も聞かずただ彼に
「南無」
と唱えたそうな。 |