Fragment 1: Chastity
目を開けた時には、和希は別の場所にいた。
「こ、ここは……」
和希はゆっくり起き上がり、全体を見回した。
見渡す限りの白。自分が立っている床も底が見えないくらいの白。唯一白でなかったのは、薄黄色の、雲ひとつない空だった。
どう勘違いしても、自分の元いた場所ではない。それどころか、元いた世界でもないかもしれない。
(もしかして……僕、死んじゃった?)
その考えが和希の頭を過った。
しかし、彼は死んだ気が全くしなかった。息もしっかりしており、彼が自分の胸に手を置いた時には、紛れもなく心臓の鼓動を感じた。
死んではいないけど、別の世界にいる。では、どうやってここにきたのか。和希は混乱していた。
「お、最後の人が来たっぽいな」突然、男の人の声が後ろから聞こえた。
振り向くと、いつの間にかそこには、まるで儀式をするような場所があった。中心に人が上に立てるような巨大岩があり、それを囲むように柱が数本立っていた。和希が上を見上げると、全ての柱の上に人が立っていた。その人達の顔が一斉に和希の方を向いた。
「あれが最後か……なるほどね」
「ちっ、どんだけ待たせてんだよ、クソが」
「あいつは大した事なさそうだね」
次から次へと、よく分からない言葉を浴びせられた。
その間で、こちらに手を振る人がいた。髪の毛に赤が入っている男の人だった。
「大丈夫か〜?」
その言葉で、あの人がさっきの声の主だということがわかった。
「あーあー、静かにしろやもう!」突然、雷のような声が響いた。
中心の岩の上に、もう一人誰かがいた。長い金髪に青い瞳、そして着ていたものがどうも昔の物に見えた。和希が不思議がっている間に、その人は人差し指を上に振った。
いつの間にか、和希は柱の一つの上にいた。
「うわぁああああああああ!!!!」和希は叫び声を抑えらず、柱の上に尻餅をついた。
和希は高所恐怖症であり、その上に今の状況から彼は一層恐怖を抱いてしまい、涙を流していた。
「あーあ、泣かしてしもた。刺激が強すぎたんやないか?」
「誰でも精神的に乱れてしまうような状況ですもの、仕方ありませんわ」
「君、男のくせに涙を流すんじゃない」
と、また幾つもの声が上がった。
「だから静かにしろっつーの!」中心にいた男がまた叫んだ。
その途端、彼のいた場所は静まり返り、異様に冷たい雰囲気を放った。
「……よし、じゃあ始めるか。まず、お前らがここにいる理由は分かるか? まぁ、実際に分かったら凄いけどな」
誰かの手が上がった。スーツを身につけた、凛とした女の人だった。
「はい、えーっと……松下 蓮華ちゃんだっけ? どうぞ」金髪の人が女の人を指差しながら言った。
「『ちゃん』付けはやめてください。それより、あなたは誰なんですか? あなたが私たちをここに連れてきたと推測して、自分が誰なのかを明かすべきなのでは?」松下という女性が鋭い目を眼鏡越しに神様へと向ける。
「あー、そうか?」男は耳を小指でほじりながら言った。
「じゃあ、説明してやる。改めて自己紹介といこうか」
金髪の人はため息をつくと、こう言い放った。
「俺はお前らが住んでいる世界の神様だ。以後よろしくな」
その言葉に、誰もが耳を疑った。この目の前に立っている外国人みたいな人が、神様だという。
「嘘……あり得ない……」と、松下のみが声を放った。
次で登場人物を紹介します。ちなみに、この作品には主人公がいません。中心人物が数人いるのみです。ネタバレになっちゃうかな。プロローグにてこれを1月末に終わらせると言いましたが、それはチャプター2の投稿時間に予定にします。すみません。