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夜空の星
作:灯夜



二度目の新月


それから、麻美は何も変わらなかった。
いつも通りの付き合い。
あの日、本当に麻美と居たのか不安になる程。
それから麻美が高台を訪れることはなかったし、誘うタイミングも合わなかった。
そんな中で眞由美との掛け合いが、日常として定着してしまって行く。
いつしか一人きりだった、あの場所に眞由美が居ることが当たり前になっていく。
そして胸の内に違和感を残したまま夏休みが始まった。



空には、少しだけ雲が残っている。
麻美と行ったあの日と同じ、雨上がりの新月の晩。
眞由美と出会った夜の一月後。
誰にも連絡せずに、一人で出かけた。
今日は手ぶら、少しいろんな事を考えたかった。
高台への道の途中から、蛍がちらほらと舞っていた。
その光の明滅は、星の瞬きを連想させる。

高台に着くと、先客が居るようだ。

「麻美?」

ゆっくりと近づいて行くと・・・。

「眞由美かよ、どうしたんだ?」

(今日は行かないと言ってあったのに。)
するとゆっくりと振り返り、囁く様に答えた。

「新月の夜は特別なんでしょ?
私にとっても、今はそうだよ。」

ゆっくりと、僕の方へ歩み寄る。
いつもと違うその雰囲気に、僕は飲まれていた。
そして・・・。

ドン

突き飛ばされて、しりもちを打ってしまった。

「いきなり何しやがる。」

怒鳴り返した。
(何がしたいんだこいつは。)

「大馬鹿、何で最初に他の人の名前出すかな。
普通は一緒に居る事の多い私の名前、言うんじゃない?
まったく・・・、信じらんない。」

そして、そのまま隣に座り込んできた。

「いきなり予定と違うじゃない、ばかぁ〜。」

かなり機嫌を損ねてしまったようだ。

「はぁ、しょうがないよね。前もこんな日に、私に内緒で二人でここに来ていたし。」

(・・・・ッ。見られていたのか。)

「覗き見とは、趣味が悪いな。」

彼女の口の動きが、『バ〜カ』と告げている。

「いい雰囲気だったじゃない。好きなの?」

「分からない。」

(本当に・・・何も。)
そもそも麻美が・・・幼馴染を取られる事を嫌がっているのか、僕を好きなのかさえ定かではない。

「そっか。じゃ、あたしの勝ちね。」

「何がだ?」

「好きだよ、陽一。」

当たり前のことの様に、さらりと告白された。
思考が上手く働かない。
そもそも告白された事が初めてで、混乱している。

「冗談じゃないよ、・・・本気で好き。
初めて出会ったときから、良いなって思ってたんだ。」

視線がぶつかる、その目はとても冗談なんかじゃない。

「教室の後ろの方の席で、退屈そうにしてるのを見てちょっと可笑しかった。
昼と夜のギャップ激しいんだもん。
自分は特別のような気になっちゃった。
私だけが、本当のあんたを知ってるって。」

そこで、眞由美は一呼吸おいた。
微かに瞳が潤んでいる。

「・・・その気持ちがはっきりしたのは、麻美さんと二人で居るのを見たとき。」

手を握られた。

「こんな風に手を繋いで、いい感じでいる二人を見てすごく辛かった。
この場所は、私と陽一の二人が居る場所なのにって。
そして気が付いたの、好きだって。
あんなに目立ったのだって、貴方を独占したかったから。
こんなにも人を好きになるのは初めてで、この恋だけは成就させたいの。」

絶対にと、目が教えてくれている。
告白がとても勇気が必要で、たくさん想ってくれている事が伝わってくる。
でも・・・。

「ごめん、まだ自分の気持ちが分からないんだ。
少し考える時間をくれない?」

「い・や。」

(は?)
意外な答えに、呆けていると。

「私の勝ちって言ったでしょ。」

そのままギュッと抱きしめられた。

「付き合わない限り、離さない。」

戸惑い、必死に考えていると。
(震えている。)
不安なんだ、眞由美も。


そっと、僕も眞由美の背中に手を回した。
なんとなく、そうしなければならない気がした。

「了解したと受け取るよ。いいね、変更はなしだよ。」

「ん〜、どうだろう?もしかすると好きかもしれない。」

「何よ、その中途半端な答え。」

「とりあえず、わからないから一緒にいるよ。
今はそうとしか答えられない。
ダメか?って、そんなにむくれるなよ。」

「ふ〜ん、いいも〜ん。
すぐにぞっこんにしてやるんだから。」

ちょっとだけ舌を出して、眞由美は言った。
それが可愛らしくて、笑ってしまった。
そういえば眞由美と会ってから、笑顔でいる事が増えた気がする。
好きなのかな?
ん〜・・・どうだろ。
でも、こんなのも悪くは無いと思った。












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